牛乳飲んで強くなろ
「また牛乳飲んでる」
呆れた様子の片割れを受け流して液体を飲み干す。好きでも嫌いでもない飲み物。一般的な赤ん坊はこれを口にして大きくなるそうだが、実験室のフラスコで産まれた自分達には縁のない常識だ。
「別に気にしなくてもいいじゃない」
「やだね、少なくともお前よりはデカくなりたい」
同じ部屋で生まれた片割れとの目線の位置はさほど変わらない。父との目線は幼い頃より近づいたが、まだ遠い。
「今のままの方がパパに抱っこしてもらいやすいのに」
「お前はそれでもいいだろうけど、おれは今のままじゃ満足できないの」
甘ったれに育った妹。打ち捨てられた人形みたいだったあの頃に比べれば甘えん坊でも泣き虫でも立派な成長だ。
こいつが安心して甘えられるように頑張るのも兄の勤めだろ。
「それにでかくなったほうが抱きついた時に密着する面積増えるぞ」
「え、やっぱり私も飲もっかな…牛乳」
単純な奴。