とくせい:いたずらごころ
どうやらアオイは、俺をからかうのが好きらしい。
「スーグーリ!」
「アオイ?どうし──っ!」
トントンと軽く肩を叩きながら名前を呼ばれたので振り向けば、頬に感じる柔らかい何かで突かれたような感触。
それに驚いて目を丸くしていると、先ほど俺の名前を呼んだ張本人であるアオイがしてやったりと言わんばかりにクスクスと笑っていた。
「ふふっ、まーた引っかかった。スグリってホント素直だよねー」
「わやじゃ…またやられた……」
どうやら俺の頬を突いたのは彼女の人差し指だったようで、アオイはまるで感触を楽しむかのようにフニフニと俺の頬をつつき続ける。
最近、何が楽しいのかアオイはこうして俺をからかってくる。内容は決まって今みたいな些細なイタズラがほとんどで、その些細さに怒ることも出来ずに俺はされるがままになっていた。
「…今更だけど、なんでアオイは最近俺の事からかうんだべ?」
「んふふ、知りたい?」
正直カキツバタのウザ絡みに比べればなんて事はないのだが少し気になって聞いてみると、アオイは漸く俺の頬から指を離した。そしてその手を自身の口元に当てて小さく笑う。
……その仕草に思わずドキッとしてしまったのは、ここだけの秘密だ。
「それはね……スグリの反応がかわいいから、かな?」
「へ?かわいい?俺が?」
「うん、すっごくかわいい!」
そう言って笑うアオイに悪感情はなく、それが彼女の言葉が嘘偽りのない本心である事の何よりの証明だった。
……故に、解せない。
「……男なのに可愛いなんて言われても全然嬉しくねえべ」
「とか言いながら赤くなってるじゃん。かわいい〜」
「だーかーらーぁ!」
そう、嬉しくなんてない。
俺だって男なんだから、可愛いよりもカッコいいと言われたいし、思われたいのだ。
それが好きな女の子相手なら、尚更。