朱に沈む炎
98※ちょっとグロい描写があるかもしれません。
※死ネタです。
※原作では死んでないキャラが死にます。
※救いは、そこになければないです。
若気の至りか蛮勇か、それとも唯の馬鹿か…白ひげ海賊団に敵対する海賊団による昼夜問わずの襲撃が数日あった。
休む暇なくという程では無いとはいえ、間違いなく白ひげ海賊団は怪我こそ少なくとも疲弊していた。
今日も夜明けと共に襲撃をされており、疲弊したクルー達のフォローの為に隊長副隊長総出で最前線で戦う事になった。
そんな中、何時もは怪我などしない力量差しか無い敵に対して怪我を負うクルー達を青い炎で回復させつつ、敵と味方の間を飛び回り敵を沈めていく。
(幾つかの海賊団が共闘して来てるのか…なかなか数が減らないよい)
顔には出さずに息をつく。
襲撃された当初よりかは敵の数が減ってはいるが、疲弊している現状では数が減るのが遅い。
しかし、隊長副隊長が出ているのだから時間の問題だろう。
(ま、なんとかなるだろう)
自分自身以外へと回復の炎を使用していたからか不死鳥の回復が限界に近付いていた為、青い炎を纏う事なく敵を潰す。
自身の周りに敵がいなくなり周りを確認すれば後は僅かである事に、もう一度息をつく。
ふいに赤い炎を纏いながら近くで戦っている末っ子に視線が向く。
やはり疲弊しているのか、集中力が散漫になっているのか剣を振り上げた敵に攻撃されそうで、それでも他のクルーでは瀕死以上の怪我を負うだろうが末っ子は自然系だから平気かと思った。
──ゾクリッ
酷く嫌な予感がした。
思わず末っ子と敵との間に自身の身体を投げ出した。
バッサリと肩から腰にかけて斬り裂かれて、身体の圧力で腸やらが体外に飛び出るのを感じる。
(海楼石の、武器かよッ)
嫌な予感が当たったのか、その剣は海楼石で出来ていた様だった。
不幸中の幸いか既に海楼石は触れておらず、ふらつく身体を持ち堪えさせて一瞬だけ足を不死鳥の鉤爪へと変えて敵の頸を掻き切る。
敵が甲板に倒れるのを確認して、振り返る。
“家族”の大切な“末っ子”を見る。
何が起こったのか分からず呆然としている姿に、仕方がない末っ子だねぃと口に出したつもりだった。
ごぽり…と、マルコの口から血が溢れる。
(嗚呼…これは、どうにもならないよい)
既に回復するだけの余力は無く、それでも庇った末っ子が無事なのを確認できた。
自分の血で汚してしまったけれど、生きているのだ…それに安堵して思わず笑みが浮かぶ。
ぐらりと身体が傾いだ。
白ひげ海賊団の“末っ子”エースは頬を濡らす血にも最初は気が付かなかった。
「……ぇ…?」
戦っている最中だったというのに何も考えられなくなった。
目の前で崩れ落ちる“長兄”の姿に、現実味を感じなかったから。
「…マルコ?」
倒れ伏した身体から朱い朱い血が流れ出ている。
思わず手を伸ばして上を向かせるようにまだ温かい身体をひっくり返す。
目は虚ろで、それでも笑みを浮かべていて…視線を身体に移すと斬られた腹から臓腑が出ていて……そこまで確認して、何時まで経っても青い炎で回復しない姿に気が付いた。
「ぁ、あぁ…あぁぁ……マ、ルコ、マルコ?…マルコ!
なんでッなんで回復しないんだよ!!
不死鳥なんだろッそう安々と死なないんだろッ」
ぬるりと手が血に染まるのも厭わないで体の外に出てしまっている内臓を掻き集める。
「ぁ、そうか…出ちまってるから、回復できないんだよな。ちっと待ってくれ、すぐ…すぐもどすから」
まだ温かい内臓を集めながらも、ゆるりと冷たくなってゆくソレにどうすれば良いか分からなくて。
肩を誰かに掴まれて引き離され、掻き集めていた内臓がボトリと落ちた。
「やめろ、エース!…マルコは、もう…」
聞こえた言葉を理解できなかった。
だってマルコは不死鳥で、だって、俺より強くて、だって、
「エース」
オヤジの声が聞こえる。
あぁ…認めたくなかった。
「あぁぁぁぁあぁぁあッッッ!!!」
何処からか慟哭が響くのを遠くに聞きつつ/俺の口から慟哭が溢れるのを感じつつ、流れ出た朱に膝をつく。