たったひとりの海援隊

 たったひとりの海援隊


「あなた、坂本さんじゃありませんね」


 ────彼は何を言っているのだろう。


「だったらなんだって言うんだい」

「────斬ります。私にはもう、それしか坂本さんのために出来ることがない」


 やめてくれ。そんなこと君にさせたくない。

 君がどれだけ優しいか。君がどれだけ僕を慕ってくれているか知っている。

 君にそんなことは出来るはずが────


「斬れなかったね。躊躇わなければ僕の首に刃は届いていたのに」


 違う、僕はこんなことをしたいんじゃないんだ。

 僕は、僕は話し合いを。

 みんなを、助けたいんだ。

 彼を殺すなんて、そんなことはしたくないんだ。


「君だけじゃない。勝も西郷も大久保も皆殺しだ」


 僕は、みんなを…


「さかも、と、さ…」

「まだ息があったのかい」


 彼がずっとそうしてきてくれたように。

 僕は、彼を。


「とめられ、なく…ごめ、な、さ…」

「でも、これでトドメだ」


 ああ、そうか。

 僕は、僕ではなくなっていたのか。

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