アビドス廃校対策委員会は辿り着く

アビドス廃校対策委員会は辿り着く


砂に埋もれた自治区、アビドス

その中をアビドス廃校対策委員会の5人は走り抜けていた

みれば全員が制服も僅かに残る程度に破れ、全身が何らかの体液にまみれた、無事とは言えない姿

その中でも特に顕著なのは

「ん…ホシノ先輩、大丈夫?その…」

「うへぇ~…これはアビドスナンバーワンナイスバディはおじさんで決まりだねえ~」

ホシノの胸はノノミのそれすら大きく上回るほどに肥大化し、一歩走るだけでも大きく揺れこれまでとは異なる身体のバランスに四苦八苦してしまう


ゲヘナへの偵察からアヤネが帰還したのはつい先刻のこと

しかしアヤネは既にゲヘナを発端とする異形達によって犯され、それらをアビドスへと運んでしまう

突然の不意打ちにより捕らえられ好き放題されてしまう5人であったが荒れ狂う快楽の中でもホシノは冷静さを保ち続けていた

心に反して快楽で跳ね回る身体を制御し、ほんの僅かずつ移動する事で愛用する武器を掴み取り反撃

4人を救出しここまで走り抜けて来たのだ

だがホシノの持つ膨大な神秘を前にした異形達が施した乳房の改造は防ぎようもなく、全員を救出する頃には体のサイズに対してアンバランスなほどに肥大化した胸を抱える事となってしまった


アビドス高校へと侵入した異形達を上手く撒き走り続けるホシノは思案する

アビドスから徒歩で安全に脱出するルートは複数存在する

だが、しかし

「も、もう少し…です…」

「アヤネ、大丈夫、無理に喋らないで」

シロコに背負われているアヤネ

彼女はゲヘナからアビドスまでの過程でひたすらに犯しぬかれていたことで、歩くこともままならず今はシロコの背で休むしか無い状態だ

アビドスから徒歩で脱出可能なルートはそのどれもがいくつかの危険性がある場所

ホシノ一人であれば、仮にこの身体であっても逃走は容易であるが―可愛い後輩たちと共にとなれば話は別だ

5人の大所帯では隠れて進むことも難しく、かといって強行突破を図るにはアヤネを抱えたままでは難しい


よって、この体調の中でも必死に偵察ドローンを飛ばしたアヤネが得た情報で行き先が決定された

目指すは、駅

偵察ドローンにより駅には電車が停車していることを確認

電気が未だ動いていることも確認できたため、それを使っての脱出が選ばれた事は自然な流れであった

そうして走り続け、遂に駅の改札へとたどり着く

あとはホームを走り抜けて電車に駆け込み、発車させる―はずだった


「みんな待って!」

真っ先に異変に気付いたのはホシノだった

ホシノの静止に全員が応じる、ホシノの指示を信じているからだ

そして彼女達も気付く

今ホームに止まっている車両、そこには明らかな異変がある

窓が黒いのだ

中身が見えない、いや

「電車の、中に…あいつらが詰まってるの!?」

セリカは思わず素っ頓狂な声を上げてしまう

そう、窓が真っ黒だったのは大量の異形が隙間も無く詰まっていたからなのだ


「逃げるよみんな、走って!!」

異常に気付けば行動は早い

すぐさま反転し―

「…う゛ぇ?」

ホシノは、走れなかった


痛い、気持ちいい、痛い、気持ちい、痛い?気持ち、良い?

気持ち悪い!

ホシノは何が起こっているかわからない

だが、なにか致命的な事が起こっている

腹の中で何かが蠢いている

そして今、それが這い出てこようとしている

まさか、まさか

あの時体の中に入り込まれていた?

「あっ…ぐ…み、みんな逃げて…走って…走れェ!!!」

ただただ叫ぶ

手遅れにならない為に

だが声を出すために力を入れたからか


ずるり、と

本来は排泄を行うだけの穴から、異形が姿を現した

ホシノの、強大な神秘を吸収した、ホルスの異形が


「―ぅああああ!!!」

快楽、絶頂、噴き出す母乳、その中でありながらもホシノは愛銃を『それ』に向けて構える

こいつは存在してはならない、ここで消さなければならない!

だが


「…あ?」

その無防備な状態を見逃すほどそれらは甘くは無い

普段ならすぐに回避できたであろう『それ』も、この極限の状態、そしてアンバランスに肥大化した胸というこの身体では察知する事すらできない

電車内から現れた無数の異形達の触手がホシノに絡みつき車内へと引きづりこんだのは、ホシノが呆けた顔をしたのと同時だった


そしてその光景を四人は唖然と見守るしか無かった

敬愛する先輩を、わけもわからず置いて逃げられるような彼女達ではない

それが致命的となる


這い出たホルスの異形はすぐさま姿勢を整えると、ノノミへと突進する

だがノノミもまた瞬時に反応し愛銃を放つ

それを認識するや否や異形は触手を柱へ伸ばし空中で方向転換

その射線から逃れようとする

ノノミもまた逃すまいと愛銃を異形へと向き直そうとするが

「あっ!」

その手が止まる

射線上には同じように銃を構えるセリカの姿

異形はノノミとセリカの間を飛び、そして

「んぐ!?」

ほんの一瞬で伸ばした触手をノノミの首に巻き付け、そのまま引き戻し顔へと張り付く

更にその至近距離で生成した体液をノノミの口内へとぶちまける

「~!?!?!?」

最初に捕まった時とは比にならないほど強力な媚毒

ノノミの股座からは異形達の体液とは違う、別の液体が勢いよく噴出し、身体はがくがくと震え、膝を着き、そのまま倒れ―


―倒れ伏す前に、電車内から現れた無数の異形達が群がっていく

ノノミは一瞬のうちに異形の集団に飲み込まれ、その姿も見えなくなる

だがその前にホルスの異形はすぐさま飛び立ち、真っ直ぐにセリカへと向かう

「く、来るなぁ!」

撃つ、撃つ、撃つ、当たらない、なんで!?

距離が近づく

触手が伸びる―

―そして横合いからの射撃で異形は吹き飛んでいく


シロコだ

愛銃を構え、横合いから射撃したのだ

「っ!あ、ありが―」

「走ってっ!上!!」

安心する間もなく焦ったシロコの声に、しかし悩むより先に足を動かそうとする

だが、遅かった


セリカの頭上に現れたのは大量の異形達の塊

「―ひっ!?」

それが重力に乗ってセリカを巻き込み、取り込み、地面へと落ちる

一瞬、セリカの叫び声が響くもそれはすぐに異形達に包まれ消えていった


「っ…!」

こうなってしまえばいったん撤退し体制を立て直すしかない

シロコはすぐにアヤネを背負いなおそうとし―


後頭部への衝撃で、視界は暗転した



……

………


ずる

ずる

ずる


シロコはほんの数瞬で再び意識を取り戻す

だが身体が動かない


ずる

ずる

ずる


自分の足首を、あのホルスの異形が掴み引きずっている


ずる

ずる

ずる


あの異形が先ほど自分の気を失わせたのだと理解するが、だからといって今更どうしようもない


ずる

ずる

ずる


見れば、気を失ったままのアヤネも同じように引きずられ


ずるり


異形達が詰まった電車内へと、取り込まれていった


「ぅ、ぁ…!」

呂律が回らない

麻痺毒か何かか

それでも逃げなけば


必死に手を、足を、身体を、動け、動け、動け、動かないと、あの中に―!


ずる

ずる

ずる




ずるり





電車は、ゆっくりと動き出した

車両を動かす人間がいるわけではない

電気で動いているわけでも無い

内部に隙間なく詰まった異形達が、動作の全てを代替して動き始めた


電車は進む

キヴォトスの各地へと


最高の神秘を吸収した異形達を、振り撒きながら




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