カミキヒカルは2児のパパ (顔合わせ)

カミキヒカルは2児のパパ (顔合わせ)




私達、新生『B小町』のファーストライブから季節は移ろい、4ヵ月が経った。

配信業はMEMちょのサポートもあって順調で、何度か小さいライブも開いたり───。


「これでこのクラスに居ても浮かない!私も一端の芸能人て言って良いよね!?」


「まだそんな事気にしとったん?」


「そりゃそうだよ!皆が芸能活動の話する度になんか疎外感あって話に乗りづらくて!」


右を見ればファッションモデル、左を見れば俳優と皆が皆キャリアのある芸能人。それだけじゃなく、今会話をしている目の前の親しい友人2人なんてバリバリに名前の売れてるトップマルチタレントとグラビアアイドルだ。

今までは自称アイドルだったけど、晴れてデビューした今の私は本物のアイドル!やっと胸を張って2人の隣に立てるんだ!


「私からすると同業者の方が気まずいまであるけどね」


「あー、ちょっと分かるわぁ」


そうなの!?


「せやかてあの仕事したとかこの仕事がどうとか、こっちは愚痴のつもりでも同業から見たら自慢に聞こえたりするんよ~」


そうなんだ…。売れっ子には売れっ子の悩みがあるって事なのかな。不知火さんも「うんうん」って頷いてるし。


「昨日、俳優の堂山くんからDMで食事に誘われたとか軽率に話したい」


「それは自慢やろ」


「バレた?」


俳優の堂山くんって言ったら、今ドラマにも出てる人気俳優じゃん。やっぱ不知火さんの話は次元が違う……。

自分でも未だにホント?ってちょっと不思議に思うけど…恐れ多くも不知火さんと仲良くなって、今はこうしてお昼ごはんを一緒に食べる仲になってる。


芸能科は意外と売れっ子だからーとかの上下関係はなくて、お互いの恋愛事情を握り合う運命共同体的な仲間意識が強い。

ただ割と体育会系で学年毎の上下は強く、一般科の女子からの目線は厳しかったりする。お兄ちゃんの棟に行くのもちょっと躊躇われる感じに。


「星野さぁ、役者やってんだろ?なんで一般科に居んの?」


「俺は元々裏方志望だったから」


「そうなん?でもドラマ出てるし、今度『東ブレ』の舞台出るんだろ?役者なればいいじゃん」


「……最近は少しそう思ったりもするけど、俺に芸能界でやっていけるほどの才能があるとは思えない。

流れがあれば才能ない奴でも脚光を浴びるのが芸能界、そして一瞬だけ輝いて消えていく。あくまでそれはスタート地点に立ったに過ぎない、そこから生き抜くのが大変なんだよ」


「ふーん?」


まだまだ卑屈寄りなのは確かだけど、最近は色々な影響でちょっと素直になったお兄ちゃんは順調?に役者の仕事を増やしてる。お兄ちゃんの考えてる事はイマイチよく分からない部分が多いけど、もっと自分の気持ちに向き合っても良いのにね。


あっ、そうそう。お兄ちゃんには今可愛い彼女が居る。『今からガチ恋♥️始めます』、通称『今ガチ』って番組で付き合い始めたんだけれど、本人曰く仕事だけの恋人だそうで。


クズ男、女の敵って思います。


ママが話してる感じだとお兄ちゃんの女誑しっぷりは間違いなくパパの遺伝のようで、正直ちょっと納得した自分が居る。

可哀想なので、今度あかねちゃんに会ったら優しくしようと思った。早く会ってみたいなぁ。


私は今順調だ。

いつか、ママが立ったドームのステージに立つその日まで、一生懸命アイドルを続けていく。


「見ててね、ママ」



「ん?いつまでも見守ってるよ?」


「わぁ!いつから居たのママ!?」


「ずっと居たよー」ケラケラ



◇◆◇◆◇◆



───舞台『東京ブレイド』・スタッフ顔合わせ当日


「『劇団ララライ』って硬派なイメージだったけれど、よくもまぁ2.5受けたわよね」


俺と有馬は今、舞台『東京ブレイド』に関わるメンバーと顔合わせをする為に、指定されたビル内のスタジオを目指している。ララライ側が既に予約を入れている場所との事で、いちごプロを通じて日時と場所の連絡が入れられた。


「そうは言っても半分は外部から集めたキャストだ。緊張しなくて良いと思うぞ」


「き、緊張なんてしてないんだけど?」


内部の案内図を確認しながらスタジオへ向かう通路を歩いていると、別の通路から見覚えのある人物と合流した。


「あっ…………メルトくん」


「……オス」


鳴嶋メルト。以前ドラマ『今日あま』において共演したモデルで、お世辞にも上手いとは言い難い演技だった。だが最終話の感情を乗せた演技は光るものがあり、それは視聴者にも間違い無く響いたはずだ。

そういえばキャスティングされた役者の1人に名前があったな、確か『キザミ』の役だったか。


「……この公演、鏑木Pが外部の役者のキャスティングに噛んでるんだと。つまり俺達は鏑木組ってわけだ、よろしくな」


「……………………。…………よろしくね」


「なんだよその間は…まぁ分かるけどな。

ロクに演技出来ない奴居て、『今日あま』の悪夢が再びとか思ってんだろ」


(バレてる……)


とか図星突かれて内心焦ってんだろうな。有馬は思ってる事が顔や態度に出るきらいがある、それをメルトに悟られたんだろう。

ばつが悪そうな顔を有馬がするが、メルトの方も同じだった。


「あれが初めての演技だったんだから大目に見てくれとは言わないけどよ、『今日あま』から9ヵ月……ちょっとは勉強?してだな……

前よりかはマシになってると思うから、駄目だったら遠慮なく言ってくれ」


メルトの目を見ると、真剣そのものだった。恐らく今回の話を受ける前から勉強してきたのだろう、有馬もそれを感じたようで意外そうな顔をしていた。


───Bスタジオ


指定のスタジオに到着し、扉を開けて3人で中に入る。そこには既に多くの人が待機していた。予定の時間まではまだ少しあると思うが、俺達が最後か?

挨拶は大事な仕事といつの日か有馬が言っていた事を思い出して口を開こうとしたところで…


「『キザミ』役を務めさせていただきます、『ソニックステージ』所属の鳴嶋メルトです。よろしくお願いします」


メルトに先を越された。

以前はロクに挨拶もしていなかったはずだが、今のメルトはめちゃくちゃ礼儀正しく挨拶をしている。


(役者の勉強だけじゃなくて、その辺りの礼儀も……)


『今日あま』の時とはまるで別人のメルト。その様子にかなりの感心を抱いた俺と有馬は、メルトに続けるように挨拶をする。


「『つるぎ』役を務めさせていただきます、『いちごプロ』所属の有馬かなです」


「同じく『いちごプロ』所属、星野アクア。『刀鬼』役を務めさせていただきます」


俺と有馬が挨拶を終えるのとタイミングを同じくして、後ろの扉から誰かが入ってきた。


「皆早いねー、まだ10分前なのに。1人トイレに行ってるけど、大体揃ったみたいだから紹介始めちゃおっか。

ボクの名前は雷田、この公演の総合責任者。で…こっちが演出家の金ちゃんね」


「金田一敏郎だ」


金田一……そうか、この人が父さんの言っていた人か。父さんが子供の頃世話になった人であり、同時に演技におけるノウハウを叩き込んだ人物。

実際に会うのは初めてだが、なるほど確かに厳しそうな印象だ。


「で、こっちは脚本家のGOAさんに、2.5の経験豊富な鴨志田朔夜くん」


「よろしくです」


メルト曰く、この鴨志田という人も俺達と同じく鏑木さんのキャスティングらしい。経験豊富って点では確かに適任だろうが、やはりあの人の面食い趣味が多大に入ってるなと感じる。


「こっからはララライの役者さんで、みたのりお、化野めい、吉冨こゆき、林原キイロ、船戸竜馬…そして黒川あかね」


「よろしくおねがいします」


「それから今回主演を務める…」


雷田さんが壁際に目をやると、メガネを掛けてうっすらと無精髭を生やした男が船を漕いでいる。それに気付いた金田一さんは足早に向かっていき、その男を蹴って起こした。


「起きろバカモンが!」ドカッ


「ってぇ…あぁ、サーセン。この芝居の主演の……役名なんだっけ。

まぁ良いか、姫川大輝。よろ」


姫川大輝…。『劇団ララライ』現看板役者であり、現在放送中の月9ドラマにて主演俳優を務める人物。つい最近も『帝国演劇賞最優秀男優賞』を授与されたと、新聞に記載されていたのを目にした。

紛れもない、天才役者だ。


(何だ…?この感覚……)


姫川さんを見た時から感じる既視感にも似た謎の感覚。違和感ではあるのだが、多分嫌なものではない…と思う。

判断が曖昧なのはこの感覚の正体にも心当たりにも、全く見当が付かないからだ。


謎の感覚の正体に悩んでいると、スタジオの扉が大きな音を立てて開いた。


「すみません、遅くなりました!」


「遅せぇぞ、ったくいつまで便所籠ってやがんだ。お前で最後だからさっさと自己紹介済ませろ」


「わ、分かりました。えっと、今回の舞台で『刃暁』役を拝命しました、カミキヒカルと申します。皆さん、よろしくお願いします」


(いや誰だよ)


入ってきたのは父さん…っぽい人だった。雷田さんが言っていたトイレに行ってる人って、父さんだったのか。

というかその見た目は何なんだ…?いつもは髪を下ろして首から上が俺と瓜二つなのに、今は髪を全部後ろで纏めてポニーテールにし、糸目のように細めた目で胡散臭い笑みを浮かべている。


待てよ、胡散臭い笑み…?あぁこれか、母さん達が言っていた『今ガチ』初期の俺のキャラが父さんそっくりだって言ってたのは。実際に見てみると、納得はいかないが正直腑に落ちると言うか、ああいう言い方をされるのも仕方ないと感じた。


確かにめちゃくちゃ胡散臭い。


これで改めて全員の紹介が終了した。


「このメンバーで一丸となり、舞台『東京ブレイド』を成功に導きましょう!」


─────────。


「今日は顔合わせだが、主要メンバーは一通り揃ってるみたいだな。このまま本読みもやっちまうか。

半から始める。雑談するなり準備するなりしててくれ」


今日で本読みもやるのか。まぁ練習時間にも限りがあるから、やれる時にやっておくのは至極当然の考えだ。


そう考えていると、あかねが嬉しそうな顔をしながら俺の方に駆け寄ってきた。


「アクアくんおひさ」


「おひさって言っても時々アリバイ作りで会ってるだろ」


「それはそうだけど、またお仕事で会えるのが嬉しくて…。『今ガチ』の時は迷惑かけっぱなしだったから…」


まだ気にしてるのか。あかねらしいと言えばらしいが、俺はやらなきゃならない事をやっただけだからそこまで気に病まないでほしいというのが本音だ。


「舞台は私の本業だし、今度は私がアクアくんの助けになるよ」


「自信あるみたいだな」


「そんなんじゃなくて!私なんてまだ全然だし自信なんて…!

今回の舞台は私達一緒の出番が多いから、いつでも頼ってほしいなって思っただけ!」


相変わらず謙虚な姿勢だな。だが俺は2.5は初めてだし、そう言ってもらえるのは正直助かる。何かあったら遠慮なく相談させてもらおう。



「…………」ジトーッ


「あの2人付き合ってるんだっけ?リアリティショーがどうのこうのって」


「ば、番組上そういう流れになってるみたいね!?でもあくまでビジネスみたいよ!?そりゃキスした相手とすぐ疎遠になったらファン受け悪いでしょうし!

まぁなんか仲はいいみたいだけど」


凄い目してるぞ有馬…なんか饒舌だし。


「ふーん…まぁ向こうは役柄上でも許嫁だしな、狙ってのキャスティングなんかな?マッチしてて良いんじゃね?」


「私は役者のリアル情報と板の上をリンクさせるのはノイズになるから好きじゃないんだけどね?基本的に観客が持つ情報ってのは一律に揃えた方が演出は広く刺さるものなのに、プロモ側がそういう意味あるのか分からないチョイ足し好きなのは2世紀前から変わらないのよねぇ~……」ブツブツブツブツ


さっきよりも据わった目でブツブツと呪文みたいに、小さく低い声で捲し立てている有馬。あれ、俺何か余計な事言ったか……?

というか俺の知ってる有馬と何か違くないか?


「有馬、『今日あま』の時はもうちょい……」


「あの時は座長だったからね、現場の空気悪くしたくなかっただけ。私はこういうのが素よ」


そう、だったのか。あの現場じゃあ俺達に気遣って…。


「……そんな気ぃ遣わなくて良かったのに。最初からガシガシ来てくれてたら、俺だって自分のダメさにもっと早く気付けて……」


…いや、こんなのは言い訳だ。有馬が言ってくれたとして、あの時の俺が態度を改めたか?こんなのはただの責任転嫁、甘えだ。

今の俺に出来る事は、あれからの努力を見せる事だけ。幸い俺と有馬の共演シーンは多い、演技で見返すよ。



『東京ブレイド』はいくつかのチームが抗争を繰り広げ。いつしか互いに友情や愛情を深めていく王道バトル漫画だ。


主人公達の『新宿クラスタ』に有馬も所属さていて、今回の劇はこの2チームが戦う『渋谷抗争編』を柱にシナリオが展開していく。そこに急遽抜擢された父さんが演じる『刃暁』のシーンを、最後に追加した形だ。


「有馬との共演はラスト数シーンだけか」


「かなちゃんと仲良いみたいだもんね、今日も一緒に来てたし。共演シーン少なくて残念だったね…」


…あかね、残念だが逆だ。有馬は演技の話になると熱が籠り過ぎる、それも怖いくらいにな。俺としては出番がズレてる方が、演技内容にグチグチ言われるタイミングも少なそうで助かる。


「でも楽しくない?演技の話。私は無限に出来ちゃうなぁ……」


「勘弁してくれ。それが通じるのは、演技に情熱持ってる奴だけだ」


「……情熱、無いの?」


「分からん」


舞台に立つ奴は基本的に演技が好きで、演技に真摯な奴ばかりだ。あかねと有馬みたいにな。

俺は違う、というよりは『まだ』違うという方が正しいか。一度は離れた役者の道、今回の舞台はもう一度この道に戻る意義があるかどうかを探るための手段でしかない。


そんな考え事をしていると、金田一さんがスタジオに入ってきた。


「演出が戻ってきた、本読みが始まるぞ」


「うん、ちょっと待って」


そう言うとあかねは静かに目を閉じ、軽い瞑想のように精神を研ぎ澄ます。


「…………行こ」


─────────。


「今回下手な子居ないねぇ。芸歴の長い有馬ちゃんやララライの面々が演技出来るのは当たり前として、メルトくんも『今日あま』の演技をみた時どうなるかと思ったけどなかなか仕上げて来てる。アクアくんも舞台は初めてって聞いたけど、周りが見えててソツがない」


「鏑木は他所に人送るときは堅い人選するからな」


「みたいですね。皆すごいなぁ」


僕は今金田一さんと雷田さんと一緒に、今回参加するメンバーの練習風景を見ている。

というのも僕は緊急の参入であり、かつ脚本家のGOAさんが本来の脚本のラストに付け加えた一人演技になるため、他のメンバーと合わせて練習する必要が無いためだ。


しかし練習を見ていると、雷田さんが言うように本当に皆演技が上手だ。有馬さんと黒川さんは僕もよく知っている天才ぶりを発揮しており、メルトくんは『今日あま』の時とは別人のように演技が様になっている。あれからかなり勉強を積んできたのが見て取れるね。

そしてこれは家族の贔屓目も十分に入っているけど、アクアも相当演技が上手だ。しっかりと役柄のキャラクター性が見れるし、周囲の人間に合わせる細やかさも持ち合わせている。


今回の舞台はとてもクオリティの高いものに仕上がりそうな予感がするね。


「有馬ちゃんとあかねちゃんの同世代新旧天才対決もアツいよねぇ。

役にどっぷり入り込む『没入型』と周りの演技を綺麗に受ける『適応型』、演じ方も対照的。見た感じあかねちゃんの方が一歩先行ってる感じかな、有馬ちゃんも負けないでほしいなぁ。じつはけっこーファンなんだ」


確かに、今回の舞台のように予めキャラクターが存在している場合は、演技の型の都合上黒川さんに軍配が上がるだろう。

だけどそれは有馬さんが受けの演技をしていたらの話。『今日あま』の最終話で見せたような演技をしたら、あるいは……。


「分からんよ、うちには姫川が居るからな」


どうやら金田一さんも同じ考えを持っていたようだ。

黒川さん以上の演技力を持つ大輝くん。そんな彼ならば、有馬さんが全力の演技をしても食われる事など無いだろう。


「……」


「大輝くん、やる気が出てきたかな。纏う雰囲気が一変した」


台本を丸めて刀のように持つ。その姿を見た者は一瞬、その場に『ブレイド』が立っているかのような錯覚をする。


「有馬…だっけ。遠慮しないで良いよ」


「…!」


おぉ、有馬さんもエンジンを掛けたみたいだ。何のリミッターも掛けずに演技を出来た事が近頃殆ど無かったからね、大輝くん相手なら思う存分実力を発揮出来る。


「─────!───っ!!」


「────!?────────!」


2人で始めた練習風景は圧巻だった。今まで各々練習していた他のメンバー全員が動きを止め、大輝くんと有馬さんに目を奪われていた。

それはライバルである黒川さんも、僕の息子であるアクアも例外ではない。アクアは恐らく有馬さんの全開の演技を初めて目にしたのだろう。両目を見開き、一言も発さずに目の前で繰り広げられる光景を見つめている。


(ふふっ、アクアにとってはかなり良い刺激になるだろうね。そうだよアクア、演技っていうのは続けていけばここまでの領域に辿り着けるんだ。

この機会に自分に欠けているもの、吸収出来る事を見つけると良いよ)



あれから少しして、今日の練習は終了した。

元々は顔合わせだけの予定だった所に急遽入れられた練習のため、時間があまり確保出来なかったからだ。


「有馬かな、この後メシどう?」


「良いわね、私も聞きたい事が山程あるわ。メルトも来なさい」


「俺も?」


「共演シーンが多いんだから当然でしょ」


どうやら有馬はメルト、姫川さんの『新宿クラスタ』面子で晩飯を食いながら演技の話をするようだ。


……。


(かなちゃん…少し前はサポート優先であんなに前に出る演技する子じゃなかった。あんな身勝手な……「私を見ろ」って演技が出来る子じゃなかったのに!)


ブツブツと考え事をするあかね。大方先ほど見せつけられた2人の演技の影響だろう。

俺とて同じだ。さっきの有馬の演技、『今日あま』の時とは比べ物にならない程に凄絶なものを見せられた。


役者はどいつもこいつも負けず嫌い。以前のビジネスデートの時にあかねと有馬の様子を見た時に感じた事だ。


(…負けず嫌い、か)


「ララライも最近停滞気味でよ…。2.5なんて受けたのも外部からのキャスト引き受けたのも、何かしらの刺激が必要だと思ったからだ。

どいつもこいつも負けず嫌いだからよ、あんなの見せられて何も思わねぇワケない。アレとどう戦うか、必死になって考えちまうもんなんだよ。【役者】なら」


「…………」


(別に勝ちたいだなんて思わないが、このままってのもつまらねぇよな)


有馬かなと姫川大輝。この組み合わせに対抗するには、並大抵の演技では引き立て役になるかどうかも怪しい。

さて、どう食らいついていくか…。



Report Page