カルミアの散華
•カズラがホビホビを受けたらどうなるかの妄想ifです
•エミュが意味不明です
•捏造過多、ss初心者なのでおかしな部分があります
•閲覧は自己責任でよろしくお願いします
•文章表現が変更されることがあります
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土埃が舞い散り、轟音が鳴り響く
カズラは薄暗い廃墟で交戦を繰り広げていた
「やっぱりそんな容易ではないか」
「あなた、邪魔」
目の前にいる少女を蔦を伸ばして捕らえようとするも、彼女の動きが素早いことに
加えて、警護にあたる大男の援護もあり苦戦を強いられていた
なんとかしてロー達に情報を渡さなければ…
「ベタベタチェーン」
頭の中で思案しているうちに大男の攻撃で足を取られてしまった
「しまった」
「捕まえた! べへへ!」
思わぬ失態に舌打ちをしたくなった。
壁に片手をつきながら立ち上がろうとしても粘液のようなものがそれを許さない
「ようやく終わった…なら契約ね」
気配を感じ、蔦を伸ばそうとした時にはもう遅かった。
少女はカズラに近づき、肩に触れた
少女…シュガーは接触した相手をおもちゃに変える凶悪な悪魔の実・ホビホビの実の能力者だ、接触された者に成す術はない
少女が契約を口にしようとしたその時…複数の蔦がカズラの体に一気に巻きついた
「…は」
「何よ…これ…」
「シュガー、逃げろ! そいつは危ねえ!」
奥で様子を伺っていた大男…トレーボルは予期せぬ事態に慄き、
シュガーにその場から離れるよう叫んだ
「言われなくても!」
シュガーはすぐさま危険を察知し、トレーボルと共に外に逃げ出していった
一人取り残されたカズラは巻き付いた蔦を必死に取り除こうと奮闘するが、
次か次にと絡みついてキリがない。
頭が、体が、どこもかしこも痛い…。
加えて痛みまで現れ、それから逃れようともがき苦しんだ。
「早く、取らないと、早く…」
だが、蔦を再び掴んだ時、カズラはあることに気づいた。
そして、蔦に向けていた目線を自分の体に向けると…。
自分の体が原型を留めていなかったのだ。
頭や体、カズラを形成していくありとあらゆるものが崩れてしまっていた。
ツタツタの実の暴走が原因ではなかった、むしろこの蔦はカズラの体の原型を
元に戻そうと必死に巻き付いていたのだ
「どうして…」
今までにツタツタの実の暴走や休眠以外でこのような事は起こらなかったのに
呆然としているカズラを嘲笑うかのように体の崩壊は徐々に酷くなっていった。
痛みはさらに激しさを増し、限界を迎えたカズラはとうとう叫び声を上げて
気を失ってしまった。
動くことの出来ないカズラは、ついに全身を覆われ、そのまま蔦の檻に
閉じ込められてしまったのだった
「…ここは…何処だ」
カズラが目を覚ますとそこは辺り一面真っ暗だった
辺りを見渡そうと立ち上がろうとするも先程のように体が動かない
自分の動きを封じたあのベタベタも蔦も今はどこにもないはずなのに。
早くここから動かなければ…そして…
「こんにちは」
突然、上から声が聞こえた。
驚いたカズラが上を見上げると…
「あはは、変な顔」
もう一人の自分が自分を見下ろして嗤っていた
葉に隠されている片目はボタンになっており、体は陶器のように白く
そこらかしこにヒビが入っていた。
目の前の彼が嗤うたびに、壊れた歯車のような音が聞こえてくる。
「お前は誰だ」
「俺はお前だよ、カズラ。 まあ強いて言うなら…俺はお前の欲みたいなものさ」
唖然としてしまった、この男は一体何を言っているのやら
「何を言っているんだお前は、俺の欲だって、冗談にも程がある。
仮にそうだとして、お前が言う俺の欲ってのは一体何だ」
カズラは目の前の男に強気に言い放った
「とぼけるんじゃねえよ、お前だって分かってるんだろ」
だが、それを気にも留めず、男はこちらに顔を近づけて言った
「お前の人間になりたいっていう欲だよ」
不意を突かれ、固まってしまう。目の前の男に反論する言葉が出てこなかった
「図星か?」
「…確かに人間として認められたいとは思っている、だがそれは不可能だ」
頭は植物でできており、片目は潰れていて醜い、さらにツタツタの実に寄生された事で
人間の生命エネルギーを常に吸収しなければいけない。
これを果たして人間といえるのだろうか
「2年前のあの戦争、覚えてるか?」
男は体勢を戻すとその場で歩き始めた
…忘れもしない、2年前の頂上戦争、エースの公開処刑が映されたあの日を。
エースを助ける為に、彼の弟であるルフィだけでなく、彼を息子と、家族の一員だという海賊団が海軍本部であったマリンフォードに乗り込んだ。
例え血が繋がらないとしても、危険な戦場から救おうと戦った彼らを見て、
エースをとても羨ましく思った。
「…何が言いたい」
「知ってるさ、お前が人間だと認めてもらうのを諦めてる事くらい、
でもお前、認めて欲しい人がいるんだろ…化け物を息子にしたあの物好きに」
その言葉に自分を息子として認めてくれた"父"が頭に浮かんだ。
その刹那、足元がグラりと揺らいだ
「何…だ」
「あ、気をつけろよ、下は底なし沼だ」
男が指差した自分の足元を見ると自分の足が半分、泥のようなものに埋まっているのが分かった。
何とかして体勢を整えようと手を使って体を支えた
「お前はあいつにだけは人間として自分を見てほしいんだろ、
この世界の全ての人間がお前を化け物だと糾弾しようとも」
「…そうだ、あの人にだけは 俺は」
「だがまあ」
男は一瞬間を置いて言う。
「それは、無理だな」
「何故だ」
「何故ってお前、あいつがお前をどう見ているのか、まさか知らない訳じゃないよな」
息が一瞬止まる
知らない訳がない、あの人は自分を人間として見ていない、
人間ではない別の何かだと思ってる
そんなの分かっている、でもやはり…
足を沼から引き抜こうと、体を支える両手に力を込めた。
「諦めが悪いな」
「うるさい、父親に認められたいと思って何がいけない」
あと少しで片足を沼から引き抜ける。 あと少し…あと少しで…
「ふざけるな、いい加減自分をよく見てみろよ!」
男はそう叫ぶと、カズラの頭を掴んで下を向かせた。
下は少しばかり鏡のようになっており、
そこには何故か頭を押さえつけられたカズラの姿だけが写されていた。
目の前にいる自分の姿を覗き見ると、
顔の大半が植物で覆われ、体は植物で埋め尽くされており、手足は蔦に変わっていた。
そこに写されたカズラの姿は…化け物以外の何者でもなかった。
カズラの体がワナワナと震えだす。
「これ…は」
「分かったろう、これがお前の正体だ! よくこれで認めてほしいとほざけたな」
「あの悪魔の実は記憶消去も引き起こすそうじゃないか、今のあいつはお前の記憶を全て失っている」
「見聞色に長けているあいつがこの姿を見たら、お前を化け物だと罵るに
決まってるさ」
「違う! あの人はそんなこと言わない、そんなこと…」
「息子でもないただの化け物だとしても?」
カズラは目の前の自分から逃げるように両手で顔を覆った
仕方ないと思っていた、自分が普通ではないと分かっていたから、
それを受け入れていたはずだった。 一人でひっそり生きていければよかった、
それなのに。
俺はあの人に拒絶されたくないのか、
沈む、沈む、体が沈む
何処までも堕ちていく底なし沼へ
「違う、違う、俺は…」
カズラの精神は不安定になっていた。
本来なら保てるはずの彼の精神は、ホビホビによるバグと自分を責める自分の"心の闇"に徐々に追い込まれていった。
カタカタと壊れた歯車のように男は嗤う。
「認めちまえよ」
男がカズラの耳元で囁く
「お前は所詮、化け物でしかないんだよ」
『化け物は化け物だ』
上から降りかかった自分の写し鏡の声と、とある男に投げかけられた言葉が同時に
カズラの耳を通り抜けた。
何かにヒビが入る
「…俺…は」
体の半分以上が沼に沈みきっていたが、
今のカズラにはもはや抵抗する力など残されていない。
世界の酔いも甘いも見据えていたその瞳は、光を灯してなどいなかった。
「……さん…」
虚空に手を伸ばしながら、絞り出された縋るような小さくか細い声は
誰の耳にも届く事はなかった。
砕け散った音が耳に響いたその瞬間、カズラの意識は暗闇の中に消えていった。
「おかえりなさい、化け物さん」
男は沈んでいく魑魅を楽しそうに眺めていた
蔓は沼に還りけり、壊れた"心"は戻らない