ウソップにだって出来ないことはある
「しっかし生きた人形なんてなー、珍しいモンもあるもんだな」
キィキィ
「ああ、シャンクスが預けてくれたんだ。どっかの島で急に出てきて、シャンクス達に懐いたから連れて帰ってきたんだってさ」
……ギィ
「へー、となるとおれの親父のことも知ってんのかも。おい、ヤソップって知ってるか?おれの親父なんだけどよ」
キィキィ!
「知ってるってさ」
「ハハ、やっぱりな。知ってるんなら色々話も聞きてェが……口が聞けないんじゃなぁ。
そういや、このキイキイ言ってんのは何の音なんだ?」
「背中のオルゴールだよ、壊れちまってるらしい」
キィ
「壊れちまってるって……治してやりゃいいだろ?ちょっと待ってろ今見てやるからな」
「……よし、これでどうだ!」
…………
「何やってんのウソップ?」
「ウタのオルゴール治してくれてんだよ。今まで壊れた音しか出なかったからな」
「でもそれあんた昔……」
「さあウタ、生まれ変わったお前の音色を聞かせてやれ!」
……ギギィ
「……あれ?」
「治ってねーぞ?」
「期待させるだけさせといて酷いわねあんた」
「いや違う!そんなつもりは……あれ、何がダメだったんだ……?」
ギィ……
「あの部品を入れ替えたのが不味かったか……?いやでも、あんなモンがあそこにあっていいはずはねェ……
……ダメだ、全然分からん。一体どうすりゃ……」
「もういいわよ、あたしも同じ道通ってるんだから」
「へ?」
「あたしも前に治してあげようとしたんだけど、てんで見当がつかなくてね……
一流の大工か、専門の業者にでも頼まないとお手上げだわ」
「昔マキノにも見てもらったんだけどな、私じゃムリだって言われたことあんだよ」
「オイオイ、そういうことは早く言えよ……ウタに期待させちまったじゃねーかよ」
キィキィ
「いやァ、あんまりにも自信満々だったからつい」
「余計恥ずかしいわ!」
キィ(ポンポン)
「そーだよなーウタ、怒ってるよなァ……悪かったよ……」
「いや、多分『頑張ってくれてありがとう』って言ってんぞ」
「!」
キキィ!
「ウタ……ハハ、いつか治してやりてェなァ。
だけどよ、そういう専門の業者がいるってんなら、それなりに大きな町に行った方がいいよな」
「東の海で大きな町って言ったらローグタウンになりそうね。ただあそこは……」
「にっししし、まァそのうち治るだろ。なァウタ」
キィキィ
「そのうちって……能天気な奴だなお前」
「あ、そうだウソップ」
「ん?」
「今治そうとして入れ替えた部品とか、全部元に戻しといてやってくれねェか?」
!
「そりゃあ構わねェけど……なんでだ?古くなってる部品とかもあったぞ?」
「どうせ治んねーなら一緒だろ。昔から一緒の部品の方がいいと思っただけだよ」
「ウタはどうなんだ?」
キィ(コクコク)
「本人の希望ならしょーがねーなァ。よし、戻してやるからな」
「というかよ……」
「お、ゾロ。起きたのか」
「壊れてねェんじゃねェか?そもそも」
「「「?」」」
……ギィ
ゾロの推察通り、実は何も壊れていないことがその後発覚。
じゃあなんでこんな音しか鳴らないんだ?という疑問が解けるのはまたいずれ。