たまにはヒナアルで
最近、……くうちゃんがかまってくれない。
いや、私だってわかっているのだ。
普段が異常であると。
私だって、それまでの彼女の生活をアコから聞いている。
睡眠時間は三時間でそれ以外は誰かを助けたり、執務室での書類仕事。
それを考えれば、今、便利屋にいる間私にべったりと甘えている時間があるのは、恐らく彼女の周りから見れば、たくさん一緒にいるといっていいのだろう。
「行ってくるねっ」
そういって、我が家から飛び出してゲヘナへと走る彼女は、健全なのだ。
でも、……。
「アルちゃん、流石に猫に嫉妬は……」
「分かってるわよっ」
そう、猫……。
うん、猫、かわいいから、分かる。わかるけれど。
毎日猫についてかわいい顔をしながら報告してくるくうちゃんを見てると、胸が、もやもやする。
「……しょうがないなー、アルちゃん。はい」
そんな私を見かねたのか、ムツキが、差し出してきたもの。
「こ、こんなの」
それを見た私は、動揺する。
こんなものは、アウトローらしくない。なんていって、普段なら私も付けなかった。
だけど……。
「いいの?このままだとー……もう、来なくなっちゃうかもよ?」
たった、それだけの言葉で揺らぐほどに、今の私は不安定だった。
「ただいまっ」
仕事を終えた、今の私はくうちゃんモード。
今日も今日とて、溜まったお仕事をこなして、便利屋オフィスへと帰ってきた。
今日は、りっちゃん以外はちょっと立て込んだ仕事があるらしく、いないらしい。
つまりは……甘え時。
オフィス部分にはいない。なら、共有のスペースだ。
弾む気持ちを抑えることなく、私はスキップしながら、仕切りを開く。
「そ、その、おかえり、なさい。くぅ……ちゃん」
彼女の姿を見た私は、その場ですんっと、停止する。
視界に、りっちゃんの姿を焼き付ける。
普段の格好から、コートを外しただけ。
たった、それだけではあるけれど。彼女の抜群なスタイル。
サイズで言えばりっちゃん以外に軍配が上がることは珍しくないけれど、それでも、総合的に見れば、彼女のスタイルは素晴らしい。幼馴染の私やむーちゃんは喝さいするほどに。
けれど、そこに、そこにたった一つ。
ワンポイントだけの装飾。猫耳が加われば、どうだろう。
天使か。いや、悪魔だったわ。
しかも、布団に寝転がって、こちらを見上げるように、その上、高まった羞恥により頬を赤らめて瞳は少しだけ潤んでいる。
普段であれば、まずないだろう視点の逆転
「……なるほど、そういうことね」
「え?ちょ、ちょっとくう!?」
「大丈夫、今日は私が優しくする番だから」
据え膳を頂かないのは、女の子にとっても恥だってのを、この子に教えてあげないとね?