はじまりはじまり
呪術界御三家が一家・五条家出身であり準二級術師、五条稀は悩んでいた。
それは友であり特級呪霊―――御影を思うと胸騒ぎがするからである。
意識し始めたのはつい最近だろうか。それまでは何度触れようと、会話をしようとこのような気持ちにはならなかった。
気でも狂ったのか、と頭を抱える。
おかげでこの頃まともに近づくことすら出来ないのだ。
盲目である自分に、術式を駆使し視界に潜り込んでまで元気づけてくれたというのに。
ふと、稀は御影と関わった時の自身の感情を整理した。
喜び、緊張、恥ずかしさ。
身体がぶわりと熱くなり、思わず目を逸らしてしまう。
はて、と稀はこの現象に何処か覚えがあった。
創作物でよくあるような、そんなもの。
―――『恋』。
気づいた瞬間、稀は深く溜め息を付いた。
恐らくこの恋路は想像もつかないほどに険しく、厳しいものだと悟ったからである。