オヤブンゴンベ捕獲SS
明らかに大きな、赤い目のゴンベがいた。僕は震える手でモンスターボールを握りしめる。
償いじゃない。運命でもない。ただ、調査隊として、目の前のポケモンを捕まえるだけ。そう言い聞かせても足が動かない。悠然と歩くゴンベを、わたしなんかがえらんでしまっていいのかと、わたしのようなよわくてやくにたたないゴンちゃんをすてたこが
マグマラシが小さい炎を吐いて、ゴンベに飛びかかった。僕の指示もなく噛みつく。ゴンベが引き剥がそうと手をかける。
我に返った僕は懸命に指示を飛ばした。進化前とはいえオヤブン、通常のゴンベとは比べものにならない強さ。冷や汗がだらだらと落ちるのを袖で拭って、徐々に弱るのを待つ。
マグマラシが息を上げながらも振り向いた。
今、ボールを投げるべき。
驚くほど滑らかに体は動き──小さな花火が上がる。
お洋服も髪型も言葉もお友達も未来も、全部パパとママに決められていたわたしが、初めて選んだポケモン。
さみしがりで、クラボの実が好きで、赤いリボンがよく似合うゴンちゃん。
バトルが嫌いなゴンちゃん。
あの子との別れを選んでしまったこと、後悔しなかった日はない。
でも。
わたしは。
「……よろしくね」
ルクシオに支えてもらい、目眩をこらえながらの情けない挨拶だけど。
僕はもう一度、戦うことを選べた。