カキシルス

 カキシルス


 足は地面に縫い付けられたように動かない

 どれだけ喉に力を入れても声は出ず

 ボールに伸ばした手は空をきった

 頭は固定されたかのように動かせない。


 目の前で行われている蛮行を止めることも目をそらすこともできず、ただ突っ立って見ていることしか出来なかった。


 「んっ…あっ…やっ……ん!」              目の前の少女から声が漏れる         先程までは「痛い」と「嫌だ」と叫んでいた少女だったが、今は何かを我慢するように下唇を噛み締めていた。


 突如、少女に覆いかぶさっていた男が動きを変える。                 「ふぇ…あっ!やっやだ…やめて!あっ!」   すると少女の声にも変化が生じ矯声が混じり始める。                    「んっ…ふぇ、あっそこ…もっと…んっ!」                


 無理やり犯されて快感を覚え始めた少女に腹がたった。

 犯してる男に殺意がこみ上がる。

 何より見ているしか出来ない自分を、犯されている少女をみて痛いほど勃起している自分を殺してしまいたかった。

 

 男がこちらを振り返る…その顔は…

 ……………………………………………………

 目を開ける。映るのはいつもの天井。

 下半身が気持ち悪い、夢精してしまったのだろう。                   

 それにもまして、吐き気がする。       

 先程の悪夢のせいだろう。

 夢で良かったと安堵する一方

 夢精とはいえ、親友でもあり恩人でもあるアオイで、しかもレ○プされている場面で抜いてしまうとは、最低だ…

 気が滅入る。

………………………………………

 シャワーを浴び着替えを済ませたあと、朝食の準備をする。

 朝食を食べ終えしばらくボウっとしてるといつの間にか悪夢のことが頭にうかぶ。

 アオイは親友だ、もし夢と同じ目に合うことがあったとしたらどんな手を使ってでも助けるつもりだ。

 しかし、いつかアオイに恋人ができて同意の上で性行為をするのならば自分が出る幕はない。

 ない、はずなのだ自分はただの友人で親でも恋人でもないのだから、でも、それは…    

 「嫌だな…」

 意図せず声が漏れる。

 そうだ嫌なのだ、自分はこんなに独占欲が強かったのだろうか?

 いや、わかっているきっと自分はアオイのことが好きなのだ。

 思えばいつもアオイのことを考えている。

 名前を呼ばれれば嬉しくなるし名前を呼ぶたびに胸が弾む。                料理のラインナップはアオイの好物が中心になっていた。

 (ベタボレちゃんじゃねーか)

 自分の行動を振り返ればアオイに惚れていることなぞ一目瞭然だ。

 あの夢を見るまで自分の気持ちにしか気づかなかった自分は馬鹿なのだろうか?

 夢のお陰で恋心を気づけたのはよかったが…

 だからといって、あの夢を見せた存在がいるのならばぶん殴る所存ではある。


 「あーしかし、どうすっかなあ…」

 恋心を自覚した今、今までの態度で接せる自信はない。                  更に悪夢のせいで顔を合わせにくい。

 変な態度をとってしまいそうだ…

 そんな態度を取ってしまえば間違いなく不思議がられるだろう

 そこを突っ込まれたら思わずテンパって恋心を隠すために「いやー昨日お前がレ○プされる夢をみてなー」とかいってしまいそうな予感がする。

……いや流石に大丈夫か?……怪しいかもしれない。

 困ったな。

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