とある日の一条隊

とある日の一条隊



万里「安寿、ここはどうやって…」

安寿「だから今やったやん?同じ公式使って解けばいいだけよ。」

万里「………」

万里「…………?」

安寿「ダメだこりゃ…。」

最初の1問目が解けずに解説読むまではまだいい。そこで「完全に理解しました!」とか言ってたのに、その次の数字が変わっただけの類題も解けない。ほんとに理解したんか?これだから姉さんに勉強教えるのは好きやないんや…。

榊「あれ、2人とも宿題中?」

安寿「あら榊先生。」

万里「仰る通り宿題中です。」

隊内でも『先生』と呼ばれてるこの人は一条隊のオペの榊さん。元は教師だったんやけど、自身のSEのせいで退職せざるを得なくなったそうな。

安寿「そうや!榊先生今時間あります?」

榊「特に用事はないかな…。」

安寿「うちの代わりに姉さんの宿題手伝ってあげてくれへん?」

榊「うん、俺はいいよ。」

即答とは思わなかったわ。やっぱり先生はお人よしやな、たまに精神不安定やけど。

安寿「んじゃ任せましたわ、姉さんも榊先生にあまり迷惑かけんといてな。」

万里「安寿はどこに行くのですか?」

安寿「友達と遊ぶ約束してたんや〜。」

真っ赤な嘘をつきながら隊室を出た。

次の日

安寿「さかきせんせ。」

榊「あ、安寿ちゃん。どうした?」

安寿「昨日はありがとうございました、お陰で提出するのギリギリ間に合ったらしいですわ。」

榊「そりゃ良かった。どんなに成績悪くても提出物出して授業に出席してれば三門第一は留年回避できるからね。」

安寿「留年回避してもあのままだと高卒になりそうな気もしますわ。」

榊「万里ちゃんならボーダー推薦取れるんじゃない?」

安寿「どうですかね…攻撃力とトリオンしかないですけども。」

榊「そんなこと…そうだ、これ渡しといてくれる?」

先生はそう言うと私にプリントの束を渡してきた。

安寿「なんです?」

榊「万里ちゃんって解説を一回読んだだけで全てを分かった気になりがちみたいだから、『解説の解説』を作ってみたんだ。」

榊「解説と合わせて読めば、その解説が何を表してるか、一発で分かるよ。」

榊「お節介かもしれないけど…昔の仕事を思い出してね、久しぶりに作りたくなっちゃってね、よかったらもらって欲しい。」

分かりやすい文章、飽きないように考えられたレイアウト、しかも大量、どう考えても作るのに相当時間がかかったはず。

安寿「なんで作ってくれたんですか?」

榊「うーん…元からこういう作業が好きなのと、自分の好きなことが誰かの役に立つのって嬉しいから…かな。」

そう言ってへにゃっと笑った先生の目の下には隈が見える。

いつも遅くまで隊室に篭っての作業、今回みたいなイレギュラーに嫌な顔もせずの対応、SEで多少肉体や精神に変化が起きてるのかもしれないけど、それでも、

安寿「榊先生は立派な人ですなぁ」

榊「そう?」

安寿「そうですよ。」

うちは、先生相手にはお世辞とか使わんつもりでいるんですわ。

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