カミキヒカルは2児のパパ (アイドル猛特訓!)
───いちごプロ・事務所
「…というわけで!JIFでセンターを務めるのは、有馬かなちゃんです!」
「ひゅー!ぱちぱちぱち~!」
カメラを回しながら、先輩に我ら新生『B小町』のセンターに選ばれた(無断)事を報告する。晴れて選出されたアイドルの花形!早速先輩に今の気持ちを聞いてみよう!
「センターに選ばれた今のお気持ちを一言!」
「そうですねー」
む、思ったより好感触?意外にも先輩は笑顔でインタビューに応じ…
「とりあえずカメラ止めろやぁ」
ひえっ…
「言ったよね?何度も私、センターはイヤだって」
今、私とMEMちょはソファの上で正座しながら、先輩からの多大な圧を受けている。
さっきの笑顔のまま顔が陰に染まるの怖かった……。
「なんかアレかな?どうせ私みたいなチョロくて流されやすい女は、動画撮影中にしれっと既成事実作れば断れないと思ってのやつ?」
((やばいバレてる!))
見事にお見通しの正解ドンピシャだった。怖い。
慌てたMEMちょがフォローに入る。
「いやまぁね!2人でカラオケ行った時話し合ったんだけどさ、私達のどっちがセンターやってもパッとしないって話になって……
そんな時、有馬ちゃんが出した曲のPV見て……」
「!」
私達がPVの存在を知らないと思っていた先輩は一瞬驚いたように見えた後、見ちゃったかぁと諦観のような表情で溢した。
『ピーマン体操』が半端に売れてしまったから周囲もノってしまい、結果として関係者全員が痛い目に遭ってしまったと語った。
「忘れて。あれは私の迷走時代の象徴、有馬かなが売り方に迷ってた頃の黒歴史だから」
そんな風に言わなくても…。あんな綺麗で素敵な歌声の良い曲なのに…。
…………。
「『ピーマン体操』、正直オンチだと思った。だけど2枚目の曲凄く上手になってて、3枚目はそれよりもっと……」
カラオケ屋での息抜きの時に知った先輩の曲。あれからMEMちょと順番に聞いていったのだが、次の曲に進む毎にどんどん上手くなっていってた。あの上達具合は、努力を積み重ねないと成り立たないのは聞くだけで理解出来る。
「一杯練習したんだよね?すごく頑張って、皆の期待に応えようと……。そんな責任感のある先輩になら『B小町』のセンターを「うるさい!」
「そうやって適当に褒めてれば私が落ちると思ってるんでしょ!馬鹿にして!!」
私の言葉は、感情を爆発させた先輩によって遮られた。その叫びは怒りも籠められているが、それよりも私には悲痛な叫びに聞こえた。
「…こればっかりは本当に無理。何度頼まれてもセンターはやらないから!」
先輩の心からの声を聞いた私達は、もう何も言えなくなってしまった。
「……」
「勝手に話進めてごめん……もう言わない」
でも……
「最後に私達の歌を聞いて」
そう言って私とMENちょは、マイクを持つジェスチャーをした。
─────────。
───同日夕方・レッスンルーム
「「「…ア・ナ・タのアイドル♪」」」
「「「サインはB♥️」」」
私達は今、いちごプロのレッスンルームにて『サインはB』の歌唱とフリ入れのトレーニングをしている。
私をセンターにして。
「あーーーもーーー!どうして私はいつもこうーー!」
どうしてこうなった!な・ん・で!私はいつも思った方向と逆方向に行っちゃうかなぁ!?なんで簡単に流されちゃうのかなぁ!!
「いやぁ……まさかあの地獄みたいな空気からの大逆転あるとは、思わなかったぁ」
「私は最初からこうなるって思ってたよ」
黙れヘタウマとオンチ!なんでアイドル志望かつセンターまでやりたがってた連中の歌唱力があの体たらくなのよ。43点と57点て、その辺歩いてる中高生でももっとマシな点数出せるわ!
「アイドル志望の奴等がここまで歌ヒドいとは思ってなかった。カオの良さにかまけてのうのうと生きてきたのが歌から感じ取れる」
「辛辣ぅー」
「たしかに、これなら私がやるのが一番……」
だけど、本当にやりたくない。
「ホント、アンタ達は私が居ないと駄目ね!せいぜい私が引き立つ様に頑張りなさいよね!」
「「はぁーい」」
なんでこの口は、私の気持ちと逆の事を言うんだろう。
「話は纏まったみたいね」
ガチャ、とドアが開いて社長と副社長の2人がレッスンルームに入ってきた。
「これから新生『B小町』の本格的なマネジメントはミヤコが務める。具体的な指示やスケジュールは俺から出す事もあるが、基本的にはミヤコに聞いてくれ」
「ステージまでもう日数もない。そろそろ追い込みを掛けないとまずいだろうし、サポートしてくれる子捕まえたからこき使ってあげて」
「サポートしてくれる子?」
副社長がチョイチョイと手招きをすると、誰かが入ってくる。
(それってもしかして、アク……)
「ヤァ」テレレレッテレー
「いやアンタかい!」
流れ的にアクアだと思ったのに、入ってくるのぴえヨンさんかい!私の期待を返せ!
「アナタも、早く入ってちょうだい」
え、もう1人居るの?じゃあ…今度こそアク……
「やっほ☆」テレレレッテレー
「いやアンタは何してんの!?」
声で分かるけど明らかにアイさんじゃん!なんでぴえヨンマスク(目が死んでるver.)被ってこんな事してんの!?
「あっママじゃん!それにぴえヨンおひさ!」
「えっ本物!?」
ほら見ろ当たり前だけど一発でバレてるし!MEMちょはMEMちょで本物のぴえヨンとアイさん見てファンの反応すんな!そんな場合じゃないのよ!
「ウチの稼ぎ頭ツートップが揃いも揃って何やってんの!頼むから普通に働け!」
「ママ?違うよ、私はあいヨンだよ!」
あ○みょんみたいに言うな!隠す気ゼロか!
「アイさんに振付教えてもらえるんだ!感激ぃ~!」
「MEMちょ反応がガチじゃん?」
まぁ伝説的アイドルの大先輩本人から直々に教えてもらえるとなると、下手に自分達だけで練習するよりも確実に実入りは大きい。
MENちょ曰く、ぴえヨンさんも前職はプロダンサーでアイドルの振付師の仕事もしていたらしいからアイさんのサポートって形なのだろう。
「どうですか、プロから見て私達は…?多少形にはなってると思うんですが…」
「んーそうだねー、ダンスは結構踊れてるかな?ぴ、ぴえヨンはどう思う?」
え、なんでちょっと半笑いなの?
「んーまぁ、これ位の仕上がりでステージ上がる子達は全然居るけどね。マジのクオリティ求めるって言うなら……」
「まずは体力だよね!坂道ダッシュあと10本!」ダダダダダダッ
「「「ひぃー!!」」」ゼーハーゼーハー
「そして疲れ切った後にはセットリスト通しで3回だよ!ヘトヘトでもパフォーマンス落とさない体力がまず大事!ほら笑顔も忘れないでね!」
「「「ひえー!!」」」
…それからの私達は、この地獄みたいなスパルタ特訓メニューをこなし続ける日々が始まった。
ぴえヨンさんによる基礎体力を作るトレーニングと、それに追い撃ちを掛けるようなアイさんの指導によるアイドルパフォーマンスの仕込み。
ぴえヨンさんがスパルタ気質なのは過去のブートダンスの一件で知っていたが、アイさんまでスパルタ気質だったなんて想像していなかった。この2人が組んだらどうなるのか心配していたが何の事はない、ただの悪魔合体だった。
それでも本番までの日にちはもう少ない。このスパルタメニューをこなしながら地道にクオリティを上げていくしかなかった。
─────────。
「2曲目のサビ前さ!上手側からぐるっと回って入れ替わったらカッコ良くない!?」
「あー良いかも!そしたらここのアレンジもさー」
「おー、MEMちゃんもルビーもアレンジ上手いね!私達の時は7人だったから3人だとここをこうとかー」
\ ワイワイキャッキャ /
ルビー、MEMちょ、アイさんは今日の特訓を粗方終わらせたのに、まだ元気にステージ本番での動きの調整やアレンジを話し合っている。
一方で私はと言うともはやそんな元気が残っていない為、ベランダに出てジュースを飲みながら夜風を浴びている。
「あの元気、どっから出てくるのかしら」
小さく溜め息を吐きながら外の景色を眺めていると、ベランダの窓が開いてぴえヨンさんが隣に来た。
「後悔してる?アイドルになった事」
「ぴえヨンさん…。いえ、自分で決めた事なので後悔とかは…」
そう、後悔は無い。
「でも、向いてないとは思ってます。全然アイドルやれる気がしない、センターなんてもってのほか…」
「歌上手いのに、なんでセンターそんなにイヤがるの?」
「だって、センターってグループの顔なんですよね。私なんかが居るべきポジションじゃない」
「私なんかって何?有馬かなは凄いと思うけど」
…皆そうやって適当な事を言う。口ではいくらでも凄いなんて言うけど、そんな人達が去っていく姿なんて飽きる程に見てきた。
黒い感情が私の心を覆っていく。この人だってそう、なんにも知らないくせに。
「私の何を知ってるんですか?」キッ
「そうだなぁ…毎朝走り込みと発声欠かさない努力家。口の悪さがコンプレックス。自分が評価されるより作品全体が評価される方が嬉しい。実はピーマンが大嫌い」
「えっ……私の事めちゃくちゃ見てくれてる。嬉しい……」
めちゃくちゃ知ってるじゃんこの人、びっくりした。てか深いとこ突いてくるなぁ。
やばっ、ぴえヨンちょっと好きになっちゃった。
「もしかして私のファンなんですか?」
「そうだよ」
えーうそだー、あの日は名前は聞いた事あるとしか言ってなかったのにー。
でも、やっぱり嬉しい。私にも…
「えへへっ。居たんだ、今の私にファン。
ピーマン嫌いなの公言した事無いのに……よく気付きましたね」
「実はボクも苦手なんだ」
「同士だ!」
ぴえヨンさん曰くピーマンは味の主張が強すぎる、入ってるだけで全部がピーマン味になるから苦手だとの事。すっごい共感できる!
「『ピーマン体操』の時もむちゃくちゃ我慢して食べてて……今や見るだけで蕁麻疹が……」
「可哀想が過ぎる。春菊も苦手でしょ?」
「あ、ダメぇ…ピーマンと同じくらい苦いし、匂いもちょっと……」
(あれ?)
今私、ぴえヨンさんとフツーに話せてるし、話してて楽しいや。珍しい事もあるもんだ。
この人、本当に好きになれそうな気がする。もうアクアなんてポイして、こっち好きにぬろっかなー……年収億いってるし、正直アリよねー…
「ぴえヨン忙しいだろうに毎日来てくれて優しいなー」
「ねぇ!やっぱ動画で見るのとは全然違う!体型ももっとガッチリしてるイメージだったけど、意外と実物はスラっとしてるって言うかぁ」
「……」
「背格好なんてアクたんと同じじゃん!」
「あはは!お兄ちゃんがあんなアヒル声出してたら一生笑う!」
「……っ…………」プルプル
「あれ?アイさんどうしたんです?」
「え!?ううん、何でもない!何でもないよ!」
「「?」」
─────────。
今日も今日とて振付のレッスン。本番をイメージしながらルビーと有馬ちゃんと私の3人で、通しで練習中。
『STAR☆T☆RAIN』の動きを確認も兼ねて踊った後、一旦休憩を取る事にした。するとぴえヨンさんがお疲れ様と言いながらお水を差し入れていた。
「ありがとうございます、ぴえヨンさん!」
ぴえヨンさんとベランダで話してたあの夜から、有馬ちゃんは笑顔になる事が多くなった。何か相談でも聞いてもらってスッキリしたのかな?
「いやーホント優しいわー。どっかのアクアとは大違いね」
「有馬ちゃん、アクたんの事そんなに嫌いなんだ…?」
「好きになる要素1個も無いわよ!デリカシーと常識が無いし?クールぶってるけどただのムッツリ、兄妹揃って年上に対する態度がヤバいし!1度も敬語使われた事無いし!1度ガツンと言わなきゃダメかしらね!」
あれー?おかしいな。私も有馬ちゃんよりだいぶ年上なはずなんだけど、敬語使われた記憶が無い……。まぁ別に私は気にしないんだけど。
「あーあ、子供の頃はまだ可愛げがあったのにね」
「あれ?付き合い長いんだ?」
意外だったなぁ。同じ高校って聞いたからその時かと思ってた。あ、いやその前に『今日あま』のドラマで一緒に出たんだっけ?てことはそれよりも前?
「そうよ、小さい頃現場でね!私とアクアがまだ2つとか3つの頃!?あんなヤツ1度会ったら忘れられないじゃない!?」
えっ、うん……
「昔からずっとアイツが脳裏に居たのよ!あの頃は天使みたいだと思ってたのにあんなに憎たらしく育っちゃって、私の思い出を汚さないでほしいんだけど!」
「んん?ん~~?」
あれ?なんか話を聞いてる限りだと、嫌いっていうより寧ろ……
「休憩終了!レッスンしよー!」
どうやらレッスンを再開するらしい。有馬ちゃんの思いも気になるけど、今は本番までにしっかり仕上げる事を考えなきゃ!
─────────。
「いよいよ明日は本番。どうでしょう、彼女達」
『大分良くなったんじゃないかな』
俺は今レッスンルームの外でルビー達の様子を見守りながら、ある人物と通話で連絡を取っている。
ついに翌日へと押し迫ったJIF本番、そしてルビー達新生『B小町』の記念すべきファーストステージ。それを後押しするための最後の相談をする為だ。
『ルビーちゃんのダンスは元々仕上がってるし、MEMちょは器用に周り見ながら立ち回れて、有馬さんは実直で飲み込みも早い。歌いながらでも、ダンスでミスらしいミスが無い。
午後はバミリ意識で練習して、明日に備えてゆっくり休むと良いよ』
「はい」
やはり、この人はよく見ている。一人一人に適切な評価をしているし、細かい部分も見逃さない。
この人に相談を持ちかけたのは正解だったと思う。タイミングという、ただ1点を除いて。
「休暇中にこんな面倒なお願い聞いていただいて、ありがとうございます」
『いや、ボクも彼女達を気に入ってるからね。頼ってくれるのは嬉しいよ。
だけど、ちょっとショックだなぁ。君がボクになりすましても、誰も気付かないんだから』
そう、今通話をしているのは今日まで新生『B小町』のトレーニングに付き合っていたはずのぴえヨンさん。本物の彼は今、休暇で南の島のビーチへ行っている。
トレーニングに付き合っていたのは、ぴえヨンさんになりかわった俺、星野アクアだ。
『たいしたもんだよ。演技やってる人なら簡単に出来るものなの?』
「どうなんでしょう。出来る人は出来るんじゃないですか?」
『ふーん?でも、これやる必要あった?わざわざボクになりすまさなくても……』
「僕が何言っても、きっと反発されるので」
…先日の会話以来、俺は有馬とまともに会話していない。どことなく有馬の方も俺を避けているような雰囲気もあった。
だから俺はぴえヨンさんに無理を言ってマスクを借り、彼になりすます手段を取った。
「ぴえヨンさんの言葉なら、素直に聞き入れてくれると思いますから」
『…君の言葉でも、ちゃんと聞いてくれると思うけどね』
「……」
ぴえヨンさんの言う通りかもしれない。だが、実際はそうじゃないかもしれない。前に有馬にも言ったが、俺だっていい加減傷つくくらいには人並の心を持ち合わせているつもりだ。
俺は…
「…僕は、割と弱いんですよ」
───同日・深夜
「はーーー、いよいよだね!私達もアイドルデビューだよ!どうするどうする!?」
「うっるさいわねー…」
日付を跨いだ辺りの真夜中、1日トレーニングで酷使した体を休めるために床に就いたはずなのに、深夜テンションが入っているのかルビーが興奮気味になっている。あんだけ歌って踊ってをしっぱなしだったのに、元気ねこの子。
「良いから寝なさい、睡眠の重要さを舐めるんじゃないわよ。徹夜のダメージは3日位引きずるし、魅力が3割程落ちるってどこかの大学の研究で出てる
……みたいな事をDai○oが言ってたわよ」
「D○igoが!?寝なきゃ!」ガバッ
Da○goの信頼性って凄いわね…。
「でも全然眠くなぁい!楽しみすぎる!どーしよー!!」
「…ほんと、楽しそうで良いわね」
「先輩は楽しくなさそうで良くないね」
「むしろ、どうしてアンタはそんなに楽しそうなのよ」
「んー?」
明日がどうなるかなんて誰にも予想出来ない。私達はいわゆるコネ組だから当日は大ブーイングかもしれないし、そもそも客が居なさすぎて閑古鳥が鳴いているかもしれないのに、どうしてそんなにもポジティブに居られるのか…。
「憧れだから」
アイドルが憧れ…。何度かルビーの口から聞いたが、そういえば詳しい理由とかは知らなかった。
「私は昔……ずーーっと部屋の外に出れない生活してて、未来に希望も何も無くて。このまま静かに、ドキドキもワクワクもしないまま死んでいくんだろうなって思ってた。だけど、ドルオタになってから毎日が楽しくて、胸の中が好きって気持ちで満たされて。
推しの居る生活は良いよ?アイドル好きになった事無いなんて先輩、人生損してる」
「別に損で良いわよ」
本当に根っからのアイドル好きなのね、この子は。正直言って、私にはイマイチよく分からない。
「でね……その時ある人に出会って……」
「ある人?」
「うん、初恋の人」
あら甘酸っぱい話。初恋、ね…。
「その人に言われたの。もし私がアイドルになったら推してくれる、って。その時からずっと、アイドルになる事を夢見てた……。
先生…今どこに居るんだろ。きっとまだドルオタやってるだろうし…アイドルで売れていけば……きっと……」スー
「……」
どうやら寝入ってしまったようだ。
私には、この子が眩しく見える。ひたむきで、真っ直ぐで、自分の気持ちや思いに正直で、夢に向かって全力で生きてる。何よりも……。
「良いわね。アンタには推してくれる人が居てくれて」
私には、そんな人は居ない。皆子役時代の私ばかりを見ていて、今の私なんて見てくれている人は居ない。アイドルデビューしたところで、私なんて…
それにしても、ルビーが引き籠りだったとは意外だった。絵に描いた天真爛漫が歌って踊ってるような子なのに、とても想像が出来ない。
(あの家族も社長夫妻も苦労してたのねぇ)
少し寝つきが悪かったので、水でも飲もうと寝室を出てリビングへと向かう。階段を降りていったところで明かりが点いているのが見え、誰かが居るのに気付いた。
(っ!)ドキッ
どうやらリビングにはぴえヨンさんとアイさん…いやあいヨン?が居るようだ。しかもぴえヨンマスクを脱いでいる!
(頑なに取らないから気になってたのよね…。あのマスクの下はどんなツラしてるのか!)
意気揚々としながらその素顔を拝んでやろうとリビングを除く。そこには……
「フー…」
「アクア、モン○ナばっかりは体に悪いよー?」
「疲れた時にはこれが効くんだよ」
「もー……」
「っ…─────」
◇◆◇◆◇◆
───JIF会場
「さてさて、やってきました!ジャパンアイドルフェス!」
……。
「えっとー、私達が立つのは10個あるステージのうち、スターステージ」
「結構地下アイドルも多いステージだね」
「出来ればメインステージが良かったけど」
「流石に過ぎた願いだよねー」
…………。
「あー、緊張してきたぁ!上手くやれるかなぁ」
「大丈夫!睡眠はしっかり取ったでしょ!徹夜のダメージは3日位引きずるし、魅力が3割程落ちるってどこかの大学の研究で出てる、
みたいな事をDai○oが言ってた!
って先輩が言ってた!」
「人伝ての人伝ての、人伝てだねぇ」
……………………。
「まぁ『B小町』の振付ってハードなのばっかだし、ちゃんと寝なきゃキツいよね」
「うちは踊りメインだからね!やっぱりちゃんと寝ないと!」
「それじゃ、楽屋に行くわよ」
「「いえ~い!!」」
…………どうしよ
(一睡も出来なかった───)