ぽやぽや

ぽやぽや

https://bbs.animanch.com/board/1003009/ からの派生


※モブ店員目線
※格好いい奴は一人もいない
※スレに出たネタ参考にしています



声に応じ向かった立ち飲みテーブルでは四人の男がゆるゆる会話していた。全員手配書で見た顔に思えるが、この店は取締役の意向で支払いと店内ルールさえ遵守するならそんな奴らも海軍に突き出さないことにしている。それで本当によかった。奥に立つ一番背の低い奴でもおれの旋毛を見下ろせそうだし、なにより壁に刀と剣と四つ刃の斧が立てかけてある。まあ、向こうが手ぶらだったところで勝てる気がするわけでもないのだが。

「ハモン・セラーノとトルティージャを一皿ずつ。取り皿もくれ」
「承りました」
「それとシェリー酒を四人分」
視線をおれの顔と持ち上げたメニューの間で往復させている男は縦も横も一番でかい。逆立てられた赤茶の髪のせいで余計そう見える。近づくとでかいXの刺青が入った硬そうな胸が視界を覆い尽くす。注文伝票に目を落としているとぬらりとした影が降りかかった。
「これの具材はなんだ」
音もなく距離を詰めた長髪の男がおれを挟みながら大男の手元を指差す。いや見えねェよ角度的に。おおかた揚げ物かサンドイッチあたりの写真を示してるんだろうが。というか感覚が麻痺していただけでこいつもだいぶでかい。霞でも食ってそうな雰囲気の癖に近づいてきた腹筋はバキバキに割れている。
「申し訳ございませんが、メニュー名を読み上げていただけますでしょうか? 自分の身長ではお手元のメニュー表が見えないもので」
逆ギレされませんようにと祈りながら返答すると二人はおれの頭上で視線を交わす。両脇に平たく硬いものが突っこまれる。おれの足が床から離れた。

「これだろ?」
「ああ、『日替わりフリット』。白身魚がいい、レモンも付いていればなおよし」
頭の前後から低い声とアルコールの濃い匂いに挟まれる。おいなんの拷問だそもそもメニュー名言えっつったんだなんでおれを持ち上げんだ!!
ふざけてる気が無いらしいことと持ち上げる腕があまりにも安定していることとに寧ろ余計に腹が立ってくる。返事をしないわけにもいかず今日の仕入れ状況を思い出す。視線を思わず逸らすと、テーブルの向こうでぐる眉男と帽子の男があからさまに引き攣った表情で額を押さえていた。

あぁ、おれを挟んでいる二人が豊満な美女だったらなぁ、それならあとで同僚達に自慢して回ったんだがなぁ、クソったれ!!!

 

 

 

**********

 

 

 

「……だから、今日はもう十分飲んだだろって言ったんだ! たまに外で深酒したと思ったら確定で妙な馬鹿起こしやがる!」
「いい、さっさと食べ終えて帰るぞロー、結局流されたおれらも悪い」
「あー……お前達もあの店員くらいの大きさの時あったなあ……」
「サンジもローもでかくなった……おれの背は越えられなかったが……」
「喧嘩売ってんのか?」
「そうだな、おれほど伸びなかったからな……」
「喧嘩売ってんだな?」

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