ウタの過去

ウタの過去

あー早くベルちゃん描写したい


──────私には実力と才能があった



私は9歳の頃 海外のプロにスカウトされ夢に見た歌姫を目指すために友だちと離れシャンクスと共に海の外へ出た

シャンクスは仕事で忙しく別居、本場の指導は厳しさがあったがおかげで17歳の時点で一般の演奏会に参加することなくプロが混じったハイレベルのコンサートに出演者として招待されるようになった



──────だけど私には運が無かった


コンサートは開幕した。プロの歌声、熱気に圧倒されていると気づけば私が歌う番になっていた

その回唯一の新人だった私は今までの音楽家とは異彩を放つ足つきでステージに顔を出した

だけど緊張はない。目の前の人たちを楽しませるのにそれは不要だからステージ裏に置いてきたのだ


大きく口を開けて歌い始めた時


海外では珍しい大地震が起きてしまった




スタッフの対応で幸い死者はいなかった

だけど演奏会はこれにて終い。せっかく音楽を楽しみにお金を払って来てくれた彼らがそれを聞けずにいる


……仕方ないとはいえやるせなかった


地震の恐怖に震えた彼らにかける歌もなく、停電が見せる暗い夜空と同じ色の瞳をした私はその場から離れた



……そもそも私はみんなに歌を聴いて欲しかったのになんで限られた人しか聞けない舞台を目指していたんだろう




その後の私は歌う気を亡くしていた。先生のゴードンは私を気遣ったからか何も言わずに毎日アパートの扉の前に来てはポストの中にコンサートの招待券を入れてくれた


私の足は動かない。"音楽を楽しめなくなった"私が聞きに行ったら一生懸命に歌うあの人たちに失礼だから


……意気消沈して自己防衛本能が働いたのか シャンクスとゴードンにだけ事情をメールで伝えて私は優しい思い出の詰まった日本に帰った



──────私は過保護なお父さんと面倒見のいい友だちを持っていたようだ


日本の空港ゲートを通るとそこには


「ん……お前ウタだろ!ウタだよな!」


シャンクスから連絡を受けて迎えに来てくれたのだろう


「……ルフィ!!」


 あいつの顔を見た瞬間 私の苦悩は少しの間消し飛んでいたようだ



都会の空港に降り立った私を迎えてくれたあいつは徒歩で駅とは違う方角に歩き出す

てっきり電車でルフィの故郷の田舎に向かうと思っていたが聞いてみるとどうやら先週高校デビューしたルフィは地元ではなく都内の高校に入学していたようだ

理由を聞いたら"おもしれェやつらと会える気がする"とか変なことを言う始末


……馬鹿って返したら"おかげでウタに会えた"とか変なこと言い返してくる


私って面白いか?




キャリーケースの音を奏てしばらく歩くとようやくルフィのアパートに着いた

これだったら電車の方が早かったんじゃ…


アパートの中は広く私が居候しても問題は無さそうだ


……肉で埋まった冷蔵庫を見た。もう一台買わないと




レッスンで忙しく友だちと遊ぶことがなかった時間を取り戻すように私はルフィと一緒にご飯を食べたり遊んだり買い物したりお風呂に入って寝た

何をするにも一緒にやり遂げた


寝相の悪さは健在だったが人肌に触れると私が夜にひとりじゃないことが分かるから少し嬉しかった



せっかくだからルフィと同じ高校に行くことにした

"緩い"学校生活は私にとって光だった

朝は友だちとお話して授業が始まればみんなと勉強

音楽ばかり学んだ私が今から学び直せるかと心配していたが基礎を覚えたら大したことは無かった


お昼はルフィと"特に仲のいい仲間"と一緒に屋上で弁当を食べた

サンジがみんなの弁当を用意してくれるってなったことで朝の用意が楽になったけどルフィのための弁当を作れなくなったことが少し悲しい




一緒のクラスの子にY○uTubeを教えてもらった

以前は忙しくこんなもの知る由もなかった


無料の動画サービスか……



──────これだよ!これ!



これなら無料で自分の動画を投稿できて何時でも見たい人が見れる


「ルフィ!寄り道に付き合って!」


校門でルフィの腕を掴んで強引に引っ張り家電量販店に向かう

足蹴りから生じた砂埃が校庭から消える頃には既に目的地にたどり着いていた




「これと!あとこれも!これも必要みたいだね!」


配信用機材を買い揃えたら次は防音室の設置

業者にアパートの図面を見せて頼むとこの間取りなら組み立てできるが今すぐにはできないとの事だった


ならそれまでの時間は業界研究に使おう!


「なァ 一緒に食べないか?」


「後でね 今研究中」


──────


「風呂湧いたぞ!いつもみたいに……」


「今日は一人で入って!……ハイケイハアカルイノガイイノネ」


──────


「……もう遅いだろ 寝……」


「……こういうのが受けるのね」ジー



「……邪魔したな」




「昨日は構ってあげれなくてごめんね 埋め合わせに一緒にご飯食べに行こっか もちろん私の奢りで」


「行きてェけど行かね」


「なんでよ!」


「鏡みてこいよ 寝てないから酷い顔してるぞ」


うわぁ……お風呂に入ったはずなのに何この顔は


「ほら寝るぞ」


ルフィに抱え込まれてベッドに放り投げられる

雑な扱いをされたが悪い気はしない

私の体を思ってくれているから


生意気な子供が成長したなぁ


"お姉ちゃん"嬉しいぞ




日曜日 アパートに防音室が設置された


入って早々カメラをつけて歌を歌う

受けて側の顔も見えない誰かのことを思って歌う

誰かを思い踊る



撮り終えてからの投稿

……時間がかかるな ルフィとゲームして遊ぼっと!




──────やっぱり私は運が良かったようだ


動画が投稿されて数時間


「……1000再生」


広いネットの海でこれだけの人が私を見つけてくれた

私の歌を聴いてくれた

高評価を押してくれた

コメントを残してくれた


涙が……止まらなかった

コメント返信しなきゃ



翌日、寝坊しかけた私は動画の再生回数を見ずにいびきをかくルフィを着替えさせて登校した


「ウタちゃん動画見たよ!今まで聞いた中で一番の歌だったし再生回数も凄いね!」

クラスの教室に入ると一番に言われた


「ありがとう!嬉しかった……だって1000回も再生されたんだから」

いけないな 思い返しただけで少し涙ぐんでる


「……何言ってんの?1000再生?」



「桁がふたつ足りないよ」




「……え?」

見せられた画面の数字は"14"

その数字に続くは"万回視聴"


昨夜20程のコメント数は3桁に


「……これじゃあ……」


「これじゃあコメント返しきれないよぉぉ」




学校から帰ってから数時間

返信は間に合わず画面を更新すれば返信したコメント数よりも新しく投稿されたコメント数が上回る


「これじゃいつまで経っても返信しきれない 私のことを見てくれたのに……」


「そうだ!配信しよう そうすればリアルタイムで返信も雑談もできる!もっと私を知ってもらえる」


こうして"UTA"の配信活動が始まった




「ルフィも一緒に配信する?」


「やらね 興味ねェ」


「えー 私と一緒に出れば楽しいって!」


「ウタは"ウタ"を見せたいんだろ?ならおれが一緒に出る意味なんてねェよ」


「……大人ぶってカッコつけちゃって 背まで私と同じくらいに……」


「……大きくなったね ルフィ」




──────私は配信をなめていた


配信ならすべてのコメントを拾えてすぐさま声に出して返答できると考えていた


甘かった。滝のように流れるコメントからかろうじて文字を読み取り記憶することは出来るが声に出して返答することが出来なかった


まともに出来たのは挨拶と音楽がどれだけ好きかを伝えることだけだ



「……はーつかれた」


目が回り言葉が発せられなくなったことでギブアップ

別れの言葉を告げてカメラをきった


視聴者からの意見は様々だ

●ポンコツで可愛い

●最初の動画でかっこよくて賢いと思ったけどそうでもない 人間味を感じた

●次は動画かな?配信かな?可愛いウタちゃんがはやくみたい


「ルフィ 私ってポンコツなの!?」


「ししし!こいつらウタをよく見てるなァ ウタも知ってもらえて嬉しいだろ」


「私はポンコツじゃなーーい!!」



それでも配信を続け数を重ね経験を得る

みんなが見たいものを見せたかった

歌、ダンス、私が経験したこと


回を重ねて話すことが無くなればみんなの相談を聞く雑談形式をするようになった


みんなの相談に乗れるだけでも恩返しになって良かったのにそれが大ウケまでして視聴者はより多く



回を重ね時期が経つとあっという間に高校を卒業していた

進学も就職もせずに私はルフィのアパートで相も変わらず配信活動を続けていた

朝はルフィの朝ごはんと久しぶりの弁当作り

ルフィが出かけて掃除が終われば"寝れる"


ルフィが帰れば弁当箱を洗って勉強を無理やり教える

晩御飯を用意したら一緒に食べてゲームで楽しく遊ぶ

無理やりお風呂に連れ込んで背中を洗う

……ルフィの背中 こんなに大きい



風呂から上がれば牛乳を飲んで一息つく


……ここからは一緒ではない

ルフィをベッドに寝かしつけて子守唄を歌う

"ウタと一緒に寝たい"と甘えることがありその場合は一緒に寝てあげるが配信をすると告知している日だけはしてあげない

一緒に寝れないと拗ねるルフィが眠るのには時間がかかる

だから私は配信時間を深夜にしている

昼寝ているのはそのためだ



"感謝の配信"が終わるのは大体深夜三時

ルフィの朝ごはんを用意し始めるのが六時


三時間しか眠れないけど私はルフィの隣で眠るのが一日の中で一番好きだ

大好きな人と同じ時間を過ごせるのは幸せな事だ


……"大好きな人"?

この呼び方をすると心が変にざわつく

風邪かな ルフィに移したくないなぁ



街に出ればこの髪色のせいかファンに見つかりやすくよく声をかけられる

私はそれが嬉しいがスカウトのような男が来ることだけは嫌だった


CDやLIVEはやりたくない

わたしの歌は無料で聴いて欲しかった 


それとルフィと出かけている時声をかけられるのも嫌だ

前に配信で家族構成を聞かれて"たくさんのお父さんと手がかかる弟"がいると答えた


……全員血は繋がっていないけど血よりも濃い絆で繋がっている



だからファンの人たちはルフィのことを私の弟と勘違いして馴れ馴れしく接触してくる

……なんでだろう イライラする


こうなるとファンサせずにルフィの腕を無理やり引っ張ってその場から離れ家に帰る



……なんでルフィ"だけ"そうなんだろう


ルフィの周りに女の子が寄っているとイライラする

学校でルフィが女子と仲良く話していると考えると昼間に眠れなくなる


……そうか 私好きなんだ


ルフィのこと



思い返せばルフィとはいつも一緒にいてルフィのお兄さんが来た時や配信をしている時以外はいつも一緒に同じことをしている


結婚生活と何ら変わらない


違いがあるとすれば……赤ちゃん


……血の繋がりがある家族

血の繋がりだけが家族じゃないことは私がよく分かっている

それでも……赤ちゃんが出来れば私は天涯孤独じゃなくなる


……産みたい "大好きな人"の…ルフィとの赤ちゃん



私の口は達者に動きルフィに伝えたいこと、やりたいことを全て告げた


全てを聞いたルフィは珍しく何も言わずに私を優しく包むように抱きしめた


ルフィが18歳になったら結婚しよう

気が早いがそれを見すえた人生計画を立てた



・ 

高校二年生のルフィは今17歳

あと一年


いずれ"UTA"は活動休止になる

だから私は今のうちに動き出した


配信を続け全国に子会社を持つ音楽会社と契約 


──────無料でいつでも誰にでも聴いて欲しかった私の歌を"CD"とデジタル配信で世に販売した


これなら何かの不祥事でチャンネルが消えても私の歌は響き続ける

それにどこに引っ越しても収録をすることが出来る



スタンスを変えたことにファンは怒ると思ったがそうでも無い

むしろお金を払えたことでようやく清々しく歌が聴けるというコメントがあった程だ


ただこれだけファンが優しいと活動休止を宣言する時辛くなるな


活動休止の間にみんなが寂しくならないようにひとつでも多くの歌を作って発信しよう


それが私に出来る今やるべき事だと考えた



一年経ち

5月5日 ルフィは18歳になった


この日はルフィの誕生日だけでなく私たちの結婚記念日に変わる


式は酔っ払ったシャンクスが暴れたから話を飛ばそう


何日か分の食料を玄関前に置いていく"緑色のニワトリくん"しかストーカーがいない私(ストーカーされているのはルフィか?)はファンに隠すことなく大好きな人との結婚を発表しようとした


私にも私の周りにも優しい音楽プロデューサーは結婚したことは発表してもいいがルフィの年齢を4年ほど足して学生であることは秘密にして報告してくれと言う


私にはこれがよく分からなかった



だけどその通りに私は夕方に配信で宣言した


意外にもそれを受けて悲しむ人はいなかったのだ

私のことを姉や妹、手の届かない憧れとでも扱っているのか、祝福コメントを見ているとそう思う


問題があるとすればニュースでルフィを"一般男性"として紹介したことに痺れを切らした"緑色のニワトリくん"とその仲間がテレビ局に突撃したことだけだろうか




そして……そして……


同年10月に私は誕生日プレゼントの他にもうひとつとびっきりの宝物を受け取った

……いや"身ごもった"


同時に配信活動休止。やるとしても新曲の収録のみと宣言


だけどこれはあくまで"心象の変化"という理由付け

子供を身ごもったことだけはファンに隠した


私と大好きな人との赤ちゃん。この子はカメラを通して無闇矢鱈には"見せたくない" 、"晒したくなかった"


私たちだけの何よりも大切な宝物だから



ルフィが高校を卒業してからは都会を離れて静かな街で暮らした

この街の近くには消防署も私が所属する音楽会社もある

消防士を目指したルフィは面接に行くと、かつて火災マンションから住民を助けたことを署内のみなが知っていたため無茶をするなと叱りを受けた後採用された 今でもウケる


──────こうして私たちは幸せな世界で新しい生活を歩み始めた



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