カミキヒカルは2児のパパ (プロローグ)
───この物語はフィクションだ。というよりも、この世の大抵の物事はフィクションである。『事実は小説よりも奇なり』といった表現があるように有り得ない、起こり得ない事が実際に起こり得る以上、ある意味この世は小説以上のフィクションだとも言える。そういう意味では、アイドルなんてフィクションの極みだ。
捏造して、誇張して、都合の悪い部分は綺麗に隠す。ならば、上手な嘘を吐いてほしいのがアイドルファンというものだ。
「…先生、またサボってアイドルのDVD観てるんですか? そういうのは家で観てくださいって前も言ったでしょう、患者の病室で観るのは常識的におかしいですよ」
「失礼な。これは美しいものを見ると健康に良いという、俺の医師としての見解のもt
「ただの布教活動ですよね?」
とある病院の一室、黒髪メガネの男が看護婦に咎められている。男の名は雨宮吾郎、国立医大に一発合格・卒業をし、産婦人科医として働いている有能…ではあるのだが、同じ院内では『顔良し性格良し器量良しの残念医師』という可哀想な評価をされている。
というのもこのゴロー、熱烈なアイドルオタクなのである。その為、先ほど咎められていたように患者の見回りをしながら布教活動めいたことを度々行っており、その度に看護婦から苦言を呈されているのだ。
「そういえば先生、さっきツイッターのトレンドに…」
「ん?」
「ええーーっ!? アイが活動休止ぃーー!?」
「あぁ件のアイドルの…ホントに信者なんですね…」
めそめそと涙を流しながら悲しみに暮れるゴローに同情の目を向けるも、それも一瞬だった。その後には冷たく、ドン引きしているような眼差しを向けられる。
「16歳でしょその子。ロリコンですね」
「ロリコン言うな!こっちはめちゃピュアな気持ちで推しとるわ!」
「どうでもいいですけど、新しい患者さんがいらしてるので早く行ってください」
◇◆◇◆◇◆
ガチャッ、とドアを開けてゴローが診察室に入ると、椅子に座っていた3人に頭を下げて、自分も椅子に腰を掛ける。
(しかし、アイは体調不良か…心配だなぁ。無事に戻ってきてくれたらいいけど)
(…いけないいけない、目の前の仕事に集中せねば)
「えーっと…星野さんは初めてですね?」
「はい」
お腹の具合は…20週ってとこか。初診察にしては大分遅いタイミングだな。
年齢は16、なるほどワケあり。誰にも相談出来ないままここまで来たパターンか。
「貴方は親御さん?」
「まぁ戸籍上は…。彼女は施設育ちなもので、実質後見人というか身元引受人というか…」
「なるほど」
金髪でサングラスを掛け、髭を貯えた男性に尋ねる。
それにしても、16歳施設育ち。どこかで聞いたような話だな──
まるでアイドルの──
「そちらの君は?星野さんの弟?」
「あ、僕はえっと…その…」
もう1人側にいた中学生くらいの男の子に尋ねると、何やら言いにくい事情がありそうな感じがする。こっちもワケありか…?
「おい、さすがに先生の前では帽子取れ。失礼だろ?」
「あー、それもそうだね」
帽子を取った星野さんの顔を見た瞬間、俺の脳は活動を停止した。
………………え? アイ?
「先生、どうなんでしょう。もの凄い便秘という可能性は…」
だとしたら死んでますねぇ…
「そっちは順調!今日も問題なかったよ!」
「アイ、女の子があんまりそういうこと言うもんじゃないよ」
目の前にいるアイがウィンクをしながらサムズアップで答え、弟さん(推定)がそれを窘める。
…………………………。
「とりあえず検査してみましょう。準備がありますのでお待ちください」
ガチャッ、パタン。部屋を出てドアが閉まる
…………。
…………………。
…………………………えっ。
(ちょいちょいちょいちょい!??えっ、本物!?)
アイのそっくりさん!?いや、長年のファンの俺が見間違えるハズがない!!
え~~~~っ、リアルアイちょ~~~~かわい~~~~っ!
「じゃねぇ!!」ドゴォッ
思いっきり頭を床に叩きつける。床が割れかねない音に驚いた患者が変なものを見る目でこちらを見た気がしたが、そんなことに意識を割いている暇は無い。
(推しのアイドルが妊娠しとる!!)
ヤバい、ショック過ぎてゲボ吐きそうなんですけど!!
脳内が大混乱極まる中、部屋の中から会話が聞こえてくる。
『アイ……。本当に、どうしてこうなった』
ホントそれだよ!!
『社長の俺にどうして相談しなかった…。ヒカル、お前もだぞ!』
ヒカル…さっきの男の子の名前か。ん?ヒカル『も』?え、あの2人ってどういう関係なの?確かにアイに弟がいるなんて話は聞いたこともないけど、だとしたら…?考えが纏まらない。すると…
『斉藤社長、本当にすみませんでした!一夜の過ちでこんなことになってしまったのは僕の責任…。どんな償いでもします!』
『…ハァ、お前が責任感の強いやつだってのは初めて会ったときから知ってるよ。ヒカルだけの責任じゃねぇ、このアホアイドルも同罪だ』
『そうだよヒカル!佐藤社長の言う通り、私達2人の責任だよ!それに大丈夫だって、なんとかなるよ☆』
『逆にお前はなんでそんな楽観視してんだよ!あと俺の名前は斉藤だっつってんだろクソアイドル!!』
………とりあえず検査の準備するか。
◇◆◇◆◇◆
それからしばらくして、必要な検査が終わった。
「検査結果、20週の双子ですね」
「「「双子……」」」
「アイ」
斉藤社長が真剣な眼差しでアイに話しかける。
「本気で産む気なのか?16歳で妊娠出産なんて世に知られたら、お前もウチの事務所も終わりだぞ」
「…………先生は、どう思いますか?」
「…………」
『最終的な決定権は君にある。よく考えて決めるんだ。』
『医者としては、そうとしか言えないな』
そう告げて、最初の検診を終えた。
「医者としては……ね」
ファンとしてはどうだろうか。
そんなことが頭の中を巡っている時、エントランスのテレビの内容が目に映る。芸人とアイドルの電撃結婚ニュースだなんて、またタイムリーな。
「うわっマジか!MIU好きだったのに!」
「お前引くくらい大ファンだったもんな」
「まて……逆に考えれば、今死ねばアイドルの子供に転生出来るのでは…?」
「考えがキモすぎる…」
「でもさー…」
『転生』…。その言葉に少し前のことを思い出していると、名前も知らない彼が一言。
「男と子供が居るアイドルを推せる?」
それが、深く、俺の胸の中に突き刺さった。
◇◆◇◆◇◆
君に好きな男が居ても、俺は君を応援し続ける。でも君が子供を産めば、より高みに羽ばたいていく姿を見る事は出来なくなるんだろう。
「ファンの意見てのは身勝手だよな…そう思うだろ、さりなちゃん」
もうすぐ日没となる病院の屋上。柵に肘を掛けてスマホの待ち受けを見ながら、ふと呟く。
─── 天童寺さりな
かつて俺が担当した患者。生存率の低い難病に侵された、まだ12歳だった少女。そんな彼女のことを思いながら独り黄昏ていると、ギィ…と音を立てて屋上のドアが開く。こんな時間に誰だ?なんて思って振り返ると、つい数時間前に見た顔がそこに在った。
「あっ、センセ」
「先生?あ、本当だ」
「星野さんと、カミキくん。夜風が体に障りますよ」
「僕もそう言ったんですけど、アイが聞かなくて…」
「厚着してるからだいじょぶ!」
アイは両手を大きく広げて、風をその身体に受ける。
やはり、その一挙手一投足の全てが画になる娘だと改めて思う。
「社長の勧めでここを選んだんだけど良い所♪ 夕暮れでも星がすごくよく見える……東京じゃこうはいかないなぁ」
「……わざわざこんな田舎に来たのは、東京だと人目につくから?」
「……あれ?私仕事の事言ったっけ?」
「いや、その辺りの話はしてないはずだよ。社長が漏らすとも考えられないしね」
「……昔、患者に君のファンが居たんだよ」
「そうなんだ、どんな子なの?もう退院しちゃった?」
「………………いや、数年前に亡くなったよ」
「えっ……ご、ごめんねセンセ。無神経なこと聞いちゃって…」
まぁ、気にはなるよな。わざわざ医療の整ってる東京を離れてまでこんな田舎に来たんだ、きっとアイのことを知らない土地だと社長さんも目星を付けたんだろう。
「……」
話してもいいものか少し悩んだ後、2人にさりなちゃんの話をする事にした。
◇◆◇◆◇◆
その頃の俺も、今みたいによく患者の病室でサボってた──
「仕事しなよ(してください)」
2人して人のモノローグに割り込むのやめてもらえる?
その時出会った1人の患者が、俺の運命を変えた。
可愛らしく整った顔立ち。
明るい表情。
人懐っこい性格。
そんな綺麗な面に反し、放射線治療の影響ですっかり抜け落ちてしまった、綺麗だった髪。
触れれば折れてしまいそうなほど、細い小枝のような手首。
研修医時代の俺が担当した患者、天童寺さりな。
『で……!この子がめいめい!ダンスが良いの!』
「ふーん」
『歌はありぴゃんときゅんぱんが良いんだけど、やっぱ私の推しは~~……』
『アイ一択でしょ!』
『私と同い年なのに大人っぽくて歌もダンスも上手いの!何より顔が良い……生まれ変わったらこの顔がいいなぁ……』
スマホの中のアイを見つめながら、目をキラキラ輝かせるさりなちゃん。
「何が生まれ変わりだよ、馬鹿なこと言ってんなよ」
『夢がないね、せんせ』
悲しい大人を見るような目で見つめながら、さりなちゃんはそうこぼす。
『ねぇせんせ、もし芸能人の子供に生まれていたらって考えた事はない?容姿やコネクションを生まれた時から持ち合わせていたらって』
「無い」
『やっぱり夢がないなぁ』
夢って、俺はもういい年した成人男性だぞ。そんなのが生まれ変わり、所謂『転生』がどうだの言ってるのは端から見てちょっとアレだろ。現実的に考えて生まれ変わるなんて有り得ない。それに
「さりなちゃんも可愛いじゃん?生まれ変わる必要なんてない」
そんな俺の言葉に、さりなちゃんが薄く微笑む。
「退院したらアイドルにでもなればいい、そしたら俺が推してやるよ」
『ほんと?』
ぱっ、と明るく笑ったさりなちゃんが思い切り抱きついてくる。
『せんせ好き!結婚して!』
「社会的に死んじゃうから勘弁して」
『このモラリストー』ブー
「残念だったな。16歳になったら真面目に考えてやるよ」
『……16かぁ』
さりなちゃんの表情が弱々しく、寂しさを湛えた微笑みに変わる。
『せんせ、いじわるだね』
「現実的なプランだろ」
2人だけの病室。会話は無く、静寂に包まれる。
その静寂が心地よかった。
それだけでよかった。
───それから少しして、さりなちゃんは亡くなった。
◇◆◇◆◇◆
「退形成性星細胞腫……まだ12歳だった。今でも生きてたらアイ、君と同じ16歳。俺は、君とさりなちゃんを重ねて見てたんだろうな…」
彼女が夢見た道を歩く…その姿を見届けたいだけなんだよ。
「……」
「…そっか、そんなに私の事応援してくれてたんだ。そのさりなちゃんって子」
「ああ…」
いつの間にか日が沈み、屋上は静かな夜に包まれる。そんな中、俺はアイに尋ねた。
「アイ、君は…アイドルをやめるのか?」
「なんで?やめないよ?」
「でもそれは……」
アイが自分のお腹を愛おしそうな手付きでさすりながら続ける。
「私、家族って居ないから、家族に憧れあったんだ。……お腹に居るの、双子なんでしょ?」
「産んだらきっと賑やかで、楽しい家族になるよね!」
子供は産む…アイドルも続ける。つまりそれは…。
「そ…!公表しない」ニヤリ
アイははっきりと、そう言い切った。その瞳に輝く星を湛えて、アイは続ける。
──嘘は、とびきりの愛なんだよ?
「…そうか、アイの気持ちは分かった。カミキくんはどうなんだ?さっきの斉藤社長とのやり取りを聞くに、君が双子の父親なんだろ?」
不意に、この場にいるもう1人の少年へと尋ねてみる。
「…先生の仰る通りです。僕がアイと一線を越えてしまったことで、アイが妊娠した。世間の常識で考えれば異常だということは理解しているつもりです。ですが……」
カミキくんは真剣に、そして覚悟の籠った口調と眼差しで言う。
「僕も、アイに双子を産んでほしい。たとえ僕がどれだけボロボロになろうとも、3人に対する責任の償いをしたいんです」
「──……!」
中学生男子のそれとは思えない程の覚悟を聞いた俺は、改めてヒカル君の目を見る。
…強い覚悟を秘めてはいるが、その瞳の奥は孤独でくすんでいる。この子ももしかしたらアイと同じ、親からの愛を受けれずに育ったのかもしれないと、そう感じた。
少年と少女、2人の思い/覚悟を聞いた俺は
────────
「和解した」
「「え?」」
医者の俺と、ファンとしての俺の意見が一致した。
「星野アイ、カミキヒカル。君達の子供は僕が産ませる。安全に、元気な子供を」
「センセ…」
「…それとヒカル君、ちょっとこっちに来なさい」
突然呼ばれたヒカル君は何事だろうと思いながらも、ゴローの前まで駆けていった。
「先生、一体何で…あいたっ」
いきなりデコピンを食らったヒカル君と、それを見たアイは目を白黒させながら俺の方を見る。そして俺は、ヒカル君の目を真っ直ぐに見据えながら言う。
「君の覚悟は確かに聞いた。けどな、子供には父親と母親の両方が必要なんだ。自分はボロボロになってもいい、なんてことは言うな。ましてや君達は世間ではまだまだ子供、自分達だけでどうにかしようなんて考える必要はない」
「もっと大人を…斉藤社長や俺を頼ってくれ」
そう言って微笑みかけると、ヒカル君の目からポロポロと涙がこぼれてくる。
ああ、やっぱり無理をして自分に言い聞かせて来たんだな。責任感が強いってのも考えものかもな。
「先生…!ありがとう…ございます……!」
その姿は年相応の、まだまだあどけない中学生男子のそれだった。泣き止むまで頭を撫でてやり、3人で屋上を後にした。
─────────。
◇◆◇◆◇◆
アイの出産まで、あと数日といった辺りまで迫っていた。
アイやヒカルと付き合うようになってから2人の、特にファンであるアイの知らなかった部分がよく見えるようになってきた。
例えば、思ったよりも用心深いこと。
わざわざ東京を離れた理由をしっかり理解しているので帽子は目深に被るし、マスクの着用も忘れない。おまけに声を微妙に変えることもしているようだ。ヒカルも以前どこかの劇団に所属していたらしく、アイと同様に声を変えている。
例えば、思ったよりも性格は暗めであること。
ヒカルの方は初対面の印象でともかく、アイもそうだとは思わなかった。天真爛漫を絵に描いたようなアイドルの面も確かにあるのだが、根っこの部分は16歳相応の少女そのもの。それを演技で覆い隠している。
これに関しては2人とも、幼少期の成育環境による影響と推察出来る。
アイが施設育ちだとは聞いたが、まさか母親の逮捕が切っ掛けとは思わなかった。母親からは毎日虐待を受けており、ある日その母親が窃盗の罪で逮捕されたと。出所後に迎えが来なかったことに「痛い思いをしないからまだマシだよねー」なんて言われた時は、言葉に困った。
そしてヒカル。こちらは虐待こそなかったものの、自分の存在をよく思われずに居ないものとして扱われていたらしい。その為自分自身に価値があるのか分からなくなり、軽度の人間不振から『命の価値』というものに疑問を持っていたとのこと。
やはり、親からの愛情というものは子供の成長に絶大な影響を及ぼす。それなのにこの2人は、比較的かなり真っ直ぐに近い成長をしたと言えるだろう。この点はかなり安心した。いやマジで。
正直、まだ複雑な気持ちがあるにはあるけれど、それは全力で隠した。
──嘘は愛
なんだかいい言葉に思えてくるんだから、スターは凄い。
◇◆◇◆◇◆
───出産予定日
「センセ、お疲れ様。でも呼んだらすぐ来てよ?」
「おう。家はすぐ近くだし、着替えやらを取りに戻るだけだからな。まぁ来れなくても代わりの先生来てくれるし」
「やだ、センセがいい」
「アイ、わがまま言ったらダメだよ。大丈夫ですよ先生、僕がずっと側に付いてますから」
「お、言うねぇ。偉いぞヒカル」
頭を撫でてやると、ヒカルはムフーっと満足げにしている。やっぱまだ中学生だな、年相応で正直微笑ましい。俺に子供がいたらこんな気分なんだろうかなどと思っていると、むくれっ面をしたアイがこちらを見ていた。
「むむぅ~……」
「アイ?」
「なんかセンセにヒカルを取られたみたいな、ヒカルにセンセを取られたみたいな気分…私も混ぜて!」
そんな事を言いながらアイは俺とヒカルの腕を引っ張った。え、何この子嫉妬してんの?めっちゃカワイイんですけど。
内心デレデレして必死にそれを隠していると、不意にアイが叫んだ。
「あっ、ヒカルから貰ったお守りがない!」
「お守りって、あのストラップ?今朝の散歩の時にでも落としたのかな…」
「どうしよ…せっかくヒカルがくれたのに…」
「明日明るくなってから探すしかないね。僕も手伝うから」
「あー、家に戻るまでの道すがら探してやるから。アイとヒカルはここに居ろ」
推しが悲しい顔をするから無意識に口から出た。やっぱ俺、どうしようもなくアイのファンなんだなぁ…。
「でも先生、外はもう暗いですよ?危ないんじゃあ…」
「心配すんなって、じゃあすぐ戻るから」
◇◆◇◆◇◆
「…っあー、流石に無謀だったか?スマホのライトじゃ暗すぎるな」
病院を出て外を歩き回る。今朝、アイとヒカルと一緒に散歩した道を辿りながら、アイが落としたというストラップを探す。しかし見つからない上に、真夜中だから肌寒い。
「……」
これが終わったら、アイとの繋りもなくなり、ただのアイドルとファンに戻る。
そうなると自然とヒカルとの繋りもなくなる。
ちょっと意外な面も見えたけど、そんな部分もむしろ好きになった感すらある。
あの2人の幸せを、心の底から応援──
「……お、もしかしてあれか?」
スマホのライトが照らす先で、何やら光る物があった。すぐさま駆け寄り、それを確認して手を伸ばす。
「あったあった、多分これだろ。見つかってよかっ───」
次の瞬間。
全身に浮遊感を感じて。
頭に衝撃が走り。
視界が暗転した。
──────。
……
んー……
あー、びっくりした
急に頭まっしろになるから……
なんか足下が崩れたか……?
あっ、携帯……
もしかしてアイが産気づいたか?
どこだ携帯……暗くて分からん……ていうか体が動かねえ……
早く行かなきゃ
約束したからな
元気な子供産ませるって……
早く起きて、あの子達の子供を……───
──もし芸能人の子供に生まれていたらと考えた事はある?──
──容姿やコネクションを生まれた時から持ち合わせていたらと──
──僕は真面目に考えた事はなかった
だってそうだろう
自分の話とは思わなかったんだから──