エルフのムダ話-酒2

エルフのムダ話-酒2

リース

…さてと、3つ目は多分唯一無二の珍酒"クァロ"じゃ。

なんと獣の血と骨を使う。生き血を酒にかけるんじゃなく、醸造に使うんじゃ。人間の間じゃ滅多に飲まんどころか、呑むと死ぬなんて言われとるくらいじゃのぅ…いや死なんぞょ?迷信じゃよ。ていうか思いっきりエルフ教(人間)から逆輸入した酒じゃしのぅ。まぁ聞いておれ。

しかし…見た目は確かにヤバいゎ。底が見えんくらい真っ赤で、血塊のようなものが浮いておるんじゃ。

赤は着色に使われたビーツ(のような植物)の色で、血塊はいわゆる酒粕じゃが、知らずに見るとビビるのぅ。

前に話したヤクトプとミャレコは普通に美味そうな白金色と木の琥珀色をしている透き通った酒じゃったからあんまり気にしとらんかったが…というか前に見た目の情報を話し忘れておったのう……すまぬ。


味は…大前提として温めて飲むが、スープじゃな。ほどほどの塩気と酸味の効いた、意外とさわやかな風味や香りがする飲みやすいスープじゃ…まぁ喉を潤すような酒ではないが雨季に冷え込む夜なんかには体があったまって美味いし、量を飲めるんじゃ。


しかしメッチャ強い酒でもあるぞょ。ヘタに飲み過ぎると死んだように酔い潰れてしまうんじゃ。焼酎くらい強いのに塩味とさわやかさのせいで飲みやすいし、初めて飲む者は噂や見た目に気圧された後で打ち勝ったと調子乗ってグビグビじゃ…で倒れる。

…そういうことじゃな。見た目と噂の割に飲みやすくて、その割に強いから飲み過ぎやすいんじゃ。"飲むと死ぬ"噂はここから来ておる。ぶっ倒れる阿呆の看病はエルフも慣れとるし、加減もわかって止められるからまず死なんぞょ。酒に弱い者は飲みやすさとか関係なく強すぎて飲めないからのぅ…

というか不思議なのは、結構しっかり熱するのに全然アルコールが抜けんことじゃ。なんでかはわからん…多分製法でアルコールを血か何かと結びつけておるんかのぅ…


で肝心の作り方なんじゃが…これが実はわからんのじゃ…クァロは元々儀式に使う酒を飲みやすく作り替えたものでな、その製法はエルフ教とエルフの聖職者にしか伝えられん門外不出の工程で、部外者は例えエルフでも教えてくれんのじゃ。妾は聖職者になるつもりないし、もしなると森から出られんようになってしまうでのぅ…すまぬ。

…実はこの前話したヤクトプ狂いな生臭坊主が、酔っ払った拍子にコッソリ材料だけ教えてくれたんじゃけどな。ヒミツじゃよ?

まぁ…レシピだけ聞いてもなんのこっちゃと言ったところじゃがの…

・血液(牛かヤギか鹿の血)

・山芋(あればジャガイモが理想的)

・柑橘(ハッサクかレモン)

・背骨(牛かヤギか鹿の骨)

・野麦(オーツ麦か、あればライ麦)

・ローリエ

・塩

・酢

エルフの森でしか取れん独自名の材料は人間の類似品に直しておるぞょ

恐らく少し詳しい者が見れば作り方を察してしまえるかもしれんが…想像するだけに留めてほしいのじゃ。捕まってしまうからのぅ…



さて、次はその蒸留酒"レャンパ"じゃ。ちょっと変わった経緯で、上に書いた血酒はこちらがベースじゃ。普通は醸造酒が先なんじゃけどな。


まず、この酒は下手したらエルフも死ぬほど強い。これは冗談も迷信も抜きじゃ。

こちらも製法を教えてくれんかったのじゃけどかなり高度な魔法が使われておって、アルコールで酔う以上に魔力酔いするんじゃよ。

魔力酔いっていうのは外部の魔力を体内に入れ過ぎたり、その形や質が体に合わんことで起きる弊害…一種の拒否反応じゃ。コレのせいで、どんな魔法の治療薬を飲んでも不死身にはなれん。


症状としてはまず胃が荒れて、次に目まいがして強烈な胸焼けと腹痛に襲われ、重症になると頭が痺れて何も考えられんくなりながら下痢を垂れ流してしまい、最悪死ぬのじゃ…アルコール酔いと似ておるが、アレルギーや拒否反応に近い現象じゃから、場合によっては命に関わるぞょ。

そして魔力酔いは自前の魔力が処理できないか、処理しきれないと判断した外部の魔力に対して起こす拒否反応じゃから『自身の魔力量が多いほど耐性を得られる』のじゃ。

「三日以上魔法を出しっぱなしにしても余る魔力を持つエルフも酔う」のじゃから、人間からすると猛毒極まりないと言えるじゃろうな。


しかし当然じゃ。

この酒は"飲み物ではない"からのぅ。

妾も飲んだことないし、飲みたくもないぞょ。じゃからいつも最初にする味の説明をすっ飛ばしたんじゃな。

一応飲んだことのある奴から聞いた話によると"マズい。すんごい胃が荒れて胸焼けする上にアルコールも超強いから酔っ払い過ぎて味なんてわからねー"そうじゃ。


では何に使うかというと、儀式じゃ。

これまで狩りの成功祝いで木にかけたり、魔抜きのため家にかけるとか言っておった酒の正体がコレじゃよ。

この酒はトレント化の予防によく効くんじゃ。まだトレントになっておらん木にかければ、木はコレを取り込んだり代謝したりせず排泄するために、酒もろとも貯蔵した全魔力を吐き出してくれるのじゃ。

一応、どうしてもトレントを倒す必要がある時にも使うのぅ…樽20個のレャンパを用意して全部かければ、ようやく家屋サイズのトレントを倒せる。この作業は概ね3〜4日夜通し行われるんじゃ。


そんな"飲まない酒"のレャンパじゃけど、匂いはええぞょ。蕩けるような甘さと柑橘、その奥でクセになりそうな獣臭がするんじゃ。

直接吸い込んで嗅ぐと頭がフワフワして、体が敏感になってしまぅほどリラックスできるんじゃぁ…

まぁ人間や妾がそんなことしたらぶっ倒れてしばらく動けんくなるがのぅ…

それくらい香りも強くて、実際に香水として愛用するエルフも居るくらいじゃ。ふんわり香る程度だとホントに良い匂いじゃからのぅ。


…さてと、スレ主もようやく休みを終えて妾もいい具合に話しきったことじゃし、これでムダ知識は一旦切り上げさせてもらうぞょ。


読んでくれてありがとうなのじゃ!

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