やはり野におけ蓮華草
自分から俺を誘ったくせに、何度も何度も俺は考えさせてくれって遠回しに線引きをして暗にやめろって伝えたのにしたのに、しつこくゾンビみたいに食い下がってきたからこうなったんだろォ?
だからそう、こうなったのは俺のせいじゃないよな?
なぁロレンツォ。
…俺とSEXしようって言ってきたのに?
という冷めた気持ちが今俺の頭の中には浮かんでいる。
………いやまあ混乱してネスを呼んだ俺も多少は悪いと思ってる。嘘、本当の事言うと普通に正当防衛だと思ってるしクソイラついてる。
というかおい、ちょっと待てネス!!!相手はあのドン・ロレンツォだぞ?スナッフィーの忠犬だぞ?試合中もしぶとくマークしてくるあれだぞ?鼻の下伸ばしてんじゃねぇよ!!!
完全に脈ねえに決まってるだろ馬鹿。というかお前が語るに関係性聞いたらセフレですらねぇじゃねえか。
……正直に本音を吐き出すと。俺を誘ってきたのにネスにオーラルセックスしたり、俺が目の前にいるのにうつつを抜かして、俺を無視してワンワンと媚びているのが率直に言ってクソ腹が立った。
あれはきっとほんの少しの嫉妬心と、過半数の加虐心と、あと普通にさっさとヤりてぇって気持ちで。
「おい、さっさとヤるぞ。お前は俺に抱かれたくて来たんだろ?なァロレンツォ?」と不機嫌を隠そうともしない声で言った。
あぁ言ったぞ?言ってやったさ。夜のお誘いの言葉をなぁ!
「だぁ〜♡早急だな〜ミヒャ。OK、ネス坊が出したらな?ふぅ…♡」
クソ、エロい吐息出しやがって。
おい早く出せよネス!早っ、く………
うわ思ってたよりも早かったな……。
「SEXの準備くらいは俺にさせろよ」
自分の内心で言うのもなんだが俺は男も行けるし知識も同年代にしてはある方だと思う。だから、その………受け入れる側のアレやソレも分かる訳で。
決して下心ではなく、決ッして下心ではなく!!!純粋な親切心でそう言ったら
「あ、それは気にしなくてOK♡もうオモチャで慣らして来たからぁ♡」とか言う俺にとって100点満点の発言が返ってきて天を仰いだ。
コイツ、マジで俺に抱かれるために準備してきたのか。
断られる可能性の方が高いとわかっておきながら自分で挿れて自分で拡張して自分で全部準備してわざわざ別の棟に来たのか。
うわ、クソそそる。ついさっきまでは、というか今まで全然そういう目で見れなかったのに。
その可愛らしい答えに返答したくても言葉に詰まってしまって、返せたのは動揺を隠せない「……淫乱め」という平凡なつまらない言葉だけだった。
「その淫乱できもちくなってるのはぁ♡どのミヒャ〜?」
は?はぁ??煽りの天才かよ。悔しいけどクソ興奮した。悔しいけどクソ煽られた。クソ悔しい、クッソ悔しい!クソクソ悔しい!!!
落ち着け俺、落ち着けミヒャエル・カイザー(19)
一旦冷静になれ。気分を萎えさせろ。とりあえず目を閉じて深呼吸…。
世一を思い浮かべて……よしいい感じ。
ノアを思い浮かべて……よし来たいい感じに冷めてきた。
そして仕上げに目を開けると………クソ!!!全然ダメじゃねえか!
まだヤってねぇのに事後みたいな顔で見上げてくんな。
というか今気づいたけど、今俺はロレンツォを見下げてるのか。コイツが今下から覗き込んでるからいつもと違う風に目が合う。
いつもあんなに堂々とピッチの上で立っているのに。
こんなよるべのない犬みたいな表情できたのか。
わりかし長い付き合いだと思ってるけど初めて知った。というか、コイツに涙腺や地雷なんてあったのかetc……
……もういいや、こんな生産性のない事を考えてても仕方ない。
どうせ犯すし。クソ犯すし。
でもまあ、……素人童貞煽りは普通にクソむかついたから薄っぺらくて小せえケツを叩いといた。
頼むから微塵も興奮しねえような色気ない声をあげ「わんッ♡あっぁっ♡」
チッ、雌犬が!ビッチが!!!Hündin!Hündin!!!
よぉし対位は今決めた。絶対に1番無様な顔見れて1番乱れてくれそうで1番ダメージを喰らわせられそうな騎乗位だ。
あと普通にヤってみたかったし。
「対位は何がいい?男の、しかも俺の顔なんざ行為中に見たく無いだろうし寝バックでOK?」
散々お前にオーラルセックスされてお前の顔を肴に口内にぶちまけた俺にそれ言うの頭湧いてんのか???
「あぁ、それに関しては騎乗位で頼む」
「…え?」
あっさりOK出すと思ってたのに案外しぶるな。
「騎乗位。お前が動け。」
「………後背位じゃダメ?」
全然食い下がらねぇな……
「騎乗位っつてんだろ」
声のトーンを下げて言ってみた。
何だよその顔。エロ。
「カイザーの命令を断るんですか!ロレ公!!!イエローカードですよ!!!」
ネス黙れ。お前黙れ。クソ黙れ。フルチンでそれ言うな滑稽だぞ。
そんなことに思考を割いてると決心がついたらしいロレンツォの言いづらそうな口から「騎乗位はその、……奥まで行くから………そのぉ苦手、で………」とか言う可愛らしい理由が飛び出てきた。
「…おねがいじゃなくて命令?」
その上で、暗い目で諦め気味の笑顔でそんなこと言われたから少々面食らってしまって。
そんな俺の変化にも、こんなロレンツォの変化にも気づかず当たり前だと豪語するネス。お前マジでクソ黙れ。
まあそんなこんなで引くに引けなくなったから、「お前が誘ってきたんだから、俺のかわいいワガママな要望くらい聞けよ。」と言ってしまった。
そうしてロレンツォの顔を見ると……
あ、絶対これダメなルートだな。この感じ拒否られそうだな。地雷か?地雷なのか???
「…OK!(ニコッ)がんばるよミヒャ」
……あ、この時点でコイツの中には根っこから上下関係が植え付けられてて“命令”なら聞くんだな。とそれで全て悟ってしまった。わかってしまった。理解してしまったのだ。
いや、最初から違和感はあった。でもそれらに全部気付かないフリを、忘れたフリをしてて…
あぁ、しくじった。もうダメだ。
俺とロレンツォの関係は、もう変わってしまうのだ。
そもそも、最初からOKを出したのは間違いだったのだ。
でもそんな後悔には、恋情には、激情には、全部再び蓋をした。
だって俺とコイツにはそんな感情不必要だから。
これが最初で最後だから。
きっと気の迷いだから。
……本当に言いたい言葉は、そうして臆病な俺の喉にへばりついて言えなかった。