オリキャラスレ劇場版コ●ン編SS連作まとめ(前編)
「…と、こんな風にトレーナーとポケモンの精神的な繋がりがポケモンの能力に影響を与える例は数多く知られているわ。有名なのはカロス・ホウエンのメガシンカにアローラのZ技といったところかしら。他にもポケモンとトレーナーの心が一体になることで稀に『きずなへんげ』と呼ばれる事象が起こるとされているけれど…私はお目にかかったことがないわ。機会があったらぜひ研究してみたいのよねえ…」
艶かしい黒髪の女がいかにも詰まらなそうな顔で滔々と語る。特別講師、受けると言ったのは自分だがまさか座学の講義までやらされるとは。あーあ、どうして座学ってのはこんなに退屈なのかしらん。早くテラリウムドームに出て新しく見つかったとかいうテラスタイプのポケモン達に逢いたいわあ。欠伸を噛み殺した元ロケット団科学者・レイリはぺらぺらと教科書をめくりながら暇潰しがてらに教室の様子を観察する。
「(あの斧みたいな腕のコはもしかしてストライクの古シンオウ種かしら?どの子もよく鍛えられてること、さすがはバトル特化のスクールねえ。でも皆なんだかそわそわしてるわね。何か事件でもあったのかしら?)」
レイリの思考を遮って一人の生徒が手を挙げる。
「あら、質問かしら?気になることがあったら何でも聞いてちょうだいね」
「…先生、」
手を挙げた生徒dice1d4=2 (2)
1.一般生徒
2.スグリ
3.ゼイユ
4.カキツバタ
5.タロ
6.アカマツ
7.ネリネ
8.それ以外
どうぞ、とレイリに促され、手を挙げた生徒…スグリはおずおずと立ち上がった。
「あの、先生…そこ、もうブライア先生の授業でやったとこなんで、もう大丈夫だべ…あ!…です。そ、それで、さっき習ったメガシンカとかZ技…確か、先生は使えるんでしたよね?…せっかくなら、残り時間はテラリウムドームで実技の授業さしたい…デス」
どもりながら話すスグリにレイリが目をぱちくりさせる。
成る程、その手があったか。
実技という方便を使えば、授業中でもドームに出て探索し放題ではないか!
スグリの妙案にレイリは一も二もなく飛びついた。
「えーと確か、ハマグリ君、だったかしら?あなたの言う通りね。じゃあここからはドームに出て実技の時間といきましょうか!」
実技の苦手な生徒たちの悲鳴を背中に浴びて、レイリは意気揚々とテラリウムドームに向かうのだった。
〜ツルバミ視点〜
とある地方のとある学園に、見るも奇妙な姿形のポケモンが出ると聞いてイッシュ行きの飛行機に飛び乗ったのが3日前。
パルデアの誇る問題児、もとい探検家ツルバミはブルーベリー学園校内をぶらぶら歩いていた。
「しっかし、まさかエリアゼロ仲間のあの子もこの学園に留学していたとはねえ」
奇妙な縁もあるものだと独りごち、首にかけた学園の見学許可証を指でくるくる回してみる。
この学園を訪れてから、テラリウムドームからリーグ部部室までぐるっと回ってみたものの未だめぼしい発見はない。つい最近見つかったとかいうテラスタイプのポケモンやヒスイ原産の希少種も見たには見たが、やはりツルバミには今ひとつ物足りない。冒険とは、誰もまだ見ぬ未知を探してこそのものであるからして。冒険家を志して以来、ツルバミがひそかに心に懐いている持論である。
時間もちょうど昼時だし、食堂で馬鹿みたいなカロリーの定食を食べたらまたドームに探索に行こうかしら。
そんなことを考えながらツルバミが廊下を曲がると、なんだか生徒たちの様子が騒がしい。
はてさて一体何が起こったのやら。
大好きな面倒事の気配を感じつつ、ツルバミはいつもの野次馬根性で様子を見てみることにした。
気配を気取られぬようそっと壁に身を隠し、ツルバミが聞き耳を立てる。
「なあ…なんか今日揺れてね?」
「やっぱり?」
「気のせいじゃねえよな…」
「テラリウムコアの色もなんかおかしいし…」
「なんかこう…いつもより色味がグロいよな」
「もしかしてこの学園、結構ヤバいんじゃ…」
学園全体の謎の揺れ?
テラリウムコアの異変?
それはもしかして、否、もしかしなくても相当な事件ではあるまいか!?
新たなる『冒険』の予感にツルバミの心は高鳴る。
旅の合間のちょっとした盗み聞きで、こんな大事件に立ち会う機会を得られるとは!思わぬ大収穫に笑いが止まらない。
「ふ、ふふ…はははは」
相棒の手帳と羽ペンを取り出し、ツルバミは思わず小躍りする。
「これだよこれ、僕が求めていたものは!」
高笑いしながら壁の向こうから飛び出してきた謎の黒髪トンチキ衣装男に、生徒たちは脊髄反射で防犯ブザーを鳴らした。
「なあオッサン」
「はい」
「アンタはこの学園に見学に来て早々、不審行為で生徒から通報食らって監視役の俺がここに呼び出されたわけだが」
「はい」
「アンタこの学園に何しに来たか分かってんの?」
「ここに珍しいポケモンがいると聞いて」
「ちげえよアホ!潜入調査だっつってんだろオモダカさんに言われたこともう忘れてんじゃねえよ!潜入!調査!!捜査官が到着早々目立ってどーすんだこの脳味噌エリアゼロ!!」
「いやあ、それほどでも…」
「言っとくけど今のは褒め言葉じゃねえからな?」
黒髪の青年ツルバミに、ゴーグルをかけた少年がギャン!!と吠える。
ブルーベリー学園職員室にて。少年…チドリは髪をわしゃわしゃかき混ぜて大袈裟に溜め息を吐いた。
「ったくよお…どうすんだよこれから…こんだけ目立っちゃもう組織の奴らだってまともに追えやしねえよ…せっかく都会の学園に来たから建物とかグルメとかいろいろ見て回りたかったのにアンタのせいで台無しだよこんにゃろう…」
「君だって遊ぶ気満々じゃないか」
「アンタ節度って言葉知ってる?」
「ふっ…キミは本当に私がただ何もせず遊び回っているだけと思ったのかい?」
「な、何だよ…そこまで言うならなんか大事な情報掴んでんだろうな?」
「当然だとも。実はとある生徒からこの学園に関する一大事件の噂を聞きつけてね…」
「…へ、へー。それで?」
「なんと、最近ここの学園で頻繁に小規模な地震が発生しているそうだ!それにテラリウムドームの頂点に座するテラリウムコア!あのコアの色彩に異変が生じているらしい!これは間違いなく、かの組織の残党が仕組んだことであるに違いないさ!」
「……。」
「む、なんだい?衝撃で声も出ないかな?」
「いや…それ、知ってるけど…」
「えっ」
「つーかこの学園内にいたらフツーに気付かね?わりとしょっちゅう揺れるし貰った資料とコアの色違えし」
「えっ」
テラリウムドームの南東、サバンナエリアを二人の男女が歩いている。ひとりは紳士然とした赤毛の中年、ひとりはエプロンドレスの愛らしい少女。見た目も態度も対照的な二人だが、彼らが並んで歩く姿は不思議と似合って見える。
「やれやれ、まさか空飛ぶタクシーで墜落事故に遭う日が来るとは…」
「正確には墜落事故プラス海難事故のなりかけね。窓の外見て海面が見えた時はホントに死ぬかと思ったわ」
「ブルーベリー学園の近くに落っこちたのは不幸中の幸いでした。おまけにシンクロマシンという機械の存在も知ることができましたしね」
「落っこちた、じゃなくてあたしのラグラージが運んであげたんでしょ!やっぱこいつ途中で置いてけばよかった…!…後半についてはまあ、否定はしないけど」
紳士ベンケイと少女フチベ。この二人は以前、互いのポケモンと合体してしまうという奇妙な事件に巻き込まれた被害者仲間であった。その合体したポケモンが恋人同士のバルビートとイルミーゼであったせいで、合体中はマア色々と苦労があった…なんなら今でも苦労している…のだが、それは置いといて。
「「シンクロマシンについて調べれば、私/あたし達がポケモンと合体した理由がわかるかもしれない」」
「ちょっとハモらないでよ気色悪い!」
「おや、貴女が私の発言に被せてきたのでは?」
「むきーーー!」
少女と紳士は北西へ、テラリウムコアの輝く方へ歩いてゆく。学園内の噂で聞いた、シンクロマシンが存在するという場所へ。
「とりあえず、目指すはセンタースクエアよ」
ベンケイとフチベがセンタースクエア目指して歩いていると、ふいに女の声が飛んできた。
「あら、もしかしてそこにいらっしゃるのはベンケイ先生ではないかしら?」
「わ わやじゃ…!?」
声のする方を振り返ると、野外教室の方向から白衣を着た黒髪の女が走ってくる。その後をぽてぽて追いかける少年はこの学園の生徒だろうか。女は義足とは思えぬしなやかな身のこなしで駆け寄ると悪戯なチョロネコのようにベンケイの躰にするりと絡みついた。だらしない衣服から覗く肢体は近くで見るといっそう目に毒だ。ベンケイはそっと彼女の胸元から目を逸らす。
「私、あなたの大ファンですの。よければ少しお話し願えない?」
「…は、はぁ!?」
絶句するフチベ、刺激の強い光景に頬を染めながらわやと鳴くスグリをよそに、女は話し始める。
「ベンケイ先生の最新作、読みましたわ。先生ったら相変わらず登場人物の心理描写とトリックの塩梅が絶妙で!思わず引き込まれてしまいました。でも特に面白かったのは主人公とヒロインが事故でポケモンと合体してしまう所かしら!あのくだりは先生の知人の実体験なのでしょう?その知人の話、ぜひ本人の口から詳しく聞かせていただきたいわあ。それにそれに…」
「…ち、ちょっとストップ!ストップ!いいかげんベンケイから離れなさいよ!」
いよいよ女の弁に熱が乗り始めたあたりでフチベがベンケイから女を引き剥がす。引き剥がされた女は「あら酷い」と、ちょっと拗ねたように唇を尖らせてみせた。見知らぬ女に巻きつかれたと思ったら怒涛のマシンガントークを喰らい、意識を半分ほど宇宙の彼方に飛ばしていたベンケイの頬をフチベが「あんたもポーッとしてないで!」と引っぱたく。ひっぱたかれたベンケイはようやく正気を取り戻したのか一つ咳払いして女からやんわり距離を取った。
「…レディ、その前にお聞きしたいことが。見たところ貴女はブルーベリー学園の生徒でも教師でもないようですが、なにゆえこの学園に?」
「えっあ、そ、それは…」
「あら失礼、自己紹介が遅れていましたわね」
答えようとするスグリを遮って、女は無邪気ににこりと笑う。
「私はレイリ。ブルーベリー学園の特別講師よ」
〜ヒガン視点〜 自分はどうやらとんでもない場所に迷い込んでしまったらしい。 ここはイッシュの誇るバトル特化の専門学校・ブルーベリー学園。その職員室の扉の前で、赤眼の少女ヒガンは声を押し殺し震えていた。 「たまには違う環境に触れてみるのもいいじゃろ」などとのたまう師匠(ヌルデ)に引きずられ、気付けばガラルを遠く離れたイッシュ地方の海の中。師匠の異常なフットワークの軽さは今に始まったことではないが、巻き込まれるこちらの身にもなってほしいとヒガンは常々思っている。決して口には出さないけれど。 それはさておき。ガラルからはるばるブルーベリー学園にやってきた二人であったが、かなりの自由人かつ基本的に周りを気にしない師匠と控えめで少し鈍臭いきらいのある弟子が広大なブルーベリー学園に解き放たれた結果、至極当然の事態が起こった。 師匠とはぐれたのである。 ヒガンは当然師匠を探し回った。そりゃもう必死で探し回った。遠く離れた異国の地で迷子なんて冗談じゃない。端から端まで学園内を歩き回り、最後の方はほとんどべそをかきながら師匠の名前を呼んでいた。 そして最後に訪れたのがこの職員室、というわけだが。 ごくり、と溜まった唾を呑み、扉の隙間からこっそりと中の様子を覗き見る。 中には見るからに怪しい格好の青年とそれを詰る橙髪の少年。
「…から!潜入……って言って…ろ!……のヤツラに勘付かれたら…」
「あはは……分かって…よ、…計画のことは……からさ……大丈…うまくやるよ…」
潜入。 勘付かれたらまずい。 計画。 上手くやる。
断片的に聞こえてくる、どう考えても穏やかでない単語の数々。学園外の者であろう男たちの服装。他の生徒に漏れ聞こえぬよう声を落として話す姿。 不穏な想像がヒガンの胸に溢れ出す。 自分はもしかして、とんでもない場面に立ち会ってしまったのではなかろうか? 彼らは何かよからぬ組織の一員で、このブルーベリー学園で事件を起こそうと企んでいるのではあるまいか?今はその秘密会議の真っ最中で、もし彼らの言う『計画』とやらが実行されたら… 「(は、早く師匠に会って伝えなきゃ…!)」
忍び足で立ち去ろうとするヒガン。だがそんな彼女の身にちょっとした悲劇が降りかかる。 『ロトロトロト、ロトロトロト…』 「(…っ!やばっ、スマホの着信音切ってなかった!)」 電話の主は先程まで必死に探し回っていた師匠のヌルデ。だが今そんなことを気にしている場合ではない。 「そこに誰かいるのかい?」 二人組の青年の方がこちらを振り返る。気付かれた。 どうする?どうすればいい? 相手はブルーベリー学園転覆を企む(たぶん)大悪党、捕まればおそらく碌なことにはならない。 逃げる?だが貧弱な幼女一人に男二人、そのうえ場所は勝手もわからぬ閉鎖空間。下手に逃げたところで逃げ切るのは至難の業。戦う?だが師匠と、それも練習試合でしかまともに戦えたことのないヒガンに彼ら二人を同時に相手取れる自信はない。 進むか、退くか。 選べる道はふたつに一つ。
「お前、こんなところで何してんだよ?まさか俺達の話、盗み聞きしてたんじゃねえだろうな?」
「そんなに怯えてどうしたんだいお嬢さん?こちらに来て、わけを話してごらん?」
…ええい、ままよ。 彼らの言葉が終わらぬうちに、ヒガンは職員室に背を向けて全力で駆け出した。
「あってめ、待ちやがれ!」
ヒガンの後を追って少年…チドリが駆け出し、それにツルバミが続く。男二人に少女一人。状況は明らかにチドリ達が優勢。だが逃げるヒガンは意外にもすばしこく、なかなか追いつくことが難しい。
「どうしてあの少女は僕たちを見てあんなに怯えているのだろうね?」
「俺が知るわけねえだろが!でも俺ら潜入捜査官にビビってるっつーことは、なんか後ろ暗いことがあるに決まってる!もしかしたらあいつが例の組織の関係者かもしれねー…」
チドリがモンスターボールを構える。
「ぜってー捕まえる」
〜ヌルデ視点〜
「ヒガン、なかなか電話に出んのー…」
ブルーベリー学園食堂にて。毒々しい色彩のシェーキにのんびり舌鼓を打っていたヌルデは手元のスマホロトムを見て不機嫌そうにぱたぱた足を揺らす。
最近取った愛弟子にバトルの経験を積ませるため、それと単に物見遊山のため、旧友のシアノが創立したと聞くブルーベリー学園を訪れたヌルデだったが、どうやら弟子が迷子になってしまったらしい。
あの子はどうにもおっちょこちょいな所があるからのー、全く困った弟子じゃのうと自分の行いを棚に上げてヌルデが三度目の電話をかける。
これで電話に出んかったら、放送室に行って呼び出してもらうとするかの。
阿呆みたいな量のポテトをつまみながら呑気にスマホをいじるヌルデの耳に、ふと廊下の方から地響きが聞こえる。
「…む?」
はじめは聞き間違いかと耳を疑う。だが地響きは確実に、どんどん近付いてくる。同時に聞こえるのは生徒たちの悲鳴、喧騒、その中に交じるポケモンの怒号。
「クソ、こいつ人混みの方に!」
「待ちたまえ!」
「うえええええええん!!!!!」
どんがらがっしゃん、と盛大な物音とともに飛び込んでくるのは顔を涙でぐしょぐしょにした愛弟子の姿。その後ろには明らかにブルーベリー学園外の人間、それもかなりの手練であろう謎の二人組。
「観念したまえ。キミがどこの誰であろうと僕達からは逃げられないよ」
ヌルデは事態を
dice1d2=1 (1)
1.察した
2.察してない
男達の姿を見て、ヌルデは即座に事態を察した。 ゴーグルの少年と黒髪の青年、どちらのポケモンも常人とは思えぬほど鍛え上げられた一線級の精鋭ばかり。彼らがおそらくシアノの言っていた潜入捜査官なのであろう。青年の言い分からするに、この愛弟子はうっかり彼らに例の組織の残党と間違われたに違いない。それを訂正できるあの子でもあるまいし。 とはいえ、ヒガンもよくこの手練二人を相手にここまで逃げてこられたのう。弟子の成長が早いのはよいことだ。次から修行のレベルをちょっと上げてもいいかもしれんとヒガンにはある意味酷なことを考えながら懐からウルガモスとエースバーンの二体を繰り出す。 まったく、人騒がせな弟子であることよ。 「これこれ、待たんか若造ども」
「…とまあ、そういう訳でこの子はただの一般人じゃよ。悪事なんぞこれっぽっちも考えとらんから安心なされい」
すっかり更地と化した食堂。十人が見れば十人が「戦場跡かな?」とのたまうであろう惨状を作り上げた主犯、ヌルデは膝にすがりついてえぐえぐ泣くヒガンをあやしながら言う。
ヒガンと捜査官二人の誤解が解けるまで約ウン十分。チャンピオン級の実力者複数名が集うバトルはそれは熾烈なものであった。おかげで今日以降の食堂はしばらく使い物にならないことだろう。
「じゃああん時オマエが逃げたのも全部ただの誤解ってことかよ!紛らわしんだよお前!」
「まあまあチドリ、元はと言えば僕らの早とちりが原因じゃあないか」
「ご、ごべん"ら"ざい"ぃぃ〜…」
「ヒガンも自分が悪いと思っとらんなら謝るでないわ。そんなんだとあの少年みたいなタチの輩に舐められるぞー?」
「このジジイ初対面で失礼すぎねえ?」
「…このジジイ呼ばわりしてる時点でチドリ君も同レベルじゃ…いや!なんでもないです…ハイ」
チドリに睨まれてヒガンが身をすくませる。鋭い歯に悪い目つきと面相だけならチドリよりも凶悪なヒガンだが、なんせ根っからの小心者であるからして。
「しかし、また捜査が振り出しに戻ってしまったね…どうしたものやら」
「え、えと、その捜査、ってなんなんですか…?」
「ああ、ヒガンちゃんにはまだ説明してなかったか。実はこの学園にdice1d2=1 (1) (1.マグマ 2.アクア)団の残党が潜伏しているらしいという情報があってね。我々が捜査官に選ばれたというわけさ」
「そこのオッサンはほとんど役に立ってなかったけどな」
「…え、それって…?」
「聞いてくれよ!コイツ潜入調査初日にやらかして生徒に通報されてよー、おかげでなるべく目立たないようにっつー当初の予定が…」
「いやあの、そうやなくて…」
「●●団の残党さん、ですよね?私、ししょー探してるときにちょっと…見ちゃったかもしれんくて…」
そういえばここのヒガンちゃんはいてこますモード覚醒してる?dice1d3=3 (3)
1.覚醒済
2.まだ
3.覚醒してるし師匠のしごきで更に強化されてる
「…どういうことかね?」
「え、えと実は…師匠を探してる最中、道がわかんなくてその辺の人に聞こうとしたんやけど、そこで歩いてた人たちが、その…ツノ?みたいなのがついてる赤いフード被ってて…ドームの方に、何か運んでるみたいやった…布に包まれてて、中身はよう分からへんかったけど…」
「ツノのついた赤いフード…」
「マグマ団の特徴と完全に一致しておるの」
「や、やっぱり!?あの人ら、何を運んどったんやろ…」
「オマエはなんか覚えてねえの?その荷物とやらの特徴とかさ」
「え、えと、さっきも言うたけど布で包まれてたから中身はよく分かんなくて…あ!でもうちのブラッキーがその荷物のことめっちゃ警戒しとって!今にもフードの人らに噛みつきそうな剣幕やったから無理やりボールに戻したんやけど…」
「…ふむ」
「な、なんか分かったんですか師匠…?」
「…その荷物とやらの中身、爆弾かもしれんのう」
「え、えええええーーー!!!???」
「今の情報でなんでそんなん分かんだよジジイ!?」
「以前お主のブラッキーに火薬探知の修行を仕込んでやったことあったじゃろ?」
「知らんし人のポケモンになんてもん仕込んでるんですか!!!」
「とはいえ爆弾とは厄介じゃのー。知っての通りこの学園は大部分が海の下じゃて、爆弾でドカンとやったら下手を打つと水が流入してこの学園が丸ごと海の底に沈みかねん。ヒガンの話が本当ならばすぐにでも止めに行かねば…」
…と、そのときドームの方から爆発音が聞こえた。
〜カネノナルキコンビ&レイリ視点〜
ドォォン!!と盛大な爆発音がして橙色に煌めくコアが四散する。メテノの『だいばくはつ』だ。
「クチート、『まもる』!」
鋭い声で指示が飛び、相対するクチートはその大顎を盾にしてオレンジ色の爆風を受け流す。
「あらまあ、随分おカタいこと!メテノちゃんの『だいばくはつ』を正面から受けて平気だなんて!」
無邪気な少女のように目を輝かせ、愉快そうに笑うレイリ。
「キーキーやかましいのよ性悪女!」
普段の上品な所作をかなぐり捨て、ガンを飛ばしつつ中指を立てるフチベ。
両者一歩も譲らぬ戦いを繰り広げている。
どうしてこんな事になったのか。もはや授業どころではなくなった野外教室で、ベンケイは遠い目をして液晶張りの空を見上げた。
はじめに火種を蒔いたのはレイリである。自分たちはセンタースクエアに行くからとベンケイの手を引くフチベに「急ぎの用ではないのでしょう?ならもう少しここに残ってくれてもいいのではなくて?少なくともそこにいる助手さん?よりは退屈させないわよ」と。それがいけなかった。フチベが少し、いやかなり挑発に乗りやすい性格であることを、ベンケイはすっかり失念していた。気付けば売り言葉に買い言葉、レイリも面白がってどんどんフチベを煽った結果、完全にブチ切れたフチベがレイリに手袋を叩きつけて今に至る。
「フチベ君にレイリ君、ほったらかしの生徒諸君が可哀想だろうしそろそろバトルはやめにして…」
「「ベンケイ/先生は黙ってて頂戴!」」
「えぇー…」
もはや本人そっちのけである。ベンケイは諦めて隣の少年を見た。大半の生徒たちがレイリの授業に見切りをつけて去っていくなか、律儀にもその場に残っている数少ない生徒である。
「…きみ、スグリ君だったかね?」
「わやじゃっ!?な、なんですか?」
「できれば君に誰か仲裁役を呼んできてほしいのだが……欲を言えば彼らを止められるくらい、強い人達を」
「…すぐ呼んでくるべ」
「…すまない」
「ちょっとスグ、ケンカの仲裁してほしいってどういうことなのよ!」
「ベンケイさん!ねーちゃん呼んできた!」
「すまない助かる!」
「だから一体なんなのよー!…ってあれ?あの子もしかして…!」
「?ねーちゃん、知ってる人?」
「ばっかスグあんた知らないの!?天才マジシャンのフチベちゃんじゃない!きゃー!生フチベちゃんのバトル見ちゃった!」
「…そういえばフチベ君は、その道ではかなり有名なマジシャンだったな…」
「わやじゃ…」
仲裁役リセマラ
スグリが呼んできた人
dice1d7=3 (3)
1.自分でけっぱる
2.カキツバタ
3.タロ
4.ネリネ
5.アカマツ
6.それ以外
7.オリキャラ全員集合
「授業ほっぽってケンカはいけないと思います!」
リーグ四天王・タロのドリュウズによって焦土と化した草地にて。先程まで元気にドンパチやっていたフチベとレイリは揃って正座していた。
「とくにレイリ先生は大人なんですからむやみに他の人を煽らない!」
「…はいは〜い」
「はいは一回ですっ!」
両腕でバッテンを作ってぷりぷり怒るタロであるが、当のレイリはどこ吹く風と聞き流しているようだ。
「ありがとうスグリ君。キミのおかげでフチベ君たちを止められた」
「にへへ…タロ先輩、リーグ部でもみんなのまとめ役してくれてる人なんで。先輩に仲裁頼んで正解だったべな」
タロに叱られている両名を除き、和やかな空気が流れる。先程の熾烈な戦いが嘘のような平和な空間である。
…と、そのとき。 スグリが何かに勘づいたのか、弾かれたように上空を見上げる。
「…わやっ、なんか飛んで来る!」
見ると、ハガネールの背に乗って誰かが弾丸のようにこちらへ向かってすっ飛んでくる。人数は…いち、に、さん…四人。そのうち赤い長袍を着た一人がハガネールの背から飛び降りてこちらへ向かってボールを投げる。
「マルヤクデ、『ほのおのうず』」
ベンケイたちが反応する間もなく、周りが炎に包まれる。訳のわからぬまま退路を塞がれた五人に、歩み寄る影がひとつ。
「御託はいい、率直に答えよ。…お主らが、マグマ団の残党じゃな?」
「お主らが、マグマ団の残党じゃな?」
炎の向こうから聞こえる声に、ベンケイが凍りつく。陽炎で顔が隠されてはいるが炎色の長袍を纏ったその姿は、なにより少年とも少女ともつかぬ、悠々としたその声は。
「師範!?なぜこんなところに!?」
「…おろ?その声、もしかしてベン坊かや?」
……
「いやーすまんのー、ちょーっとこっちの事情で皆ピリついておっての。お嬢さんのメテノの『大爆発』を見て、すわ有事かと勘違いしてしもうたわい」
「まったくですよ、お陰で肝が冷えました…」
「ヒソヒソ…(ベンケイ、この人誰?)」
「…ヒソヒ…(若い頃にお世話になったバトルの師匠です)」
「…!?ヒソヒソ…(ハァ!?どう見てもあたしと同年代じゃない!見た目どーなってんのよ…あれで実は300年くらい生きてるとか言わないわよね?)」
「ほっほ、さすがにそこまで生きとらんわい」
「げっ、聞こえてた…」
「老人の聴力を舐めるでないわ。それでベン坊や、お主はなぜここに?」
「…お恥ずかしながら、空飛ぶタクシーが墜落しまして…」
「そらとぶタクシーって墜落するもんなんやぁ…」
「ところで師範、事情があってピリついていたとはどういうことです?何かトラブルでも?」
「…まあお主らなら話してもええか。ちいと耳を貸せい、ただし他言は無用じゃぞ」
「……。」
「チドリくん、どうしたのかい?そんなに白衣のお嬢さんの方を睨んで…」
「…いや、なんでも」
「…なるほど、この学園にマグマ団の残党が…」
「マグマ団ってあのマグマ団よね!?陸地増やそうとして日照り起こしたクソヤバ連中!そんなもん野に放ったら大変じゃない!?」
「そ、そういえばフチベちゃんはホウエン出身やったもんね…」
「それでワシらは奴らを追ってこのテラリウムドームに来たというわけじゃが…」
「さっきの爆発が勘違いだったとすると、彼らはどこに行ったのだろうね」
「ふむ。ヒガンや、マグマ団の連中を見たというのはどの辺りだったかね?」
「え、えと…たしか、購買のすぐ近くやったはず…」
「そこでドームに向かうマグマ団を見たというならテラリウムドーム以外にもいくつか候補地が現れてくるね」
「ほほう…となると奴らのいそうな場所はセンタースクエア、テラリウムドーム、金庫、電気石の洞窟、リーグ部部室あたりじゃの…。丁度いい、ベン坊!お主も力を貸さんか。話を聞いていったついでじゃ」
「はぁ…分かりました、相変わらず人使いの荒いお人だ」
「それ、私も一枚噛ませてくださらない?だってすっごく面白そうなんですもの!」
「おやお嬢さん、どちら様で?」
「…特別講師のレイリだそうよ。カントーの方から来たんですって」
「レイリ?カントー地方の…白衣の女…」
「…チドリ君?いったいどうし、」
「…あーーーーー!!思い出した!オマエ、レインボーロケット団の!」
「れ、れいんぼー…?」
「アローラでレインボーロケット団と戦ったとき、団の中にコイツもいたんだよ!そん時の『レイリ』はロケット団の科学者って肩書きだった。…オマエ、元ロケット団員だろ!」
「そうだけど、何か問題でも?」
「なっ…」
「ロケット団に居たころの私と今の私はなんの関係もないじゃない?それよりそこの紐飾りをつけたあなた、私もマグマ団の捜索に混ぜてほしいのだけれど」
「うむ、よいぞ」
「ハァ!?やめとけよこんな奴、ほっといたら何するか分かんねえんだぞ!?」
「彼女の言ったとおりじゃ。元ロケット団員であったとて、今の彼女には関係なかろ。それに『放っておけば何をするかわからない』ならば、なおさら味方として監視した方がよほど安心じゃ。違うか?」
「そうでなくともただでさえ人手不足なんだ。腕利きのトレーナーが一人増えるとあれば、リスクを差し引いても彼女を引き入れる価値はあるだろう」
「…チッ…後悔しても知らねえからな」
「やった!皆さまよろしくね♡」
「では手分けしてマグマ団員を探すぞ。まずセンタースクエアに行くメンバーじゃが…」
dice2d7=3 4 (7)
1.チドリ
2.ツルバミ
3.ベンケイ
4.フチベ
5.レイリ
6.ヌルデ
7.ヒガン
「我々でセンタースクエアに向かいましょう」
「むかつくけど、こいつと二人の方が荒事になっても戦いやすいしね」
「おお任せたぞ。お主らなら安心じゃ」
「では次に引き続きドーム内を見張るメンバーじゃが…」
dice1d5=5 (5)
1.チドリ
2.ツルバミ
3.レイリ
4.ヌルデ
5.ヒガン
「…ヒガン、お主が行け」
「ぅええっ!?うちですかぁ!?」
「これも一つの経験じゃて。たまには師匠の力なしで頑張ってみい」
「うぅ…」
「では次に金庫に行くメンバーを決めるぞい」
dice1d4=2 (2)
1.チドリ
2.ツルバミ
3.レイリ
4.ヌルデ
「ツルバミ、頼めるか?」
「勿論だとも」
「こいつに大事そうなトコ任せて大丈夫なのかよ…」
「き、金庫の中身に、手ぇ出したり…しないでくださいね…?」
「キミ達は僕のことをなんだと思っているのかな???」
「では次に電気石の洞窟じゃな」
dice1d3=1 (1)
1.チドリ
2.レイリ
3.ヌルデ
「俺が行く。見てろよ、マグマ団の連中なんざ俺一人で全員とっちめてやるさ」
「おお、勇ましいのう!では電気石の洞窟は任せたぞい!」
「が、がんばって…!」
「ではワシとレイリはリーグ部の部室へ行くとするか。スグリに…タロだったかや?お主らは念のため生徒たちの避難誘導を頼めるか?」
「わかりました!」
「はい!…け けっぱる!」
「じゃあここで解散だな。それと…おいクソババア。オマエ、なんか変な動きしやがったら俺がソッコー潰すかんな」
「やだ手厳しい。言われなくても何もしないわよ」
「…ホント、ですよね?」
ベンケイとフチベはセンタースクエアに、ヒガンはドームの他のエリアに、チドリは電気石の洞窟に、ヌルデとレイリはリーグ部の部室にめいめいに散って行く。
「ねえ、フチベちゃん」
「…なによ、藪から棒に」
「…一般に33歳という年齢は、『ババア』の括りに入るのかしら?」
「…あたしに聞かれても困るわよ…」