【腐向け】ウォルターと男621&男ハウンズのえっちなSS:Ⅰ(前編)
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【腐向け】ウォルターと男621&男ハウンズのえっちなSS:Ⅰ(前編)
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ハンドラー・ウォルターと5人の猟犬が暮らす拠点。
主であるウォルターの寝室――そこに据え付けられた大きなベッドが、激しく軋んでいた。
さもあらん。
その上では、4人もの男が淫靡な行為をしているのだから。
「ぅ、うぉるたぁ、――もっと、つい、てっ」
「大丈夫、なのか、621」
「いいっ、からっ、もっと……んっ!」
ウォルターに正常位で貫かれながら、どこか退廃的な危うさを帯びた――少年といった容姿の621が喘ぐ。
大きなベッドの下半分を使う形で行為を行う2人。
では上半分は? と言えば。
「んっ、いいっ、よ。17」
後背位で交わる2人が居た。
正常位で行為をしている先の二人に対し、621と頭を向け合う形で突かれているのは少女のように可憐な容姿の少年……619だ。
そして、彼を後ろから抱いているのは体格の良い精悍な顔立ちの青年、617。
「もっと、つよく。乱暴に、してっ」
突かれながらより激しい責めを求める621に、ウォルターは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべながらも、より強く、先端を押し付けるように中を突き刺してやる。
「あっ! あっ、痛っ……い」
涙ぐんで悲痛な声を挙げた621。
ウォルターはつい腰を止めそうになるが。
「やめないで。お願い、うぉるたー」
「だが……いや、わかった。続けるぞ」
621の訴えに応じ、再びウォルターの肉槍が621の後孔へ抽送を始める。
そんな2人を見ながら。
「17っ、もっと」
「わかってる……!」
まるで主と621の行為に連動するように、交わるペースを上げる617と619。
正確には『まるで』ではない。
事実として彼ら2人はウォルターの行為に、自分たちのペースを合わせていた。
理由はごく単純で、617と619――彼ら2人は愛情により性交を行っているわけではなく、617はウォルターを抱いている気持ちで男根を突き入れ、619はウォルターに抱かれているつもりで『中』を突かれている、というだけの話。
とどのつまりは主を抱きたい・主に抱かれたいが、主の負担を考えて双方が代理で済ませているというのが真相であった。
だから2人――617と619の視線と意識は互いへ向いていない。
それらを向けている先は、目前で621を抱いている主人だ。
なぜこのような――倒錯した現状になったのかと言えば、発端は621にあった。
ウォルターに見出された621が主と共にルビコンに到着し、以前のミッションで死んだと思われていた他の4人が再合流して現在の6人が在るのだが、そのさなか。
621が傭兵生活のスタートから間もなく撃墜された事に始まる。
彼はあるミッションにて、ウォルターに執着する古強者の傭兵・スッラと交戦し敗北した。
ルビコンでの活動を始めたほぼ最初期、パーツや装備がほぼデフォルト――貧弱だった頃に、スッラと621は偶然に遭遇してしまったのだ。
「お前は――奴の犬か? ここで、か……面白い巡り合わせだな」
果たして敵勢力に雇用されたのか、第三勢力としてそこに居たのか。
それすら定かではなかったが、とにかくスッラは有無を言わさずに621というルーキーへ襲いかかった。
技術も経験も、何より機体性能で圧倒的に上回るベテランを相手にして621が勝てる道理はどこにもなく、敗北を喫する。
機体が大破した事で生体反応が途切れ、ウォルターは彼が死亡したと認識したのだが――実は、彼は他ならぬスッラの手によって救出・保護されていた。
いや、保護というのは半分事実でもう半分は表現として間違っていたのかもしれない。
確かに621はスッラに連れ帰られ、彼の拠点で治療を受け、身の回りの世話もしてもらって傷を癒やしていったのは事実。
しかし同時に、621はスッラの手によって監禁されていた。
2ヶ月にも及ぶ監禁生活の末、621は唐突にウォルターとハウンズの元へ帰る事になる。
彼が撃破された後、ウォルターは合流したハウンズと共に傭兵稼業を行いつつも621の生存を諦めず捜索活動を行っていた。
そこへ、なんとスッラ本人からメッセージが届いたのだ。
『また一匹、お前の犬を壊してやったぞ』
という文面と、ある地点を示す座標情報だけが記されたメッセージ。
そこに向かったウォルター達が見つけたのは、横倒しにされたACと、その内部で眠る621。
『壊した』という文面から、ウォルター達は凄惨な姿の621と再会する事を半ば覚悟していたのだが。
予想に反し、621は強力な睡眠薬によって眠らされていただけで、病院着のような物を着せられて、驚くほど傷の少ない身体だった。
帰還してから早々に621は――暫しの静養を勧めるウォルターを振り切って――戦場へと復帰する事になる。
そこからの躍進は凄まじい物があった。
戦士として先達である筈の617から620の4人へあっという間に肩を並べ、それどころか正面切っての1対1であれば5人中で現状の最強と言えるほどの成長を遂げることとなる。
戦場に於いて目覚ましい活躍と成長を見せていく621の様子に、何ら問題は無い――ように思われた。
そう、身体には問題が見受けられなかった。
だがスッラは確実に、621を破壊していた。
621はスッラに監禁・拘束されながら――その体を弄ばれて抱かれ続けていたのだ。
ある晩ウォルターの部屋を訪れた621は、自身に何が起きていたのかを――事の経緯と陵辱の様子を切々と語り、その上で、主に願いを告げた。
この穢された体を、あなたに抱いてもらって、上書きしてほしい、と。
当然ながらウォルターは、唯々諾々とその求めに応じたわけではない。
人脈を駆使してカウンセリングのできる者を紹介するだとか、荒っぽく俗な方法ではあるが――娼婦の手配をして『抱く側』としての自信を回復させるだとか、そういった手段もあると告げた。
しかし、621は拒んだ。
それどころか涙をはらはらと零しながらウォルターの足に縋りつき。
「おねがい、うぉるたー。中、きれいにしてある。うぉるたーの、はいるはず。だから、抱いて、ください。おねがい……!」
と、抱かれる準備すら済ませている事すら告げて、必死の懇願をしてみせた。
渋い顔で頭を抱えたウォルターはそれでも説得を試みたが――
621が懐から小さな潤滑剤のボトルを出し、ウォルターの股間に顔を近づけて『奉仕』をしようとした所で、ついに、諦めた。
その晩からウォルターは『準備』を済ませて部屋を訪れる621を抱くようになった。
夜伽の際、621は優しく抱かれる事を拒んだ。それどころか。
「もっと、痛く、つよくして」
「噛んでほしい、血がでても、いいから」
「犯して、うぉるたー……!」
戸惑う主に対し、とにかく強く酷く行為をしてほしいとせがんだ。
精を吐き出す為の道具のように、遠慮どころか容赦なく乱暴にしてほしい、と。
「なぜだ、621」
と主が問えば、苦痛に顔を歪めながらも喘ぐ621は、後背位で主の雄を受け入れたまま、たどたどしく答えた。
理由は2つ。
1つは、酷なほどに強い刺激を伴って抱かれる事で、スッラに穢された衝撃を上書きする為。
2つ目は、自分への罰の為、だと。
「――621、罰とはなんだ」
「うぉるたーの犬なのに、まけた。うぉるたーのものなのに、スッラのものにされた。だから『ばつ』が、ほしい」
余りにも自虐と自罰のすぎる621の言葉に、ウォルターは言葉を失う。
悲壮な吐露を聞いてしまった事で、ウォルターの雄は萎えかけた、が。
「やめない、で」
「うっ……!」
きゅう、と締め付けた621の孔が中断を拒んだ。
血と硬さを失って出ていこうとする主の肉茎を、引き止めるように。
「……わかった、続けるぞ、621」
苦々しい顔をするウォルターへ、621は無言で首肯する。
そうして、行為は続けられた。
以降の日々に於いても、だ。
そこに変化が訪れる。
ある晩、いつものように621がウォルターの部屋を訪れた。
617と619の2人を伴って、だ。
この時ウォルターは、617と619の真剣な表情から、行為を咎める意図があると覚悟した。
覚悟、というより――正確には、期待したのだ。
このような行為はケアとして間違っていると。否定し糾弾してくれるのだろう、と。
恋愛に基づかない歪な慰めを、止める口実になってくれると。
ところが、現実は非情にして異常だった。
「――混ざりたい、だと? 617、619、何を言っているのか……理解しているのか?」
斜め上どころではない展開。
彼ら2人の主張はこうだ。
自分達も621に負けないほど主を慕っていて、抱いてほしいし抱きたいという欲を日々募らせている。
だが末弟と言える621の身に起きた出来事の辛さは察するに余りある物で、ずるい、自分達とも交わってくれとは言えない。
更に言えば、主への負担も増やしたくない。
だから――主と621の交わる横で、互いの体で発散する形で参加させてほしい、と。
「……お前、たち……それは――どう……どういう理屈だ……」
呻くように困惑の声を挙げるウォルター。
尋常ではない提案に顔と声色を引きつらせながらも、彼は猟犬達を諭そうとした。
お前達に、性的な教育と発散方法というケアをするべきだったと謝罪をした。
恐らくは、溜まった性欲と親愛が混在・混同した形で認識してしまっている、と説明した。
それでも。
「俺たちで、勝手にやるだけですから。ご主人」
「ぼくたち、ご迷惑にならないよう、どりょくします。ですから、ウォルターさま」
だから、許してくれ、と。
617と619は頑として譲ることなく許可を強請った。
「――うぉるたー、は、ふたりのこと、やだ? いっしょは……だめ?」
自分は抱いてくれたのに、2人は傍で『勝手にする』事すら許さないのか、という621からの――よく考えると若干図々しい――無理筋な援護射撃まで加わった結果。
「…………わかった、許可……しよう」
苦渋を込めた深い溜息をつき、眉間に寄せた深い皺と共に、ウォルターは押し切られてしまう。
同性の621を『慰め』の為に幾度も抱き続けた彼は、本来の性嗜好を特殊な事情由来とはいえ捻じ曲げ続けた事で、この異様な状況への拒否感――受容へのハードルを下げられていた。
さて、そうした経緯を経て。
時系列は現在へと戻る。
即ち、寝室の大きなベッドで四人が交わっている現状へ、だ。
「あっ、うぉるたー、もっと……!」
二の腕を押さえつけられて正常位でウォルターに貫かれながら、621がせがむ。
もっと強く、痛くしてくれと。
被虐を乞う621に応じ、ウォルターの両手がより力を込めて、621の両腕を握る。
肉をへこませて、骨に指を食い込ませるように。
強引に痛くしろという621のリクエストに、良心の呵責で耐えうる範囲で応じながらも。
更に、621の中へ往復させている反り返った肉茎で腹側を突き上げる。621のスポットを押して心地よくしてやれるように。
「んっ! そ、そう、つよく、してっ!」
幾度も重ねた行為と惜しまず使われる潤滑剤により、621の後孔は、相当に速く深い抽送すら受け入れるようになっていた。
激しい水音をさせながら主の雄が往復する状態で尚、まだ、もっと、と言えるほどに。
それどころか、腰と尻を器用に使ってウォルターの肉茎を、出入り口の締り以外で刺激する淫らな業さえ発揮して。
「62、いちっ……お前、そんなっ……」
突き入れるウォルターの顔が、快感と――苦悶に歪む。
621との交わりがウォルターへ齎す心地よさは、その方面に天賦の才能――驚異的な速度で上達していくAC戦闘の才と同様に――すら感じさせるほどだった。
頻繁なペースで行為をしているのに緩む事すらなく、強く締まる熱い孔でウォルターの雄を受け入れる。
求めに応じた事で、621の性を深刻に歪んだ方向へ導いてしまったのではないのかという懸念と後悔。
ケアとして抱いている筈だったのが、いつしか621が部屋を訪れる事に期待を抱くようになっている自覚。
交わる夜を重ねる度に、淫らな業を身に着けていく621の様子に、ウォルターは罪悪感を覚えずには居られなかった。
「あぅんっ! はっ、あっ……うぉ、うぉるたー、噛んでっ! がぶっ、て、噛んでぇっ!」
暗い煩悶を振り切るように、ウォルターは621へ伸し掛かった。
首の付け根に歯を立てる。
柔らかな肉。
鼻をくすぐる、621の肌から立ち上る石鹸の香り。
それらに興奮を煽られて一層硬さを増したウォルターの肉茎は、体重を掛けた事で、621の最奥まで道中を強く抉りながら到達する。
「……ひぐっ!? あっ! は、ひっ! うぉるたー、そうっ!」
621の中は熱を増し、境界は強く締めて歓喜を示す。
リクエストに応えてもらった彼の悦びは他の部位でも表現される。
伸し掛かるウォルターの背後へ回された両腕はしっかりと主を抱きしめた。
中をかき混ぜて抉ってくれる雄をより深く受け入れるように、両足がウォルターの腰へ絡んで引き寄せる。
2人の体が密着した事で、ウォルターの腹へ当たる621の雄は固く反って、主の腹部へ先走りの白露を擦り付けていく。
そんな2人を見つめながら、617と619の後背位で為される営みも進行していた。
ウォルターがペースを上げれば617も抽送を速め、621が歓喜に喘ぐ度に619も嬌声を挙げて締め付ける。
621の求めに応じた主が覆いかぶさって噛み付けば、617も後ろから――獣が犯すように619の首元を血が滲むほど噛んでやる。
眼の前で621を抱いてやる主を想い――抱いて抱かれている己をそれぞれ夢想して。
「621……すまん、もう、出そうだ」
「――い、ィ――♡」
主の訴えに、621はか細く鳴いた。声に成らぬ声で。
既に621は精を吐かないまま何度も何度も、体と――何より心で達していた。
夜毎求めに応じて、穢された上に『女ではない』自身を消耗しながら抱いてくれる主人。
主の荒い息と落ちてくる汗が、軽くない疲弊をしながらも応えてくれている事を示す――主の愛に感激を覚えていたからだ。
発射へ向けて腰の動きを速めるウォルターを見て取り、617もペースを上げる。
一方で背後から突かれる619は、シーツを掴む両手の片方を、そっと自身の雄へ伸ばした。
スッラに弄ばれウォルターに抱かれてきた621や『突く側』であるウォルターと617とは違い、彼はまだ、後ろだけで絶頂に至れるほどの経験はない。
ところが、そこに先回りしたのが。
617の手だった。
「えっ……?」
「お前、もいっしょに、イこう。 まだっ、こっちだけで、イケないだろっ」
自身の『前』を包んで刺激してくる手に疑問の声を619が上げると、背後から腰を打ち付ける617が首元へ顔を埋めながら応える。
「――うん、あり、がとう」
617の図らいに呟きで返しながら、619は快感とは異なる情動に顔を赤らめた。
――そんな猟犬2人も終点を目指して加速していく傍で。
ウォルターがギアを限界まで上げて、621を突き上げる。
熱く蕩けた621の中は、仕込まれた潤滑剤を零しながら、食むように締めて主へ強請る。
「うぉる、たぁっ。だして、なかに、出してっ♡ 」
境界を狭めて、腰をくねらせ、尻肉も使って少しでも主の快感を増幅させて。
中へ奥へと突いて擦り押し上げてくれる、愛しい主の精が欲しいと全身で訴えかける。
「出るっ、621、出る、ぞっ……ぐ、ぅ、ううっ――!!」
「――ひっ、あ、あっ……あぁぁっ!!」
往復するウォルターの先端が最奥までねじ込まれ、茎の途中で621の前立腺を潰すように刺激した。
直後、挿して挿される主従の2人は同時に絶頂に達する。
2人の汗ばんだ下半身がみちりと音を立てるほど密着して、621の先端から噴いた精が彼自身の腹を濡らしていく。
繋がった箇所の奥では、ウォルターの雄が621の中へと精を吐き出した。
どくりどくりと注がれる熱い精。
それを飲み干すように621の境界は幾度も締め付け、もっと、もっと下さいと乞うようにヒクついた。
2度、3度とウォルターは621の両肩を握りながら絶頂の刺激に体を震わせる。
「はっ、あ、うっ……」
ようやく射精が終わったウォルターが621の耳元のシーツへ、顔を埋めるように倒れ込んだ。
「――す、すまん。621、重いだろう」
621へ伸し掛かる形になったウォルターは、絶頂の快感と余韻にふらつきながらも体を起こそうとするが。
その背を、621の両腕がぎゅう、と一層強く抱きしめた。
預けられる主の体重を受け止めながら、体内に流してもらった精の熱さを感じて、621は恍惚の表情を浮かべる。
「ううん――うぉるたぁ、うれ、しぃ、よ……♡」
肩や腕に痛々しい握られた跡を残し、首元には赤を越して紫になった歯型まで付けられながらも、621の表情には愉楽が滲んでいた。
白い肌を火照らせ、心身ともに望んだ愛を受け取って――歪んだ喜びに蕩けた彼の貌は、ひどく美しいモノだった。
一方の猟犬2人も。
「いいよ、出してっ、ぼくも、でる、からっ」
快感の頂きに差し掛かって声と体を震わせる619。
彼の首元へ617は再び噛み付いて、そのまま無言で精を放った。
後ろから自身の肩を抑え込む手と噛みつく歯が一際強く圧を増したのを感じて、619の興奮した孔が自身を突き刺す雄へ吸い付いた。
合わせて617の手の中で、619の肉茎が白濁を射った。
617によって背後から体内へ撃ち込まれる受精の快感に合わせるように、619の雄も、シーツへ粘つく白を放っていく。
「あっ、あっ♡ えっ、やぁ……もう、イって、るのに……!?」
617が精を流し込みながら、そのまま腰を振り続ける。
ぐちゃぐちゃと鳴る結合部の水温。首筋を噛む痛みと熱。両肩をがっしりと抑え込んでくる圧。そして、絶頂直後の敏感。
それら全てで羞恥と快感が煽られている状況で。
617は腰を振りながら、握った619の茎を、抽送の動きへ合わせて扱き続けた。
「ま、待って! もぉっ、出ないっ!」
悲鳴の混じった嬌声で鳴く619を、知らんとばかりに突いて扱き続ける617。
前後から与えられる常軌を逸した快感に619は精を放ち続け、彼の煮えたぎった中と収縮する淵は、咥え込んだ617の吐精も続行させていく。
「ぼくのっ、もっ、もう、出ない゛ぃ゛……♡」
2人の与え合う快楽は立て続けに連続の絶頂を齎し合って、幾度も体を震わせながら、ようやく双方の発射が終わりを告げた。
「あぅ……っ♡」
無遠慮に伸し掛かってくる617の体重に、押しつぶされた619。
その背後では、ようやく噛みつきを止めた617がうなじへ口づけるように顔を埋めたのだった。
こうして、2対2の変則的で倒錯的な交わりは無事に終わったのだ。
今後も無事に続いていくのかは――定かでは、ないが。
4人がほぼ同時に互いを貪り終えた頃、拠点内のガレージでは。
「……」
音声と映像再生機能を兼ねた、目と耳の両方を覆うゴーグルを付け、簡易なチェアに座り込んでいる青年が一人。
ウォルターに仕える猟犬が1人、618だった。
半開きの口で、無言のままに何かを観賞している。そんな彼の肩を、正面からぽんぽんと叩く手。
「んぁ……?」
ぼう、と寝起きにも似た表情でバイザーを外した彼の視界に、もう一人の青年が立っていた。
同じく、618の同輩である620。
「17から通信。あるじと21の“アレ”に、無事参加させて頂いて終わったそうだ。後片付けに行くぞ」
「……ほーん、あいつらちゃんと出来たんだな……」
「ああ、めでたいな。ほら、立て」
「はいはい……よっと」
立ち上がり、ゴーグルをチェアの座面に置いて、未だに呆けたような気だるい調子で立ち上がる618。
それに対して620はどこかさっぱりとした雰囲気で、さっさと行くぞ、と『居住エリア』への扉を顎でしゃくって促した。
その背中にノロノロとついていきながら、618はふと疑問を口にした。
「……なあ、20」
「ん? なんだ」
「俺さあ……そこの椅子でボーッとしてたろ? で、17と19はヤッてて……ダンナと21もヤッてたわけだ……」
「そうだな」
「お前さ……どこで何してたん……?」
618の問いに、620の足がぴたりと止まった。
振り返った彼は口を開けて回答を口にしようとした、が。
「そう、だな。――へ、部屋に、いた」
急にぎこちない口調になり、視線が泳ぐ。
「あっそ……部屋で何してたん……?」
「特に。別に。何も」
まるで要領を得ないふんわりとした不審極まる答弁を行う620。
そんな620を、618は胡乱な目で数秒ほど見つめると。
「……一人でしてたろ……お前……」
「してない」
即答で否定する620の手、その指先へじろりと618は視線を移して。
「指……アレ付いてんぞ……」
「は? えっ」
慌てて自身の手を顔先まで持って来て見つめる620。
だが。
「何も付いてない、が」
「……匂いする……塩素くっさ……」
そう言われた620は、今度は自身の指先を鼻へ持ってくると、すん、と嗅いだ。
たちまち彼は得意げな顔をして見せる。
「何の匂いもしない、しつこいぞ」
「……ちゃんと、しっかり洗ったもんな……?」
「ああ――ちっ、違っ」
多重のカマかけと引掛けに釣られた620の顔が羞恥に赤らんで引きつった。
見事に引っかかった620を見て、618は、にへらと笑う。
「……お前も大概こじらせてんな……むっつり……」
「ちっ! ――いいから行くぞ。あるじの寝室を片付けて、身を清めて差し上げる必要が――」
「……はいはい……別にお前が『なに』をしてたか、なんて言ってないんだけどな……」
「うるさい」
そんな、益体もない冗談とからかいを飛ばしながら618と620は、情事の後片付けへ向かう。
居住エリアへの玄関ドアを抜けて、主と仲間達が一戦を終えた室内へ。
その短い道中。ふと620は意趣返しを兼ねた質問を投げる。
「18、そういえばお前こそ何を見ていた? どうせいかがわしい映像でも」
「むっちゃ興奮するエロい動画……見てたけど……それが?」
まるで恥じらいも無いあっさりとした回答に、620は無言でため息をついたのだった。
ガレージに残されたゴーグル――618がスイッチを切り忘れたまま置き忘れたそれは、ひっそりと映像と音声を垂れ流し続けていた。
主観視点。
こちらへ向いた一人の紳士が僅かに口角を上げて頬を緩め、低く、穏やかに言葉を告げる。
そして音声が流れ出す。
僅かに差異はあるものの、延々と似たような内容が再生され続けている。
「――よくやった、618」
「さすがだ、618」
「殲滅しろ、618」
「大丈夫か、618」
「殲滅しろ、618」
「618、お前なら出来る」
「殲滅しろ、618」
「618、無理をするな」
「殲滅しろ、618」
「618!! 撤退しろ、618!!」
「殲滅しろ、618」
「ほんっ――本当にお前なのか? そうか――生きて、俺のもとへ帰ってきてくれたんだな……618」
「殲滅しろ、618」
「俺には|おまえ|だけだ|618」
「618|あ|い|して|いる|ぞ」
一部は音声を切り貼りして作ったらしく、口の動きと一致しない声や出鱈目なイントネーションなど奇妙な部分があったが――618にとっては、些細な問題だったのだろう。
本人や当事者以外は知らなくても――むしろ、知らない方が良い事など、世の中には数多とあるのだ。
例えば――監禁生活を語った621の証言は大凡が事実で、しかし『言わなかった部分』が存在した事と、同様に。
それで世は全て事も無しと、支障なく円滑に進行するのなら、それで良い。