わからせたい
酷い事します。凪はそう言った。そう言って押し倒して来た。押し倒してきたまま上で固まってしまっている。
「凪?」
「……えーと、酷い事します」
「どーぞ?」
何度も言わずとも良いのに。押し倒された時とてもドキドキしたし今もしている。好きな相手に押し倒されて冷静になれるわけがない。
酷い事って何されちゃうんだろ、なんて期待にも似た興奮をしているというのに凪は相変わらず固まっている。
凪とずっといたからわかるがこれは困っている顔だ。とはいえ未だチンポは元気なままのようだし御影とそういうことをしたくないというわけではないはず。
(もしかして手順がわかってない……?)
御影の予想は当たらずとも遠からずだ。凪とてセックスのことくらいはわかっており好きな相手がいるから人並みに興味も知識もある。けれど実際に好きな相手とそういう状況になって緊張で何をしたら良いのかわからないのだ。
「なーぎ、とりあえずキスする?」
「……する」
困ったような凪に提案すればこくりと頷かれ、その凪の幼い仕草に笑いそうになってしまうからそれを誤魔化すためにすぐにキスをした。
こんなにも不慣れなら凪はきっと経験がないのだろう。御影だって経験はないが今の凪に比べればマシだ。それにキスなら主導権が奪えることはさっき確信出来ている。
初めてのキスがあんながっつりとしかも人前で、なんて羞恥心があったりなかったりしたがそれ以上にメリットがあると思ったから御影はしたのだ。
少なくともあれだけ見せつければ凪が御影の物だと理解し恋愛的な意味で凪とどうこうなろうなんて奴はいない。
一番警戒すべき潔には見せつけられたし、今後誰かしら凪に横恋慕したって千切と國神がそれに気づけばやんわり二人の関係を知らせるはずだ。
サッカーのパートナーの座も恋人としてのパートナーとしての座も誰にも渡すつもりはない。サッカーで自分を選ばなかった凪に怒り恨みこそしたがすぐにまた御影を選ばせれば良いのだ。
少なくとも恋愛的なパートナーとしては御影を凪は選んだ。それはとても気分がいい。例えそれがキスした勢いの性欲で判断が鈍ったからだとしても既成事実さえ作ってしまえば後はどうとでもできる。
「……レオ、考え事?」
「お前の事だよ」
それよりほら、とねだればまた唇が重なる。何をしたら良いかと緊張している凪にとってどうぞと差し出され許されるとわかっているキスは躊躇う理由がない。何度も何度もキスを繰り返しているうちに凪の緊張も溶けてきたのかスウェット越しに肌に触れてくる。
そこは服の中に手を入れてくるところじゃないのか、なんて御影が思おうが凪には伝わらず表面を撫でていくだけだ。
「……ふふ」
「何?」
「触り方がくすぐったい。もっとガッと触れよ」
「加減間違えたら折れちゃう」
「折れねーわ」
いや折れるだろうか。御影は決して華奢でも弱くもないが、それを補って余りある凪の力の強さは知っている。けれども凪が本当に御影を害そうとするわけがない。もし多少でも怪我したなら風呂場の凪のように折れたと言い張って責任を取ってもらうのもいいかもしれない。
「確認だけど、お前は俺のこと抱きたいの?」
「うん、抱きたい。良い?」
「良いよ」
自分と凪なら凪が抱く方だろうかとはぼんやり考えていた。無論、凪が抱かれたいと言うなら抱く気ではあったが凪が抱きたいと言うなら御影も異論はない。
「やり方わかる?」
「わかるよ。任せて」
凪は相変わらず緊張した様子で恐る恐ると触れてくる。本当に任せて大丈夫なのだろうか。
「酷い事するんだろ、凪くん?」
首へと手を回し未だ元気なままの凪のチンポに腰を浮かせて御影が自分のチンポを擦り付ける。風呂場でチラと見た時も思ったが立派なそれはズボン越しでもを熱さも硬さも感じる。ひゅっと息を呑むような声が凪がしたけれどうっかり達したとかそういうことにはならなかったらしい。
「ほらさっさとやろうぜ」
「……本当に酷い事するよ」
「だからしていいってば」
ぐりぐりと股間を押し付けていれば腰を押さえつけられ乱暴にズボンを剥ぎ取られた。とうとう酷い事をされるらしい。ドキドキと御影はそれを待った。
あの時は結局酷いことはされなかった。丁寧に触られ経験の無さから下手で快楽という物もなかったけれど、凪の初めての相手としてそういう事ができたという満足感でいっぱいで十分だった。
「レオ、考え事?」
「っひゃ♡ ま、まって♡ ちが、ぁ♡ ちがうから♡♡♡ お、おまえのことだからぁ♡♡♡」
「本当に?」
「ほんと♡♡ っア、んん♡♡ ほんとぉ♡♡♡」
なら良いけど、なんて凪が腰を止めることもなく言う。前立腺を潰すような動きでいじめられアッ♡アッ♡と媚びたような声が上がってしまう御影を凪が観察するように見てくるから恥ずかしさすらあるがそれもすぐ快楽でよくわからなくなる。
初めて抱かれたときから休暇の間に何回か凪とセックスはしたし凪がだんだん上手くなってるとは思っていた。
そして、ネオエゴリーグが始まってから暫くはセックスなんて一切しておらず、ドイツ戦も終わって気分が盛り上がり久しぶりにヤったらこれだ。
最初から何かおかしいと思ってはいた。触られるとどこも気持ちよくて挿入前に何回かイかされたが、でもそれは気分が盛り上がっているからで凪に必要と言われた嬉しさもあってのことかと思っていた。
けれどやっぱりおかしい。挿入された時、気持ち良さより違和感が多いはずなのに今日は散々慣れされたからチンポを入れられただけで気持ちよくてイきそうだった。腹の中を突かれたって喘ぎ声も快楽も何もコントロールできていたはずなのに、今はどうしようもない。
「やっぱり集中してないよね?」
「してる♡♡♡ してるから♡♡♡」
集中したらやばい、と感じて気をそらしていても凪にはすぐバレてしまう。少し不機嫌そうな凪もかっこいいな♡ なんて浮ついた感想も持っていたらキスされた。キスは好き。主導権だって取り返せるはず。
そう思って御影が必死に舌を伸ばし絡ませるけれど、ばちゅばちゅと腹の中を好きにされるから上手く舌も動かせず主導権が取れない。舌も腹の中も完全に凪の好きにされてしまっている。
「レオは俺のでしょ」
「ん♡♡♡ うん♡♡♡ おれはなぎの♡♡♡」
「ずっと一緒にいてね」
「っあん♡♡♡ んん♡♡♡ やくそくする♡♡♡ ッア、ん♡♡♡」
「うん、約束」
ぎゅうと抱きしめられる。視線が合えばキスされて、体がぴったりくっついて口の中も腹の中も凪とどろどろのぐちゃぐちゃに混ざりあって一つになったみたいだな、なんて思う。
先程までの激しさもなく奥をぐりぐりと擦られているのに先程までよりもずっと何かがダメな気がする。
「な、なぎ♡ なぎ……♡♡♡ それだめ♡♡♡」
「何が?」
「だめ♡♡ ぐりぐりすんのやめて♡♡♡」
「気持よくない?」
「き、きもちぃから……っ♡♡♡」
「ならいいじゃん」
だめって言ってるのに。一番奥のはずなのにもっと奥までほしいだとかいけそうだとか思ってしまうから、だめだと御影は凪に訴えかけるのにやめてくれない。
「ねぇレオ、酷い事していい?」
今してるじゃん、と訴えたいけれど凪の言う酷い事への興味から気づけば頷いてしまった。ぐりぐりと奥に押し付けられていたチンポがトントンとノックするように叩いてくる。
あ、だめ、何か開く、だめ。
「なぁぎっ♡♡♡ ゃ、やめて♡♡♡ それなんかぁ、ーーーーッあ゛ァあ♡♡♡♡♡
「っ♡♡♡ ぁ、あー、やば♡」
「は、ぇ♡? ぁん♡♡♡ ぅう♡♡♡ な、なに……♡♡♡」
「レオ、きもちーね」
「っん♡♡♡ ふっ♡♡♡ ぇあ、こ、こわい♡♡♡」
「だいじょーぶだから、ね?」
未知の感覚。痛いのか気持ちいいのか思考が弾けて止まらない。ダメなところに入った。今まで入った頃のないところ。入るわけがないところ。だから怖いはずなのに凪に大丈夫と言われればそうなのかもしれないとも思考がまとまらない頭は思うのだ。
でもそれも数秒のことで凪が抽挿を再開すればまた気持ちよさと怖さでわけがわからなくなる。恐らく何回もイっている。けれど出した感覚はない。
「レオ、かわいい♡ だいすき♡」
「ん♡♡♡ ぉれも♡♡♡ おれもすき♡♡♡」
果てさて本当に言えているのかわからないけれど凪が満足そうなので伝わってはいるはず。凪に好き好き言われるのは気分がいい。そう言えば好きと言うのは初めてかもしれない。でもきっともうバレているだろうから構わない。好き好きと繰り返しながらぎゅうっと目の前の体に抱きついた。
気持ち良すぎてわけがわからなくて怖いけれど凪がいる。ならば凪に責任を取ってもらえばいい。凪が好きって言いながら酷いことしたせいでこうなってるのだ。凪とは一緒にいるという約束もしたし何の問題もない。だから快楽に身を任せることにした。
※凪くんは天才なのでわりかし早期に上手くなってましたが御影が甘やかしてくれるので不慣れな童貞ムーブを続けてました
※今回独り立ちしようとしたためにわからせすることにしました
※御影は事後、これが癖になったらやばいから今後はやんないと言いましたが、余裕がある時はメスガキムーブするので凪くんがわからせな気分の時はヤられます
※だって普段のレオは恥ずかしがって好きって言ってくれないし……と犯人は供述しており