たとえ一歩が遠くても
「…………」
ルフィに子分盃を交わした”バルトクラブ”の船長バルトロメオ率いる「ゴーイングルフィセンパイ号」にて。
夜も更け、波の音以外静寂に包まれた甲板上。いつものように鍛錬を終えたゾロは月を見上げ物思いに耽っていた。
その対象は麦わらの一味の最古参、ウタのことだ。
最初にその存在を明確に認識したのは、ルフィの仲間になり船旅を始めてからだった。
あまりに不可思議な動く人形の姿に驚き、「こいつも仲間だ」と言ったルフィの言葉を素直に受け入れたのは懐かしい記憶だ。
それから次々と仲間が増え、船も手に入れ、一端の海賊らしくなっていった。
その中で、人形故にできることは少ないなりに仲間として努力していたウタの姿を覚えている。
鍛錬に興味を持っていたのか時折眺めていたり、気が付いたら鍛錬中の自分の身体によじ登っていたりもした。
刀の手入れや、料理の簡単な手伝いなどできる範囲で力になろうとするウタを微笑ましくも思ったものだ。
立ち塞がる多くの障害、多くの敵はウタのことを「役に立たない人形」と蔑んでいたが仲間の誰一人としてそれを認めなかった。
ウタは立派な”仲間”なのだと、全員が胸を張って言い続けた。
だからこそ、「ドレスローザ」で仲間が落とされていた地獄に怒りを覚えた。
ウタが12年もの間奪われた人としての全て。それに対する落とし前は必ず付けさせると心に決めた。
結果としてあの国を支配していた「ドンキホーテファミリー」は完膚なきまでに叩きのめしたので、ケジメはつけられたと判断していいだろう。
問題はそこからだった。12年ぶりとなる人間に戻ったウタの世話だ。
今のところは残っていた麦わらの一味……特にロビンとルフィが支えつつ生活に慣れていく状況だ。
バルトロメオなどはウタの行動範囲内にすぐさま手すりなどを追加して万が一がないように備えている。精力的な男だ。
自分と言えば、元々他人そこまで親身になって支えられる性格はしていないと分かっているため、
敢えて一歩引いて見守るだけに留めている。
いくら12年の時間を取り戻すため、大切な仲間のためと言えど、
誰も彼もがウタに構い続けるのはそれはそれで彼女も気疲れしてしまうだろう。
それに、「実は人間だった」と言われて今更態度を変えられるような器用さは自分にはない。
つまりは適材適所という奴だろう。自分は普段通りウタと接し続けようと心に決めた。
無論、リハビリ中のウタに対して無神経になりすぎないように自分なりに注意はするつもりだが。
(とはいえ……)
聞くところによると、ウタはルフィの幼馴染だったという。
率直に言って、驚いた。恐らく聞いた仲間の中で自分が一番驚いただろうと確信するほどに。
考えれば推測はできることだった。
幼少期に”赤髪”のシャンクスから譲り受け、それから10年以上も共に過ごしていたと聞いていたのだから。
同時に、何故ウタが人形から戻った時にあれほどルフィが怒り狂っていたのかという疑問に対する納得の答えであった。
――いつか必ずおれかお前が世界一の剣豪になるんだ!!
――どっちがなれるか競争するんだ!!!
――……!!
想い浮かぶのは遠い記憶。今も色褪せぬ誓いを立てた日。
――バカヤロー……!! 弱いクセにさ……
――約束だ
己との約束を果たさず死んでしまった幼馴染。
あいつのいる場所まで届くように”世界一の剣豪”になることを誓った運命の日。
ルフィが受けていたのは、自分にとってあの約束を忘れさせられたに等しいものだ。
(ぞっとしねェな)
そんなことを思いながら、ふと横に置いた刀を見る。幼馴染の遺した一振りの名刀。
あるいは、もしかしたら、ある日突然あいつが何処かから……
(くっだらねェ…)
頭に浮かんだふざけた妄想を振り払う。
あいつは死んだ。遺体をこの目で見た。そして自分は誓いを立てた。
それが全てだ。ありもしない希望に縋るなど、無様にも程がある。
ルフィとウタの再会は奇跡のようなものだ。そんなものを期待する方が間違っている。
「ん……?」
己の未熟さを恥じ、明日以降の鍛錬を練り直そうと考えていると周囲に人の気配を感じた。
誰かがまだ起きていたのかと気配がする方向へと視線を向ける。
(またか……)
ゾロの視線の先には、夜風に当たるウタの姿があった。
ウタが人間に戻ってからこういうことは何度もあった。恐らくロビンやルフィは気付いているだろう。
人間にとって当たり前の睡眠ですらウタは奪われていた。だから眠りが浅くなったり、眠れないというのは仕方のないことだ。
しかし、夜眠れていないウタの姿はゾロが認識したものだけでも既に片手では数えきれない回数に登っている。
最初の数度は「そんなこともあるだろう」と見守るだけに留めていたが、流石にそろそろ見過ごすことができなくなってきた。
日中、仲間たちと過ごしている時は常に明るく振舞っているウタと今の姿の落差には歪さも感じる。
無論聞かれたくない、言いたくないことはあるだろうが自分の見た印象としてウタは一人で溜め込むタイプの人間だ。
ガラではないと思いつつ、ゾロは立ち上がりウタに声をかけるべく足を進めた。
「よォ、また眠れねェのか」
「あ、ゾロ……」
ゾロが声をかけるとウタが静かに振り向く。
「ううん、だいじょうぶ!! ちょっと目がさえちゃってるだけだから」
「…………」
戻った直後より大分マシになったが、いまだ舌足らずな喋り方でウタはゾロに笑顔で返答する。
一瞬、その顔に憂いと苦悩が浮かんでいたのをゾロは見逃さなかった。
「ムリしてんじゃねェか」
ウタを気遣うにしても慎重な駆け引きというものをする気は起きない。
だから、ゾロは自分が感じたありのままを率直に伝えることにした。
「まだ戻ったばかりで慣れねェことも多いだろうが」
「ムリに明るく振舞うより、色々溜まってるもん吐き出す方がいいんじゃねェのか」
これが本当に心から喜んでそうしているのなら、何も言わなかった。
だが今の表情はどう見てもそれだけではなかった。
一人で悶々と何かを考え込むよりは、自分のような男でも話し相手になる方が幾分マシだろう。
そう思い、ゾロは自分の考えを伝えた。
「……それ、は」
ウタの先ほどまでの明るい表情が一変する。
見抜かれたことへの驚愕、隠してきた不安。それらが綯い交ぜになった瞳が揺れる。
そのまま黙り込んでしまったウタを見つめる。
これ以上は踏み込み過ぎだ。あちらから吐露しない限りはこちらから何かを言うべきではない。
ウタがこのまま誤魔化すというのなら……明日それとなくルフィに伝えることにしよう。
ゾロはウタが口を開くのを静かに待つ。
そうしてどれくらいの時間が経ったのか。ウタがポツリと呟く。
「…ほんとうは、不安なの」
それはか細く、ともすれば波の音にかき消されるほどに小さな声だった。
「これはゆめで、私はまだ人形のままで」
「みんなに、ルフィに置いていかれるんじゃないかって」
取り戻せたからこそ生じた恐怖。手に入れた希望が自分の妄想なのではないかという不安。
そんなことはないと頭で理解しようとしても、全身に纏わりつく恐れは消えてくれなかった。
「へんだよね? ようやく元にもどれて、ようやくルフィたちとおなじ足であるけるのに」
「みんな、私よりずっと先にいて……置いていかれるのが、こわい」
「だから自分は大丈夫だって証明したかった……か?」
ゾロの言葉に小さく頷く。
理性的な部分がそれは自分の妄想だと告げる。恐怖は消えない。
人形だった頃の感覚でまだ慣れない身体を動かし痛みが走る。恐怖は消えない。
今感じている全てが自分は生きていると実感させてくれる。恐怖は消えない。
消えない恐怖が炎となり自分を追い立てる夢を見た。
必死に逃げる自分の前には家族である赤髪海賊団、仲間である麦わらの一味がいた。
彼らに追いつこうと必死に走っている内に、気付けば自分の身体は人形の姿に戻っていた。
小さな足を必死に動かしても追いつけない。
小さな手を必死に伸ばしても届かない。
声を上げようとしても出てくるのは壊れたオルゴールの音だけ。
やがて炎は自分に追いつき、その全身を焼き焦がす。
彼らは燃える自分に気付くことなく先へ行き、やがてその姿は見えなくなった。
そんな夢を見てから、眠ることが怖くなってしまった。
こんなものは自分のネガティブな思考が見せるただの夢だと、消し去ることができなかった。
人形であった頃なら、諦観混じりに割り切れた。
今の自分は人形なのだから、人間である彼らに追いつけるはずがないと納得できた。
だが人間に戻った今は、同じ速度で歩かなければ置いて行かれるのではないか?
そんなことはないと言い切れるのに、一度芽生えた恐怖は拭い去ることができない。
だから、空元気でも明るく振舞うようにした。仲間と共にいる時間は楽しく、そんな恐怖を感じなくて済むから。
……私はあなたたち”麦わらの一味”の仲間としてやっていけるんだと証明したかったから。
私は弱くないと、自分の弱さを隠して叫んでいたのだ。
自分のありのままをゾロに吐露する。
弱気でネガティブな私の思考は、ゾロにどう思われたのかが気になって怖くなっている。
仲間に相応しくないと思われてしまったか?軟弱な奴だと失望されたか?
そんなことをゾロが思うはずないと冷静な頭が告げるが、一度始まった負の思考は中々止まってくれなかった。
「いいんじゃねェのか」
「……え?」
だから、ゾロの一言は私にとって衝撃だった。
「あんまムリしすぎてブッ潰れるくらいなら止めろと言うつもりだったが……」
「お前が『負けたくねェ』って叫んでるんだったら、おれは止めねェよ」
「……まけたく、ない?」
私の呟きに「おう」と短くゾロが応える
「お前は自分の中にある恐怖と戦ってる」
「そんな恐怖を感じる自分が嫌で、変わりてェんだろ?」
「うん……」
仲間を信じていないかのような恐怖を抱く自分に自己嫌悪して、それを否定したい。
ゾロが言った言葉は紛れもない私の本心だ。
「ならそれは『お前だけの戦い』だ」
ゾロは私の目を真っすぐ見つめている。
「必死こいて戦ってる仲間に『止めろ』とは言わねェ」
その目は強く、仲間を信じるという覚悟に満ちていた。
「ただ、おれ達は頼れ」
「お前の戦いに加勢することはできねェが、疲れたって時に支えるくらいなら全員できる」
「そんくらいはこっちにもやらせろ。じゃねェとナミあたり怒るぞ」
ウタの直接的な力とはなれないが、手助けならば皆喜んでするだろう。
己の内にある恐怖との戦い。一人だけで立ち向かう戦いであろうとも、ウタは決して一人ではないと伝える。
「それに、お前はおれ達の中じゃ一番最初の仲間だろ」
「『後輩』はドンドンこき使っても構わねェぞ? 『ウタ先輩』?」
「……プッ、なにその言いかた!!」
冗談めかして言うゾロに、なんだかおかしくなって吹き出してしまう。
でもゾロの励ましの言葉は確かに私の心に染み渡っていた。
「……うん、そうだね!! 私、がんばるよ!!」
「おお…いきなり元気になったな」
「はげましてくれたのゾロだよ!?」
そんなやり取りをしながら二人で笑いあう。
しばらくそうして二人分の笑い声が響き続けた後、ウタが静かに口を開いた。
「私、このままじゃダメだっておもってた」
「こんなきょうふを感じるような、よわいままじゃダメなんだって」
変わらなければならないと思っていた。ありもしない妄想に怯える弱い自分など消し去りたいと思っていた。
「こわくないんじゃなくて、こわいって感情もかかえながら先にすすめるようになる」
「そんな私になりたい……なるよ!!」
いつかこの恐怖すら呑み込んで、世界に歌を響かせる。
それこそが”麦わらの一味”の一人として胸を張れることになると信じて進み続けよう。
「ルフィとの”約束”もあるしね!!」
「約束か……そりゃ丁度いいんじゃねェか? 分かりやすい目標になる」
ウタの”約束”という言葉に少し反応してしまう。先ほど過去を思い出していたせいでどうも今夜は感傷的になっているようだ。
そんな時もあるか、とゾロは一人笑った。
「ありがとう、ゾロ」
「おう」
慣れないことをしてしまった。ともあれウタも少しは肩の力が抜けたようだ。
小気味良い満足感に身を浸しながら、しばらく二人で星空を眺める。
そうしていると、ウタがゾロに顔を向ける。
少しだけ気になることがあった。
「ゾロにはあるの?」
「何がだ?」
「だれかとの約束」
ウタの質問に、先ほどの思い返した記憶が脳裏をよぎる。
「…………ああ」
どう返答したものか一瞬だけ悩み、結局短く答えるだけになってしまった。
「……ごめん」
突然ウタが申し訳なさそうに顔を歪め、こちらに向けて謝ってきた。
今の問答の何処に謝る要素があったのかに眉をひそめる。
「何が」
「見えちゃった」
「……!!」
何を見たのか、聞かずとも分かった。今の会話で察せないほど自分も鈍くはない。
2年前、更なる強さを得るためにプライドを捨て王下七武海の一人”世界最強の剣士”ミホークに師事していた時に聞いたことがある。
類稀なる”見聞色の覇気”を持つものは、時として他者の感情や心の声のみならず”記憶”をも読み取ることができるのだと。
元々あった才覚が長年話すことも眠ることもできず、ただ”見て聞く”ことだけしかできなかった人形化により意図せず研ぎ澄まされることになったのか。
そんな風に感心していると、ウタが顔を伏せて縮こまっていく。
どうしたのだろうと一瞬首を傾げたが、すぐに黙って見つめている自分が怒っていると勘違いしているのだと気付く。
「別に隠してるわけでもねェし、気にすんな」
「でも……」
ゾロの言葉になおも食い下がろうとするウタ。
「おれ達の中じゃルフィの次に付き合い長ェんだ」
「今更遠慮なんていらねェよ」
「それでも嫌だって言うなら、もう少し自分で制御できるように修行するこったな」
仲間に知られて困ることでもない。ただ聞かれなかったから言わなかっただけ。
だからゾロは気にしていないのだが、問題はウタの力だ。
今のように制御できていない場合、自分とは違い見られることを忌避するものや見たくないものまで見えてしまうことだってあるだろう。
未だ道半ばの身ではあるが、ウタが望むなら修行にも付き合ってやろうと思案する。
そのためにもまずはこの沈んでいる仲間をどうにかするのが先決だ。
不安げな瞳でこちらを見るウタを見据え、ゾロは口を開く。
「それに……」
「?」
今はまだ多くの壁が彼女の前に立ち塞がり、その歩みを止めようとする。
それでも仲間と共に、きっと一歩を踏み出していく。
その中で、自分は自分のやり方を貫くとしよう。
「そんなこと一々気にしてるようじゃ、あいつに向かって”世界一の剣豪”なんて名乗れねェだろ」
ゾロは何も変わらない。ただ麦わらの一味の一員としてやるべきことをやり、己の”夢”への道を走り続ける。
ただ、その道を共に歩む仲間の姿が変わっただけ。
目の前の仲間を守る刃にこれまでより力が幾分か籠められるだけ。
ゾロにとっては、それだけで十分だった。
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「……もう充分君臨したろ。席を空けろお前ら」
ワノ国の上空に浮かぶ「鬼ヶ島」の沿岸。
そこで”四皇”の一人”百獣のカイドウ”の右腕にして百獣海賊団最高幹部筆頭”火災のキング”とゾロの戦いが繰り広げられていた。
ルフィの……そして親友との”約束”のため、”四皇”の座に君臨する”最強”を崩す。
仲間と己の”夢”の前に立ち塞がるもの全てを斬る。その覚悟を持って目の前に立つキングを睨みつける。
「”閻王…三刀流”」
「調子に乗るな…カイドウさんこそ『海賊王』になる男!!」
ゾロの三刀に使用者の命すら奪いかねないほどの凄絶な覇気が纏わりつく。
その様を見てなおキングは己の信念を揺らがせない。
あの人と己の”夢”の前に立ち塞がるもの全てを消し炭にする。その覚悟を持って目の前に立つゾロを睨みつける。
思い浮かぶのは始まりの記憶。政府に囚われた地獄の中で出会い、この人についていくと決めた全ての始まり。
――お前は世界を、変えられるか?
「そして……」
――おれにしか変えられねェ!!!
あの日”ルナ―リア族のアルベル”は消え、百獣海賊団”火災のキング”が生まれた。
地獄より己を連れ出し、世界を変えると豪語した強き男に惚れ込んだ。
だから”ジョイボーイ”を待ち望むのは止めた。おれはあの人を『海賊王』にする。
それがおれの決めた”約束”だ。
「”新時代”を作り、世界を変える男だ!!!」
キングは叫びと共に握る一刀に業火を纏わせる。
目の前の男は確かに強い。その男が信じる”麦わら”のルフィも。
だがカイドウさんには及ばない。あの人こそが『海賊王』になるのだ。
「……そうか」
キングの叫びを聞き、ゾロは声を溢す。
それは互いに高まる戦意、決着の時が迫る戦場に似つかわしくない穏やかな口調だった。
「なら、こっちの勝ちは決まったな」
「どういう意味だ!!」
――そういや、お前とルフィの約束ってのは何なんだ?
――えっとね……
「どうもこうもねェよ……」
――ハハ!! そりゃまた随分とデカい”夢”だな
――へん、かな?
――おれらの船長ならそんくらいデカいもん持ってなきゃ困る……
かつての語らいを思い出し、笑みがこぼれる。
我らが船長も大概だと思っていたが、まさか彼女まで似たようなものだったとは。
ある意味お似合いだと、大笑いしてしまったものだ。
――お前の”夢”もな
――……!! うん!!
だからこそ、躊躇いなくこの刃を振るえるというものだ。
己の”夢”と、仲間たちの”夢”。その全てを叶える為に地獄すら支配する王となり、全てを斬り捨ててみせよう。
「こっちには”新時代”作ろうってのが”二人”もいるんだ」
刀に纏う覇気が更に膨れ上がる。ゾロの命を全て吸い取るかのように覇気はその威圧感を増し、研ぎ澄まされていく。
”海賊王”。”世界の歌姫”……それ以外の仲間たちの”夢”も、どれもこれもドデカいもんばっかりだ。
上等だ。全部叶えていこうじゃねェか。
「負けるわけがねェだろ!!!」
地獄の悪鬼を思わせる覇気と共にゾロが不敵に笑う。
強く足を踏みしめる。どれだけ果てが遠くとも、その一歩は確実に”夢”へと続いていると信じながら。
今はまだ響かぬ”鼓動”と”歌声”が、確かにその耳には届いていた。