わんこvs骨
餓者髑髏さんに手伝ってもらいました!時代は何時かも分からない。
妖共が蔓延る世が今の生きる現世。
誰も生きる世は負で溢れ、名と富だけ上がる都。
飢えと死の声が上がる村々。
妖が空を舞い、飛び、歩き、そして生きる。
そんな世の1つの出来事。
「お主、何年生きてきた?」
狼の様なそうでない様な。巨体を持つ呪力の塊に、身を隠す様に歩く髑髏は振り返り姿を見た。
「...貴様こそ誰ぞ。前触れなく話しかけおって、名を名乗るならば己から名乗って見せよ」
「名だと?別にいいではないか!」
舌舐めずりをする下品とも言える所業に、髑髏は密かに退がる。出来れば何もしたくは無い。自由に歩き回る今があれば良い。飢えもあれど満ちる事も無い。ならば悠久の時を過ごすだけ。
「ならば吾は用は無い。疾くに消えよ、雑種」
そう言い放ち、また道に戻ろうとする髑髏。其れを静かに見るは狼。飢えて飢えて満たされない、『待て』の出来ない駄犬。
「嫌に決まってるだろう!!」
飛び出した6m程の巨体を駆使して、髑髏の右腕を奪う。着衣ごと喰らって奪った骨を丸呑みし、ペロリと舌を曝ける。そして感じたのは、腹を満たす今までに無い程の呪力。
そして、餓狼は叫んだ。
「なんだこれ...?うまい、うまい!美味いぞ!!
お主、何モノだぁ?」
その目は狂気。
その気は躍起。
湧き上がる感情は歓喜。
餓狼は漸く見つけたと感じた。己を満たす存在を。腹の虫を抑える“餌”を。
其れを静かに見つめるのは、穴の空いた眼。
「此方が下がろうとすれば寄りおって...貴様に名乗る名等無い。腕を喰らったのであれば尚更の事。」
髑髏は左腕を一振りする。その瞬間、餓狼の身体が何メートルも吹き飛ばされた。道を挟んで田の向こう。水をも越えてその向こう。
投げ飛ばされた餓狼と対比に、淡々としている髑髏の妖。圧倒的な強者の風格。自分と同等、それ以上の力を持つ同胞。
餓狼は、喜んでいた。
「ハハ、ハハハッ!いいぞ、いいぞ!ならば我はお主を喰う!必ず喰らってやるぞ!!!」
「躾のならん駄犬か此奴...意味が無いと言うのも知らぬか」
「カタカタうるさい、お主を喰って、我は飢えを満たす。故に喰らうだけだ!」
「はぁ。仕方あるまい。少しは手解きをせんとな。」
臨戦体制の両者が静かに構える。
鬨の声は何方に上がるか。
その様な物知らぬが仏。
妖の事等、人間に分かる筈も無いのだから。