アルバーナ・南東門の戦い2
「スゲェ!!ウソップ!!スゲェ〜〜!!!」
「おおセンキューベイビーサインなら後にしろ………」
「Mr.4が……!!」
ウソップ"粉砕"を食らい気絶したのか一切動かなくなったMr.4。その様子に他ならぬウソップが一番驚いているように見えるが気のせいだろう。そう思うことにしたウタはとりあえず!と切り出す
「さてと、これで3人対3人から3人対2人ね!!このまま押していこう!!」
「…正確には2人と1匹じゃないかねェ?」
「む!アンタねェ馬鹿にしないで!ウソップは鼻が長いだけでただの人間よ!!」
「私が言ったのはそこの面白変形トナカイのことだよ!この"バッ"!!!」
『お前ら2人揃って色々失礼だぞ』
「えぇいとにかく!お前もだモグラァ!!!5tの鉄槌を食らえェ!!!"ウソ〜〜〜〜ップ"」
「うわっ!!ぎゃああああ」
「"粉砕"!!!」ドオン!!!
「こっちだ」
ウソップ"粉砕"を連続で繰り出し、モグラ人間はそれを穴に入ってはかわしまた別のところに出るのを繰り返す…"モグラ塚4番街"はボールとバットが飛び交う球場から一転モグラ叩き場と化してしまった。一向に決着がつかず、業を煮やしたウソップは次なる策を繰り出していく。
「教えてやろうか…!!ここまでずいぶんとB・W社員がおれ達の手によって消されたと聞いてるハズだが…!!実は全部おれの仕業だ!!!」
「な…!!何ィ!!?」
「しかもおれには8千人の部下がいる!!!」
「本当!!?」
ウソップの次なる策、十八番の嘘で敵を萎縮させる作戦にまっさきに引っかかったのは味方のチョッパーであった。
「5トン」ひょい
「うわっ!!スゲェ!!!」
「5トン」ひょい
「うわっスゲェ!!!」
「ガタン」
「うわっス……!!!…!!?」
『オイ』
ボケ(ウソッチョ)とツッコミ(メリクリウタ)に分かれて繰り広げられた漫才劇場に待ったをかけたのは意外な男であった。
「いぃ〜〜〜〜〜〜っっ たぁ〜〜〜〜〜〜」
気絶したと思われたMr.4である。
「いや今頃かよっ!!!」
「ギャーーー5tの鉄槌くらったのにっ!!!怪物だーーー!!」
「…Mr.4 コブ1つできてねーじゃねーかい。待て待ておかしいぞ?……5tものハンマーを頭に振りおろされて無傷だと……!?」
「ぎくっ」
ミス・メリークリスマスが何かを看破しようとしたその矢先、ウソップのハンマー目がけくしゃみをしたラッスーのボールが直撃する。
「フォーー」
「あああ!!!はりぼて!!!ニセ物だったのかーっ!!!」
「っったりめーだ!!5tなんておれが持てるかァ!!!5kgでギブアップだ!!!」
「ねぇウソップ、もうちょっと頑張れない?」
「うお!!ああああああ〜〜っ!!!」
「おめー アタシをダマしたね。もう容赦しないよっ!!!土竜遁法"土竜魚"!!!」
ウソップの脅威の折りたたみ式ハンマーにしてやられたミス・メリークリスマスは怒りを露わにしまた穴に潜っていった。当然の反応である。
「またモグラ塚に入ったぞ…!!穴に気ィつけろ!!今度は何する気だ!!?」
バフッ
「!!ウソップ!!後ろ!!!」
「新しい穴を掘って出てきたんだ!!」
「地面の下はアタシにとってプールみたいなもんさ!!」
モグラ人間たるミス・メリークリスマスに対して既に開いている穴にばかり警戒してはいけない。砂上にいる限りどこからでも彼女は攻撃が可能なのだから。それに気づくことが出来なかったウソップはあっさりと背後を取られてしまった。
「"土竜" "平手撃ち"!!!」ガゴン!!!
「ぐが!!!」
「ウソップ!!!」
「Mr.4!!ラッスー!!おめーらそのツートンヘアとトナカイ人間を片づけな!!見せてやるんだ!!!"四百本猛打ノック"!!!」
「フォーーー!!」
なにやら不穏なワードと共に間髪入れずラッスーが「BOW!!BOW!!BOW!!BOW!!」と連続でボールを投球する。周囲一帯はもはやボールの海となり、この攻撃は受けきれないことを悟らせるには充分な威圧感であった。
「『ランブル』!!!"頭脳強化"!!…ウタ!!一か八かおれがあいつらの弱点を探る!!その間頼む!!!」
「分かった!!頑張ってチョッパー!!!」ガシッ!!
3分のみ7つの強化ポイントを扱える『ランブルボール』。その内の一つ"頭脳強化"によりなんとかこの状況を打破せんとするチョッパーと、それを抱え敵の攻撃をなんとか凌ごうと走り出すウタ。だがそんな2人に対しMr.4は容赦なくバットを振り抜く。
ヒュドドドドド
「ウタ!!!チョッパー!!!」
「おめーは他人の心配してる場合かよ…"土竜" "バナーナ"!!!」ヒュッ!!
「うわァ!!!」
ミス・メリークリスマスの言う通り、ウソップに他人の心配をしてる余裕は無い。連続で繰り出される"土竜バナーナ"を叫びながらなんとか躱していくと遺跡の壁の前まで追い詰められる。だが寧ろ好都合、その壁を自分が乗り越えれば砂の下に埋もれてるであろう壁にモグラ人間が激突すれば大ダメージは必至。その壁を軽快に乗り越えいざ作戦遂行!
「頭カチ割りやがれ!!!」
「"バナーナ"!!!」
バゴォン!!
「!!!?な…うーーをォおォ」
「ウソップ!!!うわ!」
ゴオゥ…ン!!
驚異的な力で吹き飛ばされた遺跡に埋もれるウソップと、それに気を取られ爆風をモロに浴びてしまうウタとチョッパー。両者共に少なくないダメージを負うも、最初に立ち上がったのはウソップの方であった。
「プハ…ゲホ!!ハァ…ハァ…はっ!?ふォ!!?……うっはっはっは 溺れて死んだかペンギンババーめ」
「モグラだつってんだろ」がしっ!!
「!!!ッハァ〜〜〜〜〜ッ!!!離せ!!!止まれスト〜ップ!!!」
「"モグラ塚ハイウェ〜〜イ"っ!!!」
「危ないっ!!前壁!!前…!!!壁ェ!!!やべで」
「"モグモグ玉砕っ"!!!」バコン!!!
「がべッ!!!」
敵の訴えなど聞く耳も持たずといった姿勢で壁に叩きつけ、大ダメージを負わされるウソップ。だがそんな中一つの希望の光が見出される。弱点を探っていたチョッパーだ。
「見えたっ!!!お前達の弱点っ!!!」
「見えたの!?それで弱点ってのは何!!?」
「こっちだウタ!!ついてきてくれ!!!」
そう言いウタを連れラッスーの前へ躍り出たチョッパーは、ウタと2人で「やァ!!たァ!!」とラッスーの顔に対して砂を浴びせかけくしゃみを誘発させようとする。狙い通りくしゃみを誘発されたラッスーの銃口を近くの穴に向けるチョッパーと誘導されるがままにくしゃみを繰り返すラッスー。一体どんな狙いが…
「ウソップ!!!モグラから離れて!!!!」
「言われなくてもそうするよ!!」
「ねぇチョッパー!これでどうなるの!?」
チョッパー以外この先どんな展開が待ち受けているか分からない状況であったが、すぐにその展開は明かされることとなる。
ボッゴオォ…ン!!!
「モグラ塚の弱点は…全部のトンネルが繋がってることだ!!!」
「!!!そういうこと!?さっすがチョッパーやるー!!!」
「………へー…そう……」ばたん!!
──────────────
チョッパーの計略によりモグラ塚を大爆発で吹き飛ばす。本当に倒れたかどうか砂塵を見つめるウタとチョッパーと、これじゃあもう生きてはいめェよと半ば願望混じりに願うウソップ。だがその願いも虚しく砂塵の先に現れたのは3つの影であった。
「フォー…」
「生きてる…(まずいぞ…R・Bの効力はもう半分もない)」
「…なんてしぶとい…!!」
「………ふ………!!!…………いやだ…!!!」
だだっ!!
「!ウソップどこ行くの!!?」
「もうイヤだ!!!殺されちまう!!!勝ち目なんてあるわきゃねェよあんな化け物達…!!!」
「だめだよ!!逃げられやしないんだコイツらからは!!!」
あの大爆発をモロに受けてなお立ち塞がる敵を前にしてウソップは涙ながらの逃走を図る。だがそんなことを敵が許すはずもなく…
「あいつらの言う通りさ…!!!小癪なマネしやがっておめーら…」ガチッ…
『ウソップ!!!』
「ここまでやっといて逃げるなんてのはネエだろう!?」
「うわ!!うわああああああ」
ミス・メリークリスマスに捕まりまたも激しい攻撃が加えられるかと思ったその瞬間、モグラ人間の口から放たれた次の言葉にはその場が凍りついた。
「船長も貧弱なら船員も腰抜けってわけかい…!!」
「!………船長……!?…ルフィが何だって………!?」
「"麦わらのルフィ"なら………もうとうに殺されちまったさ。Mr.0の手でな………!!反乱も始まったし…まァ相手が悪かったって事だ」
「ルフィが………死んだ!?」
「え………ルフィが…そんな……うそ……」
船長ルフィの死亡。事実はどうであれまだ船出して日の浅いチョッパーと10年以上連れ添ってここまで来たウタの2人を動揺させるには充分な情報であった。だがそれに食ってかかる1人の男がいた。ウソップである。
「……………!?………デ……!!デタラメ言うんじゃねェよモグラババァ!!!」
「あん?」
「あいつが!!!死ぬわけねェだろうが!!!あんな砂ワニ野郎に敗けるわけねェ!!!!」
「………ウソップ…」
「……わけねェってのは何か根拠があって言うセリフだと思うがね」
「あいつはいずれ"海賊王"になる男だ!!!だからこんなとこでくたばるわけねェっつってんだ!!!」
海賊王。この広い海を制覇せんとする者達全ての夢の果て。そんな"大それた"夢を持つ死んだ男を、絶望を前にして語ったその姿にMr.4ペアは思わず吹き出してしまった。
「……プハッ!!!ア〜〜〜〜〜ッハハハハハハハハ!!!か…"海賊王"!?」
「フ…!!フォ〜フォ〜フォ〜」
「ア〜〜ッハッハ"海クオ"!!!ハハハハハ!!!"カクオ" "カオ" "カ"ッ!!!ハハハ 笑わせんじゃねーやね!!!」
「フォ〜〜フォ〜〜フォ〜〜フォ〜〜」
「そんなクソみてェな話はこの"偉大なる航路"じゃ2度と口にしねェこった!!…まったく死んでよかったよそんな身の程を知らねェバカな野郎はよ!!"バッ"!!!この"バッ"!!!ア〜〜〜〜〜ッハッハハハハ」
嘲り、笑い、貶める。そんな傍若無人な発言の数々にその場にいる誰もが怒りを覚えたその時、一つ握り拳を作った男・ウソップは2人の仲間に話しかける。
「いいかウタ…チョッパー!男には!!!」
「ア〜〜〜ハハハハハハハハ!!そろそろ死にな長っ鼻!!!"モグラ塚ハイウェイ"〜〜!!!」
「あ…ああっ!!!アアッ…ア…ア〜〜〜ッ!!!………た!!!…たたとえ…!!!しぬし…ぬ死ぬ程……!!!おっかねェ敵でもよ…!!」
「くたばりなァ!!!"モグモグ玉砕"!!!!」ゴウ!!
「…………ば……ばぼえ…オーペエ…勝ち目のねェ…相手だろ…う…ともよ…!!!」
「もうやめて!!ウソップが死んじゃう!!!」
「全員死ぬんだよ!!Mr.4!!構えな"4tバット"!!!」
「フォーー!!」
「行くよ"モグラ塚"…!!!」
"4tバット"の重さに加え"モグラ塚ハイウェイ"による加速が合わさり極悪非道な破壊力をもってウソップの頭目がけて放たれた渾身のフルスイング。Mr.4ペアのこの一撃を食らって倒れなかった者は一人としていない。そんな攻撃をウソップに与えた2人にチョッパーは激怒する。
「この野郎お前らァ!!!!」
だがその時、その場にいる全員の目に映ったのは信じ難い光景であった。
「……男にゃあ!!!どうしても…戦いを避けちゃならねェ時がある………!!!」
「!!!な…!!!お前まだ………!!!!」
「バカな…!!4tのバットで頭を打ち抜かれて……!!生きてられる筈がねー…!!ましてや…!!立ち上がれる筈がねェ!!!今度はどんなトリック使いやがったんだ!!」
「ルフィは死なねェ…あいつはいずれ"海賊王"にきっとなるから…そいづだげは笑わせね"ェ!!!!」
「……!!そう…だよね……うん!!そうだ!!その通りだよウソップ!!!」
完全に心を折られかけていたウタであったが、ウソップの見せた気概と彼が作ってくれた武器を手に再び立ち上がる。ルフィは"海賊王"になる男!こんなとこでくたばるわけがない!!
「もう一度だMr.4!!」
「フォー!!!」
「そんなことさせるか!!!見せてやるとっておきの変形点!!"角強化"」ザッザッ
ウタと共にとっておきの"角強化"により覚悟を決め今か今かと走り出さんとするチョッパー。それを見たウソップはある奇策を思いつく。
「どれだけ意気込んでも!!!所詮その体何もできめェ!!!」ボココッ!!!
「!チョッパー!!!おれのうしろにつけ!!!」
「わかった!!」
「構えなMr.4!!!」
「フォー!!!」
「行くよ!"モグラ塚"」
またも4tバットが振り抜かれるかと思われたその時、狙撃用にゴーグルをかけたウソップがパチンコのスリングを引く。
「くらえ必殺…"煙星"!!!」
「フォー!?フォ?フォ?」
「頼んだチョッパー!!!」スポポ!!
「うん!!!」
「ぬ!!?あのガキ!!靴を脱いで逃げやがったね!!!うわっ何だ!!?」
"モグラ塚ハイウェイ"から逃れたウソップを確認したミス・メリークリスマスの隙をつき巨大化した角に捕え直進するチョッパー。その先には"煙星"で燻し視界を奪われた4番バッターが待ち受ける。それ見たことかと鼻をつまみ声を変化させながらウソップは叫ぶ。
「"モグラ塚4番交差点"!!!」
「!!?待ちなMr.4!!アタシだよ!!!」
「フォー」
「……フォ?」
視界を奪われ聴覚も騙された4番バッターが打ち抜いたのは文句を垂れながらもここまで彼を支えてきた名アシスタント、ミス・メリークリスマスその人であった。
「フッフッフッ!!まさか味方を打ち抜くだなんてって顔してるねアンタ!!打率10割も崩れたんだし…やめなよ"4番バッター"」
「フォー…!!ゆ〜〜る〜〜さ〜〜な〜〜い〜〜ぞ〜〜!!」
「許さない?だったらここから逆転して見せてよ!!4番なんでしょ!?」
「ん〜〜…!!ラぁ〜〜スぅ〜〜!!!」
味方を打ち抜いてしまった挙句敵から散々に煽られたMr.4は愛銃である犬の名を呼びボールを要求する。ラッスーもそれに応えすぐにボールを投球する。
カッ……キィン!!!
ここ一番の景気よく放たれた打球は生意気なツートンヘア目がけて飛んでいく。対するウタはその場を微動だにせず待ち構え、飛んできた豪速球を打ち返す姿勢を取り始める。
「さァ来なさい!!こんなヘナチョコ打球…捕球するまでもなく跳ねっ返してやるから!!!」
そう言い放ち、持っている槍をバットに見立て豪速球目がけて振り抜く。
カッ…!!
「ウッ…!!重い……!!でも…こんな…ものォ……!!!」
その時、彼女の脳裏に浮かんだのは幼き頃の楽しかった日々、幼なじみと共に誓い合った"新時代"の夢、その夢こそが…私の心臓!!
「ルフィ…!!!私はこんなものに敗けやしないから…!!だからアンタも!敗けんじゃないぞ!!!
だって"新時代"は………!!!この"未来"だ!!!!」
キィィン!!!!
4番バッターの放った打球は、見た目はか細い歌姫の気合のこもった渾身のフルスイングにより打ち返され、投球主であるラッスーの元へ刻々と迫る爆発のタイムリミットを知らせながら向かっていく。
「バウ?」チッチッチッ…
ドゥン!!!
ボールの大爆発が直撃しミス・メリークリスマス同様吹き飛ばされる犬銃・ラッスー。これで残るは4番バッター、Mr.4を残すのみとなった。
「よし!!ピッチャーアウト!!」
「おいウタお前!野球だったら直接選手を狙ってボールを当てにいくのはルール違反もいいとこだぞ!!?」
「お〜〜〜の〜〜〜れ〜〜〜!!!」
「何言ってるの!?私は海賊よ!!ルールも何もないんだから!!!」
「へっ!!それもそうか!!おいこっち向けヘボバッター!!!おれ達が新しいピッチャーだ!!打てるもんなら打ってみやがれ!!!"必殺ウソッチョ"!!!」
カッ…!!
「フォー…!!!フォ…!フォ……!!?」
パアァン!!!
ウソップとチョッパーの連携技を打ち返そうとしたMr.4であったが、ここまでの連続打席による疲労からか打ち損じるばかりか、自慢の4tバットを弾かれてしまった。そんな丸裸となった4番バッターに突っ込むのは先程見事な打球を放ったウタである。
「アシスタントも…ピッチャーもボールも…さらにはバットまで失っちゃあ…!!もうバッターすら名乗れない木偶の坊!!!…これで終わらせる!!!
"急速な追奏曲"(プレスト・カノン)!!!!」
踏み込みの勢いと無意識下に放ったウタウタのバフ効果により凄まじい威力と化した突撃攻撃はMr.4の巨体を大きく吹き飛ばしていき、遺跡の柱へと叩きつける。
「ウソップー!ウソップ!!しっかりして!!アンタが死んだら意味ないんだよ!!」
「い………!!医者ぁーー!!」
「おめェだろ!!」