イタズラ×2
ベリーメロンエクレシアには最近悩んでいることがある。
運命的な出会いをした少年アルバスと、大戦の終末に失踪したフルルドリスを探す旅に出て半月は経過しただろうか。
二人きりの旅……というわけではなく、スプリガンズのロッキーと鉄獣戦線から贈られたメルクーリエ、そしてこの旅の羅針盤である317番目の聖女も共にいる。
時には野宿をしたり、行き着いた国の宿に止まったり、開かれし世界を歩むのは二人にとってとても有意義なものだった。
ただ男女の旅ともなれば、そういうことも起こり得るわけで……
今夜は野宿。パチパチと静かに弾ける焚き火の音。辺りには穏やかな夜闇が広がっている。
そばのテントの中では寒さを凌ぐようにアルバスとエクレシアが横になっていた。
(ぁっ……)
そんなテントの中で動くものの気配を感じ、狸寝入りを決め込むエクレシア。
気配の正体アルバスは、エクレシアの眠りを確かめるように優しく肩に触れていく。
そうして彼はそのままゆっくりと、エクレシアの胸元に手を這わし始めたのだ。
(アルバス君……今日も興奮してる……)
元々距離は近かった。エクレシアも気にしなかったし、アルバスも無垢なものだった。
だが改めて互いの気持ちを自覚し、通じ合ってみればより男女の意識は強くなってしまう。
そこから続く次の一歩。それに踏み出せないままで、小さな仲間達もいるとはいえ二人で旅に出たのだ。
(鼻息が当たって……)
背後から密着したアルバスはエクレシアの項に鼻先を押し付けていく。
その間に腕は簡素なエクレシアの寝間着の隙間から潜り込み、胸へと伸びた。
(ちょっと、肌を見せつけたかも……)
最初は寝惚けて誤って触れただけだった……と思う。エクレシアもアルバスに触られるのは嫌ではなく、寝たふりをしたままその日を終えたのだ。
そこからアルバスは夜になると胸に触れてくるようになった。
少しずつ、積極的に。始めの頃は服の上から少し揉むのが精一杯。
それがなんともむず痒く感じてエクレシアは、寝間着を薄いシャツへと変えたのだ。ちょっと最近暑いからと適当に言って。
その夜からは寝間着の下にアルバスの手は潜り込み始めた。下着の上から揉み込むように。
なんとなく徐々に触り方が上手くなっている気がして、エクレシアも止めるに止められなくなってしまった。
そして、今は
「んぅ……」
アルバスの指先が乳房の先端を捉え、エクレシアは小さく呻く。
下着を外してみた結果は、よりアルバスを煽ることに繋がった。
項に当たる熱い鼻息から彼の興奮が手に取るようにわかる。尻に当たる硬くて熱いモノが何かもわからないほどエクレシアは幼くもない。
互いのちょっとしたイタズラが、その一線に近付きつつつあるのがわかる。
「んんぅ……」
寝言に驚いたのかアルバスが少し離れた隙に、エクレシアはゆっくりと仰向け寝返りをうつ。
顔が真っ赤になりそうになるがどうにか堪え、アルバスに乱された寝間着を見せつける。
意識しあってから背を向けあって眠るようになったのもあり、いつもアルバスは背中からエクレシアの胸に触れていた。故に見たことはないのだろう。
ほんのりと明かりに照らされるエクレシアの白い腹。先程まで自分の手が潜り込んでいた乱れた寝間着の隙間
反射的に手が伸びて、ゆっくり捲られていく。
「…………っ」
震える手から「駄目だ、いけない!」と彼の理性が叫んでいるのだろう。されど目先の、それを我慢することはできなかったようだ。
やがて曝け出された形の良い乳房に、アルバスの喉がゴクリと鳴るのが聞こえる。
(アルバス君に、見られてる……!)
自分でそうなるように誘導したとはいえ、エクレシアも内心は混乱の渦だった。
数分の沈黙からアルバスの手がエクレシアの乳房に触れていく。
目で見ながら触るのは今回が初めてなのだろう。ふにょふにょと柔らかく歪む乳房にアルバスはすっかり夢中になっている。
(あっ……)
桜色の可愛らしい乳首をアルバスの指が軽く摘む。それに少しだけ声が出そうになるが、エクレシアはなんとか抑えた。
少しずつ大胆にアルバスは胸を揉み始め、その手つきもより積極的になっていく。
「ん……ふぅ……♡」
揉むだけだった手が、今では乳首を弄りながら触ってきている。弾くような仕草で指先が掠るたびにエクレシアは声が出そうになり、狸寝入りも厳しくなってきていた。
(あ……鼻息が当たって――)
次の瞬間、エクレシアは乳房はアルバスに吸い付かれていた。
生温かい唾液にゾクリと身を震わせ、必死に口を引き結ぶ。
「ん……ぁ……くぅ……♡」
(アルバス君が、赤ちゃんみたいに……胸を……)
唾液を塗りたくるように舌が蠢いて、エクレシアの乳首を撫でていく。
硬くなってきたそれに興奮したらしい彼は本能に従って吸い立て始めた。
空いた方を責める指も止められず、エクレシアも自然と太ももを擦り合わせてしまう。
(だめ……これ以上は声が……)
眠ったふりはもう限界だった。
アルバスの歯が乳首を軽く当たると同時に、エクレシアはとうとう達してしまう。
「あっっっ♡」
「!?」
堪えきれずに開いた口から艶めかしい声が溢れる。
アルバスはハッとした様子で飛び引くと、エクレシアの顔を見た。
誤魔化すことがもうできない諦めたエクレシアは徐ろに目を開けて、気まずそうに視線を逸らしてしまう。
「え、エクレシアっ!えっと、これはその……………………ごめん」
慌てて弁解しようとしたアルバスだったが、勝手に触っていたことの後ろめたさに抗えず素直に謝ってくる。
どこで覚えてきたのか、座ったまま頭を下げてくるのをエクレシアは慌てて止めた。
「い、いえ……わたしも、その悪くて……最初から、その……」
実は最初から起きていたこと。
むしろだんだん煽るようなことをしていたこと。
それを言おうとするが急激に恥ずかしくなってくる。とんでもなくはしたないことをしていたのだと。
「もしかして、ずっと知っていたのか……」
察したアルバスの質問に顔を赤くしたまま頷くエクレシア。
もはや顔を見ることもできないほど恥ずかしくて仕方がない。
それはあちらにも伝染し、互いの顔を見ることが出来なかった。
「とりあえず今後はもうしないから……」
気不味くなったところでそう締め括ろうとするアルバス。
エクレシアが気付いたときにはその袖を引いていた。
困惑するアルバスに目を泳がせつつ口を開いて。
「そ、その、ええと……さ、最後まで……しませんか」
アルバスがギョッと目を見開いていた。
エクレシアは内心バクバクとさせながらも、彼に自ら抱き着いていく。
互いの心音の激しさを伝え合わせれば、茹でダコのように二人は顔を赤くした。
まだ夜は長く、ロッキーもメルクーリエも317番目の聖女も起きる気配はない。
もはや二人を止めるものはなく、その影が一つに重なるまでそうかからなかった。