とうちょ初夜(失敗)
スレ主「脹相、とりあえずキスしていいか。恋人になって初めてのキスだ。今までのとは違うぞ。」
東堂の言葉に脹相の肩が揺れた。
怖いと言っていた彼に無理強いをするつもりは無かったが、こうにも反応がいいと調子に乗ってしまう。
脹相の頬に手を添えると黒い瞳が東堂を見上げた。空いた手を肩に手を置くと同時に唇を重ね合わせ角度を変えながら何度か触れ合わせる。静かな部屋に衣擦れと吐息の音だけが響く状況に、たかだか十八歳の理性は簡単に崩れてしまいそうだった。
「は……、あおい…」
唇の合間から呼ばれた名前に耐えきれず舌を薄い唇へと這わせた。しかし、舐めた瞬間に脹相の肩が跳ねたかと思えば東堂の脳に衝撃が走った。思い切りぶん殴られたと理解した時には、身体が反射的にカウンターを繰り出しており、二人は互いに頬を腫らす結果となってしまった。
「ふ、普通キスしてる最中に恋人を殴るか!?」
「す、すまない、いやでもお前も俺を殴ってるんだが」
「咄嗟にカウンターも出るだろうが、あ〜…脳が揺れてる…」
「いやお前の打撃の方が強かったぞ、見ろ。血が止まらないんだが。」
「はあ……血が出ちまったならキスは今日はもうダメだな。」
東堂は彼の血液が人間にとって毒になることを知っている。殴り返したのは反射としても失敗だったなと思いながら、彼の身体を抱きしめた。
脹相自身もかなり良い体格をしているが、東堂と比べてしまえばひとまわりふたまわりも細い。骨格の違いもあるのだろうか、服のサイズが合わなかったこともこうしているとよく理解出来る。
「……口の傷が治ったら、続きだ。次は殴るなよ。」
「……分かった。」
そのまま抱き込んでベッドへと運び、共に眠りについた。脹相もまた、今度は意識のあるときに抱き締め返してくれた。
次は何をするにも宣言から始めようと、東堂は一人心の中で決意した。