オチなしツチニンSS

オチなしツチニンSS



お水を飲もうとしただけだったのに。


ボクは普段土の中にいる。このところ雨が降ってないのか、喉が渇いて渇いて。

慣れない地上に出て池のそばに来たけれど、足を滑らせてしまった。

このままじゃ、溺れる。


「うわ、お前大丈夫!?」


そう言いながらばちゃばちゃと、片手でボクを掴み上げたのは人間の男の子。顔を心配そうに覗き込んでくれるので、ありがとう、と精一杯喜びのジェスチャーをする。

どうやら伝わったみたい。向こうも笑ってくれた。


「なぁなぁ、お前さ俺が大きくなったら最初のポケモンにならない?俺大きくなったらトレーナーになるんだ!」


木の根元にボクを乗せながら、男の子が無邪気にそう言った。ボクはいいよ!って元気に頷く。

「いいんだよな?約束だぞー!」

そんな男の子の声に手を振って土の中に潜り帰った。


とはいえ、ボクは土の中から本当は出ないツチニン。だから男の子が大きくなるより先に、進化して飛べるようになるんだ。

飛べるようになったら、ボクはあの子と旅に出よう。たくさんバトルも出来るかな?ボクだけじゃ行けない所にも連れてってくれるかな?




そんな夢を3年見て。


進化したら飛んで探すからと5年経ち。


残りの2年で、流石にもう約束も忘れちゃっただろうと諦めた。



約束して10年目。ようやく進化の兆しを感じて、ボクは見つかりにくい木の裏まで這い登ってきた。

なんとか鳥ポケモンに見つからずに、立派な羽を手に入れて抜け殻から出てきたら。


「おー!お前探したぞー?」


目の前にちょっとあの子に似た人。じゃなくて、10年経った本人がいた。


「お前10年くらい前に俺と約束してくれたポケモンじゃない?そうだろ?

心変わりしてなければさ、俺の最初のポケモンになってくれよ。な?」


心変わりなんてあるもんか。

ずっと諦めたフリしてたけど夢見てたんだ。

ボクは君と、いろんな所に行ってみたい!


言葉は通じないけれど、喜んで周りを飛び回っているボクを大きくなった男の子は嬉しそうに見てくれてる。

ボクは差し出された新品のモンスターボールの真ん中を、自慢の速さで飛んで押しに行った。



「あ、忘れてた。もう一個持ってんだよモンスターボール。お前の方は息もしないし全然動かないから分からんけど勝手に連れてくな」

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