やっと言えた

やっと言えた



ああ、もう終わりなんだと自分自身が一番分かっていた。

身体中に走る青いノイズ

これは何度も見たことがある

ゲームからの脱落を表すサイン

私自身も一度自分の身体に走ったのを見たことがある

だけど今回のゲームでは違う

IDコアにヒビが入っているのだ

つまりそれは、ゲームからの脱落と、もう二度とゲームに参加できないということ

私はまた記憶を失って、親の言いなりとして生きるのだろう

何でこうなったのか、それはどこか私も油断していたから

自分を守ってくれる人がいるから自分は大丈夫だと思っていたのだ

それだけの存在なのに、何で私は彼に自分の想いを伝えられなかったんだろう

彼を好きな人が他にもいて、その人に庇ってもらった負い目があるから?

自分は人間の真似事をしている作られたフィクションの存在だから?

誰かの幸せを奪って作られた存在だから?

いや違う、過保護すぎる母親と距離を置く父親

私はこの2人からきちんと愛されたと思えなかった

だからこう願ったのだ、本当の愛が欲しいと

本当の愛を与えてくれる人なら近くにいた

だけど私は、誰かを好きになって本当に愛したことなんかなかった

配信でのフォロワーには言える言葉が何で言えないんだろうと考えたが、つまりはそういうことなのだ

接し方が分からない

周りは私たちが上手くいっている親友以上恋人未満の関係だと思っているのだろうが実際は違う

ああやって猫をかぶるが如く私はこんな恋人だったらいつか向こうが振り向いてくれるだろうと理想の自分を作り上げていた

そんなことをしていたから、自分の本当の気持ちを言えずにそのままでいて、今こうなっているのだ

だから、あの人には悪いけれども

死ぬ間際にこんなことを言ったらあの人を出し抜く形になってしまうし、彼は私のことを引き摺ってしまうかもしれない、だが許して欲しい

死ぬわけじゃないと言われたらその通りだ

だが、今までの記憶がなくなった私はいない

つまり今までの私は死んだようなものだろう

だから死ぬ間際という表現は間違いじゃないと思う

とにかく今の私にはもう時間がない

「あのね、」

「ずっと大好きだった、友達とかじゃなくて、本当に愛していたの」

「これは私の本当の気持ち」

泣きそうな彼の顔

でも、最後にこれだけは言えて良かった

青いノイズに包まれ消滅しながら私は彼に微笑みかけた



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