ちょっとした解説

ちょっとした解説


・読まなくても大丈夫

・安定の妄想

・今後の本誌との解釈違いになる可能性が高いです

 

 

 

・暗澹(カイザー視点)

暗くて不気味な様子、静かなこと

この小説での初期カイザーの胸の中。賞賛をいっぱい向けられても素直に受け取るには心の穴が大き過ぎた人。潔世一の言葉が引っかかったのはそれがまるで当たり前を、疑いようのない事実を語るような声色と口調だったから。自分に向けられる賞賛にカテゴライズできなかった。

 

 

・凍晴(潔世一視点)

寒さの強い快晴の事

潔世一から見たカイザーの眼。もしくは、眼を通した中身。

濁りがないと表現しているように、この時のカイザーの眼は純粋に理解できない、されど拒絶しないものをみつめています。カイザーの視線と意識が変化したことには肌感覚で勘づきましたが、理由までは思い至りません。けれど、その変化が悪いものではないと直感しています。

カイザーは潔世一の淡々とした評価の糸が胸の穴に引っかかり、いつの間にか蜘蛛の巣のように網目になっていました。賞賛を受け止められる場所が着々と無自覚のうちに形成されており、同じ声である潔世一の賞賛が心に引っかかるようになったんです。

 

 

・荒涼(カイザー視点)

景色などが荒れ果てて寂しい様子の事。転じて、満たされず虚しいことの例え

今まで一方的に聞いていただけのカイザーが、初めて自分から潔世一に触れた。ベールの外の一方的で自分を見ていないともいえる賞賛を聞くだけだったのが、潔世一の賞賛を受け止められるようになって、意識が此方を向いていないことに物足りなくなった。潔世一の思考を聞くだけなら今までで良いのに、意識を向けて欲しくなった。まだ会話する勇気はないけれど、自分に意識を向けてくれる、自分に笑顔を向けてくれることが衝撃になるほどに、潔世一を意識しています。ちゃんと今までだって意識を向けて笑顔を向けてくれる人は多かったけれど、心の穴から零れ落ちていました。

 

 

・待春(潔世一視点)

春の訪れを待ちわびる頃のこと

カイザーは自覚していませんでしたが、誰かに意識を向けることを、意識を向けた相手に拒絶されることを恐れていました。潔世一は恐れを見抜いたうえで、それを表に出すことはしませんでした。怖いものを怖いと認めることが、心にとって負担になることを、カイザーがそれに耐えうる精神状態ではないことを見抜いていたからです。

潔世一は基本的に自分に関心を向けてくれる相手のことが好きなので、この時の悪意のないカイザーにも笑顔です。感謝に近い感情を顕わにします。潔世一にとっては様々な意味で接する相手に丁寧に対応するという事は当たり前ですが、悪意のないカイザーへは下心の無い純粋な好意と感謝でもって対応しています。

ここではカイザーが初めて潔世一と会話を試みます。自分に意識を向けてくれて、自分を見てくれて、自分に笑顔を向けてくれる潔世一なら、カイザーと会話してくれるんじゃないかと、カイザーを傷つけないのではないかと恐れつつも無自覚に期待したからです。

また、意見がぶつかった時に、叩き潰すのではなく、分析する。意見が違うことを尊ぶ潔世一に、自分の意見を述べると喜んでもらえることを感じ取りました。だから、自分の意見を述べて会話するようになります。ちなみに、カイザーが会話終わりに笑顔を見せるようになったのは、潔世一が笑顔を自分に向けてくることが嬉しかったから。だから、自分も笑顔を向けます。

 

 

・余寒(カイザー視点)

寒があけてもまだ残る寒さのこと

時系列不明とはいえ、この話はプロ軸なのでバケーションに入りました。潔世一は帰国せず、ドイツで過ごすことを決めていて、カイザーはそれを知りませんでした。

つまり、カイザーは潔世一に遇えるとは思っていなかった、サッカーの外の潔世一に会おうとも思っていませんでした。2人の間にサッカーの他に繋がりがあるとは認識していなかったから。此のバケーションの間だけの空虚だと思ってました。

でも、自分を見つけたときの笑顔が、声が、サッカーの時と同じだったから、我慢できなくなりました。カイザーはサッカー以外の潔世一は何も知りませんし、知ろうともしなかった。知らないことで、話しかけられなかったのですが、サッカー外の穏やかな潔世一は考える必要がある目の前にない事象や概念の話題は一切せず、今、目の前に合って、五感で感じ取れて、共有できる話題で終始していたので、カイザーも目の前の話題と、それを見た自分の感性を言葉にして会話することが出来ました。

 

 

・空音(潔世一視点)

実際には音がしないのに、聞こえたような気がする音

折角だし、休みなら良いじゃんとカイザーとサッカー外で出会うようになった潔世一は穏やかで無垢なカイザーの感性に触れます。日に日にカイザーが様々なものに少しづつ興味を広げていくようになり、無言の「話を聞いてほしい、会話したい」という声を聞き取ります。

潔世一は別にカイザーの見せている面が演出でも何も気にしません。人は多かれ少なかれ様々な面をもっていて、状況によって多面体サイコロの面が変わる程度で本質は同じだと思ってますから。見せている面が演技だとして、それを演じようとする心は本物なので。

 

 

・陽炎(カイザー視点)

風景が揺らいで見える現象

世界が広がったことで未知なるものにカイザーが感じた不安や恐怖を潔世一が受け止めます。潔世一は幼い頃に自分も親から否定されることなく守られていたので、カイザーを否定するという発想はありません。潔世一に受け止められて守られることを理解したカイザーは少しづつ外側の未知の恐怖に対するチャレンジ精神が培われます。

 

 

・鋼玉(潔世一視点)

コランダム。不純物によってルビー・サファイアと呼ばれる。石言葉「慈愛・誠実」

潔世一に対して、己の理解者として安心感を得ているカイザーと、他者として関わりあおうとするカイザーの2つ面があることを悟ります。カイザーの不安定さをちゃんと把握しており、彼の心の成長として歓迎し、受け止めています。叱り、窘めるときは絶対に理由を述べて、納得するまで対話します。

潔世一はあくまで対等に、カイザーがダメなことをしたときは叱り、自分が失敗した時はちゃんと認めて理由を述べて謝ります。

カイザーが感情を上手く咀嚼できず癇癪を起しても、きちんと話をする姿勢は絶対に崩しませんし、落ち着くのを待ちますし、感情を決めつけません。カイザーは自分の複雑な感情に向き合って、不確実性に対する寛容性を習得していきます。

 

 

 

・鬼哭(カイザー視点)

恨みを残して成仏できない霊が泣くこと。またその声。

きつくても、辛くても、認めたくなくても、精神的に成長したカイザーがずっと無視していた過去の捨て置いた自分の存在を認めます。潔世一に自分の名前を呼ぶことを要求しているのは、要求が通るのを確信しているのと、潔世一の声が積もるからです。

向き合うまではいけなくとも、存在があること、自分が傷ついていることを認めることでカイザーは精神的にある意味で安定します。

 

 

・関所(潔世一視点)

通り抜けることが難しい難所

カイザーからカウンセリングを受けることを打ち明けられます。潔世一は心配はしますが、乗り越えられないとは思っていませんし、カイザーもそれを踏まえた上で道のりは困難だろうなと苦笑します。

でも、カイザーは問題ありません。潔世一がいるので。乗り越えられないと思っていた過去が、案外、壁が低かったことと足元に上りやすいように段がおけることに気付いたのと、壁の向こうから潔世一が自分の名を呼んでいるので迷わないことを知っているからです。

約束が出てくるのも、今後の予定が出てくるのもこれが初ですね。潔世一がカイザーの前で家族の話題を出したのもこれが初めてです。カイザーの安定を見抜いていて、踏み込まれた一歩を受け入れようとしています。

 

 

・蒼天(カイザー視点)

四天における春の空、九天における東の空の事

カイザーがいつか日本に行こうと提案します。潔世一が育った国と、潔世一を育てた家族の事を知りたくなったからです。こんなに偏見なく懐の大きな人間を育てた家族もまた、懐の大きな人間なんだろうという潔世一への信頼が根底にあります。

 

 



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