ウェルカム・トゥ・エデン/ブランチズ・セルフィッシュ
時系列:エデン条約編エデン条約締結直前の襲撃、それは2大学園だけでなく企業勢力にも大打撃を与えた。
ほとんどが大怪我を追い搬送。そうでない者も敵勢力の数の多さにACを取りに自軍まで戻ることができない。
更には星外で活動している独立傭兵集団「ブランチ」率いる大量のMT部隊、及びAC。
そして極めつけは先生が凶弾に倒れ、緊急搬送されたと言う点だ。
救護騎士団と救急医学部、そしてなんとか復帰したスネイルとナイルの手引きによる星外医療技術によりなんとか一命を取り留めたが状態はあまり著しくないようだ。特に胸部が問題で本気で殺す気で撃ち込まれていたということが伝わってきたと言う。
なぜそんな事態になったのか。それは先生がヒナと共に逃げていた時にアリウスに襲われた時に遡る。
腹部に熱がこもる。
激痛。
自分は撃たれたのだ。
自身をかばって援護していたヒナが泣いているのが見える。
相手は冷酷にこちらを見ていた。
だが、倒れるわけにはいかない。そう己に奮い立たせ、激痛走る体を無理やり起こした。
次の瞬間、先生の胸部を3発の弾丸が襲う。
今度こそ倒れ伏す先生、驚愕に染まるアリウス、呆然とするヒナ。
一足早く己を取り戻したヒナが泣き叫びながら先生を揺する。それに対して止めるようにサオリが肩を掴んだ。
「待て!揺するな!出血がひどくなる可能性がある!」
「あんたたちがやったんでしょお!!」
「違う!腹部は確かに私だが胸部は本当に知らない!!」
「じゃあ誰よぉ?!!」
「俺だ」
声がした方に全員が顔を向ける。そこには男がいた。
機能的で無骨な装い胸に鴉を模したようなワッペン。そしてヘルメットと布、ゴーグルで顔を隠していた。
だがわかる。わかってしまう。
「何故標的を気遣っている?無力化がお前の仕事だろう?錠前サオリ」
「だが、これはやりすぎだ!ここまでする必要は…!」
「全ては虚しい、だったか。だったらなぜ人命を優先する?」
「おい、お前!そこまでに」
発泡。肩を掴んできたアリウス生の頭を彼は何事もないかの如く撃ち抜いた。倒れ伏したまま動かないアリウス生。サオリが思わずと言った様子で声をかける。
「おい!おい!!し、死んでる…なんで」
「ヘイロー破壊貫通弾。お前のボスとお仲間が発案して実用化された爆弾。それを俺たちの協力者が改良・発展させたものだ。並大抵のキヴォトス人なら死ぬ。実験通りの成果だな」
「実験って・・・何を・・・」
「お前自分の仲間の数すら覚えてないのか?報われないな」
「貴様ぁ!」
サオリが銃を向ける。だが焦る様子もなく彼は彼女の銃身を掴むと己の額に押し付ける。
「よく狙え」
「ッ…!!」
「どうした?全ては虚しいんだろう?一人二人殺したところで世の中は何も変わらない。ほら、射てよ」
「ぅぅ…!」
指が震える。引き金を引くことができない。息が荒くなる。目に涙が溜まる。
どうしてこうなったんだ。マダムがオールマインドと手を組んだからか?オールマインドがブランチを呼び寄せたからか?自分たちがトリニティとゲヘナに攻め込もうと決めたからか?
だがそこに彼の懐に電子音が鳴り響いた。すると彼はノズルから手を離すとその場を後にしようとする。
「おい、逃げるのか!」
「逃げてるのはお前らだろ。時間だ。次の仕事のな」
そう言いながら彼は、レイヴンはその場を後にする。だが、最後に吐き捨てた言葉が彼女らの心に食い込んだ。