たぶん続きの(仮)

 たぶん続きの(仮)


 程好い固さのマットに、広がる天井。

 顔にかかる髪がくすぐったく、かと言って、体にかかる体重のせいで思うようには動けない。

 仕方がないので、唯一自由に動かせる手で相手の髪を払い、耳にかける。

 ――動かないのなら、いい加減、退いて欲しい。

 何が起こったのか分からないという顔のまま固まって、既に数分は経つだろうか。

 キスの一つでもしたら、この眠れる王子は起きてくれるだろうか。

 じっと顔を見つめ、頬に手を添える。

 そういえば、普段、肩や手に触れることがあっても、頬に直接触れるのは初めてかもしれない。

 触れた指で頬をなぞり、その形を確かめる。思っていたよりも柔らかいそれは、心地よく手の平に馴染む。

 「あ……その……すまない」

 ようやく、思考の淵から帰ってきたのだろう。気まずそうに顔をそらし、立ち上がろうとする彼の胸元のシャツを掴み、訊ねる。

 「しないんですか?」

 「なっ!?」

 なにとは言っていない。ただ、訊ねただけだ。ふたたび固まった彼を目にして、小さく溜め息を吐く。

 時間は午後8時。寝るにはまだ早い時間だ。かき集めていたはずの覚悟はとうに霧散して、今はこの状況をどうしようかと考える。

 ――折角、二人で初めての旅行なのに。

 思っていても仕方がない。今はまた、彼が動きだすのを待つとしよう。

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