ようこそデビルハンター部へ

ようこそデビルハンター部へ


デビルハンター部の入部試験を終えてから、アサは体育の授業に身が入るようになった。2人と共にデビルハンター部員として悪魔と戦っていくなら、身体を鍛えられる機会があれば、できるだけ鍛えておきたい。

「なんか、急にやる気出してない?」

ぼそっと聞こえてきた声は、アサのことを言っているのだろうか?急にやる気を出した所で、元々スポーツをやっていたクラスメイトには敵わない。

体育で活躍する気などない、あくまで部活のついで。鍛錬の手を抜いたら大怪我や、場合によってはそれ以上の危機に繋がってしまうから。

待ち侘びた約束の放課後がやってきて、アサはユウコ達と体育館の一角に集まった。他にも生徒は集まっていたが、入部試験の時から数は明らかに減っている。

アサ達に少し遅れて、ハルカが取り巻きを連れて現れた。

「遅れてすまない。既に知っている者もいるだろうが、僕がデビルハンター部の部長兼生徒会長の伊勢海ハルカだ」

ハルカは入部試験において実力で悪魔を駆除したかどうか、裏付けをとるために今日まで遅れたと、アサ達に理解を求めた。

「今回、不正は確認できなかったが、辞退を申し出たチーム、条件を達成できなかったチームは既に入部を断らせてもらった」

今、この場に集まっているのは悪魔と戦う力を持った学生達であると判断し、以降はそのように扱う。勿論、他の部活と同じように途中退部は受け付けている。

「この場にいる君達の入部、喜んで受理しよう。デビルハンター部へようこそ」

「やった!…」

喜びの声を上げたユウコに視線が集まる。悪魔との戦いを経験したからか、はしゃぐ者は他におらず、安堵や緊張の溜息が聞こえてくるばかり。

早速オリエンテーションが行われ、トレーニングルームなどの関連施設、備品の位置とその扱いについて、ハルカの口から新入部員達に説明される。

「早いが、今日はこれで解散とする。最後に制服と体操着の替えを、サイズを確認して一着ずつ受け取って帰宅してくれ。まだ届いてない部員もいるが、君達には後日、服の替えを渡そう。入部祝いだ。

明日が一年の活動日なので、放課後はトレーニングルームに集合するように」

アサ達は服の替えの入った袋を提げて、家路についた。

「いよいよ入部だね!どんな事するのかな!?」

「基本は運動部みたいに、ずっとトレーニングだと思うよ?」

フユの言う通り、デビルハンター部の活動時間は、ほとんど体づくりと戦闘技術の習得にあてられる。

特に重視されるのは、回避や移動、防御の技術。対峙する悪魔次第では防具が役に立たない以上、攻撃を貰わない技術、致命傷を避ける技術を磨くのは必須。

例えばフットワークの練習は、すり足で有利な位置をとったり、ステップで間合いを調節できるようになるのが目的だ。

徒手の技は殴打や蹴撃など打撃を中心に、投げや組み付きに対応する力も上げていく。

武器の扱いは全体で教えることはなく、個々人の興味により、学習内容を選択可能だ。

アサは槍を習ってみることにした。構え、歩き方など基礎からのスタートだ。先端を布で包んだ稽古用の槍を構え、足と共に槍を動かす。

「槍、習うことにしたんだ?」

「うん…」

「どんな感じなの?使いやすい?」

「えぇっと…刀より相手が遠くて、近づかなくていいのは楽かな…。けど、物がいっぱいある家の中とかだと、使いにくそう」

「合わなそうなら、また変えればいいよ」

「そういうのってアリなの?」

5月に入ったらGW、そして中間テストだ。

「GWが無いのが辛いよね…。デビルハンター部……」

デビルハンター部は学年毎に休みの日をずらしており、毎週日曜日が全学年の活動日。学校がある時期は週7日稼働している部活なのだ。

ただし、他の運動部とは異なり、練習試合も大会も無い。夏冬春の休暇期間はしっかり休めるし、テスト期間は5日前から活動停止だ。

「週2で休みなんだし、別にいいでしょ」

「世間が遊んでるのに、こっちは休みじゃないんだよ?

近場でいいから、遊びに行こ〜よ〜!気分だけでも〜!」

「GWなら、どこかでイベントやってると思うし、みんなで行こうよ!」


来たるGW、休日を使って訪れたのは東北をテーマにした野外イベント。開催日の間、メインステージでは日替わりで東北出身のアーティストがライブを行い、会場内には東北地方の飲食店や、東北土産を扱う物産店が集まる。

「どこ行く!?どこ行く!?」

「ちょっと待ってよ…。あんまりお金使いたくないから…」

「私、13時のステージは絶対見たいから!」

四方を話し声が行き交う中、アサ達はマップを見ながら会場内をぶらついた。

そして13時から始まったアーティストのステージを、3人は揃って観覧。アサは歌唱する男性ボーカルデュオをぼんやりした表情で眺める。

(歌、上手いな……

けど、私ならこういうステージで歌うのは嫌だな。客の入りでどの程度、評価されてるのかハッキリしちゃうから…

別に歌手になりたいとは思ってないけどさ…)

夕方、3人はイベント会場内の物産店を見て回る。家族がいるフユが一番買う物が多いのは予想通り。ユウコもクラスの子や部員へのお土産に個包装の箱入りクッキーやアップルパイを選んでいる。

「私も何か買おうかな…」

アサも2人と一緒に土産を選ぶ。クラスメイトに何か買っていくつもりはないので、土産を買うとしたら部員向けの品だ。

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