ちょっとだけエッチ……?
酒で体温の上がった薄ら赤い腕が無遠慮に伸ばされる様は、蛸の捕食行動を連想させる。
生理的な嫌悪感と苛立ちに駆られ、弾き飛ばす勢いでその腕を振り払った。
「汚い手で触んな。俺より年上で俺よりヘタクソな奴に舐められる筋合いはねぇぞ」
冴のものとは全く異なる分厚い体は、けれどアルコールが入っていることもあり容易くよろめいた。
絡んできたのは2人。もう1人は、下心と好奇心の滲んだ目でこちらを見ている。
「舐めてるってか、むしろ俺は舐められたい派だなぁ。確かに冴にシッポ振ってる連中は脚も×××も舐めたがるような奴ばっかりだろうけど!」
「あはは! 違いねぇ!!」
宿舎のシャワー室に下品な笑い声が響く。スペイン語のスラング部分だけまだ聞き取れなかったが、この話の流れで出てくるならどうせ意味は尻の穴とかペニスとかだ。
人が自分のシャワーブースに近寄ってくる気配を察して咄嗟に腰にタオルを巻いたが、そんなほぼ全裸みたいな格好で、本当に全裸の男2人に絡まれているこのシチュエーションは最悪と言って良い。
ちらりと視線を下げれば、無駄にご立派なモノが男どもの股ぐらで堂々と血管を浮かび上がらせて存在を主張している。ドン引きするくらいにバキバキだ。
もし無理やり咥えさせられるようなことがあれば、アレを歯で噛み千切ってこのシャワールームを真っ赤に染めてやろうと冴は決めた。犯られる前に殺ってやる。
「でもさぁ、俺こっちなら舐めたいかも。ほら、ピンクで可愛いじゃん」
笑いながら男が胸元に顔を寄せて来たので後ろに下がったが、壁に背中をぶつけてそれ以上は距離を稼げない。
どころか痛みに顔を歪めた隙に両手首を磔のように押さえ付けられ、そのまま乳首をベロリと舐め上げられた。
「ヒッ」
思わず引き攣った声が喉を突く。快感は無い。屈辱と衝撃で脳裏に星屑が散った。
肩を震わせたのを怯えと受け止め、男は「可愛い反応もできんじゃん」とニヤつきながら再度胸元に唇で吸い付く。
かりっと歯で軽く噛み、すりすりと舌先を尖らせて先端を愛撫する、淫猥な意図を持った動き。きっと暫くすればそれに体が慣れて、滲んだ汗に怒りや恐れ以外の要素が含まれるようになるだろう。
その予感が嫌過ぎて、ピクッとのけ反った爪先の動きを誤魔化すように男の屹立したモノ目掛けて冴は左脚を振り上げた。