それはそれとして、不定期に伊織は誘われたしセイバーはキレた

それはそれとして、不定期に伊織は誘われたしセイバーはキレた


*注意書き

・エイプリルフールの男武蔵×伊織くんネタ

・四月馬鹿に頭がやられちまったやつの戯言なので口調も関係性も何もかも全てが幻覚であり捏造

・こいつら師弟なのに助平したんだ!なお本番は書いてない

・なぜか最終的に剣伊に落ち着いてしまったので男武蔵×伊織要素だけ見たい人はラストを見なかったことにしてください


以下本文


「おうおう大きくなったなぁ伊織!!」


 宮本伊織は困り果てていた。

 ことの起こりは一時間ほど前、英霊召喚システムに予定外の反応あり、とアナウンスが響き渡ったことから始まる。

 珍しいこともあるものだと目を見開いた伊織とは裏腹に、近くにいたランサー、クー・フーリンは、また何処ぞの英霊が押しかけてきたのかねェ、とスピーカーに目を向けて、やれやれと首を振った。

 どうやら古参のサーヴァントである彼からすれば、このような事態は初めてではないらしい。というより、伊織が此処に召喚された時と全く同じケースだと聞かされた。

 所属も属性も、多種多様な英雄英傑を人手不足の四文字で受け入れるカルデアの懐の広さには感服するばかりだ。伊織は畏敬の念を送った。

 それから暫くして名指しで指名され、何事だろうと首を傾げつつも、指定の場所まで赴くことになった。記憶のない己と関わりのある人物なのだろうか。今更抜け落ちた記憶にさしたる執着はないが、それはそれとして、気になるものは気になるというもの。

 しかし、伊織を待ち受けていたのは、万一のためマスターを守るべく警護の任をしていたセイバー、ヤマトタケルと、人類最後のマスターである藤丸立花、万能の天才が残した被造物、レオナルド・ダ・ウィンチ(グラン・カヴァッロ)。

 そして、全く覚えのない男性のサーヴァントだった。

 軽装ではあるが鎧を身につけた和装の男。恐らく生きた時代は伊織とさして変わらないだろう。年嵩はあるが、その身に漲る生命力と、振り抜いた刀身のような鋭さは、決して侮って良いものではない。

 呼び出されたは良いものの、自分はなぜここにいるのだろうか。伊織は疑問に思い、ダ・ウィンチに目線を向ける。

 ダ・ウィンチは視線を受けて目の前の男の真名を告げる。セイバー新免武蔵守藤原玄信。その全盛期。どうやら剪定事象から召喚された伊織や、もういない女の武蔵とは違い、汎人類史、若しくはそれに近い世界線からきた可能性が高い。カルデアが誇る万能の天才の後続機はそう語り、召喚時に問題はなく、本人も聖杯からの知識で人理の再編には意欲的である。軽く検査もしたが、異常も見当たらない。よって、カルデアのサーヴァントとして活動してもらうことになったと説明した。


「それにあたって、彼の知人に案内役をしてもらいたくてね」


 穏やかな気性の君なら、たとえ別の世界の師を相手にしても、上手くやっていけると思ったのさ。ダ・ウィンチは美しくウィンクする。

 なるほど、呼ばれた理由はこれか。伊織は納得し 「相わかった。その任、請け負おう」と頭を下げた。

 主君と仰ぐマスターは、この後周回があるとかで顔の知れた(厳密には伊織と男武蔵はそれぞれ互いの知る本人とは別人だが)仲である伊織なら安心だろうとカルデアの案内を頼んで走り去ってしまった。ダ・ウィンチも開発中のものがあるとかで、あとは頼んだよ、と微笑み退室してしまう。

 そのため、伊織は師とはいえ別の世界の者に強くでることもできず。されるがままに振り回されているのが現状である。

 なにせこの男、スキンシップが過剰なのだ。出会い頭に名を聞かれ、問われるがままに宮本伊織と名乗った次の瞬間、破顔し頭を撫でられたのが数分前。

 髷を結っていた頭はぐちゃぐちゃに掻き混ぜられ、人様に見せられぬ有様になってしまったため元結は解いてしまった。

 大きくなった弟子に感慨深くなったのか、肩に腕を回され、頬擦りされる。無精髭が顔に擦れて微妙に痛い。


「し、師匠。戯れはおよしください」

「いいだろう別に。男同士だぞ? なにを恥じることがある」

「それは、そうなのですが」

「嫌がっているだろうオトコムサシ!イオリから離れろ、はーなーれーろー!」


 かつての師に逢えるのは望外の喜びであったが、それでもこうも可愛がられると既に元服を迎えて久しい身である手前、気恥ずかしさが僅かに勝る。

 いじらしくも赤面(男武蔵やセイバーといった、彼を深く理解している者しかわからぬほどに些細な変化であったが)し、恥いることしかできない伊織の様子を見るに見られなくなったのだろう。セイバーはぷんすこと怒ってぐいぐいと伊織と男武蔵の間に入り込み、男武蔵を追いやろうと押しのけ始めた。

 筋力Aは伊達ではない。流石の男武蔵も日の本の大英雄相手には堪えるものがある。取り敢えず、伊織の肩に回していた腕を下ろして、眼前の小さな反逆者に目を向けた。


「む、なんだ」


 不機嫌そうに鼻を鳴らしつつ、セイバーは伊織の腰にひし、と抱きつき男武蔵を睨みつける。

 男武蔵はセイバーを上から下までジロジロと不躾に眺めて吟味した後、重苦しいため息と共に言葉を吐き出した。


「いやぁ残念だ。あともうちっと若けりゃなぁ」

「貴ッ様イオリに飽き足らず私にまで!!」

「こらセイバー、室内で絶技は止めなさい。せめてしみゅれぇたぁで」

「云ってる場合かイオリ!!」

「ハハハハ!!」

「それから師匠も。セイバーが怒ってしまいますので冗談は程々に」


 呵呵大笑。豪気かつ朗らか。大胆にして不敵。

 その姿に伊織はかつて話に聞いた若き時分の師を、セイバーは盈月の儀で対峙した女武蔵を思い描いた。

 

◇◇◇


 その後、当初の目的であるカルデアの案内を終えた伊織は、男武蔵と二人きりになっていた。

 やけに距離の近い男武蔵に、伊織を取られる(仲の良い友人が結婚を機に距離が離れてしまい、付き合いが悪くなることを危惧するというような健全?な意味で)と思ったのか。伊織に引っ付いてガルガルと男武蔵を牽制していたセイバーは、最終的に「ふん! イオリはオトコムサシと精々師弟水入らずで過ごすといい! ぷいっ!!」と頬を膨らませて何処へと去ってしまい、今は影も形もない。

 そのことに、最初に男武蔵強く当たってしまった手前、引くに引けず素直に『今日くらいは師弟仲良くお過ごしください』と言えなくなってしまったのだろう、と伊織はセイバーの繊細な胸中を察し、しみじみとした愛おしさを感じた。

 恐らく今頃は食堂でやけ食いしているのだろうなあ。申し訳なくなると同時に、明日は鍛錬はそこそこにセイバーが望む限り食事でも何でも付き合ってやろうと予定を変更する。

 伊織とて、中々口にしなくとも、セイバーのことを好ましく思っているのだ。このくらいは当然だろう。

 さて、そんなこともあり、積もる話もあるだろう、酒でも呑むかと伊織は男武蔵の部屋に招かれた。

 カルデア謹製の酒はサーヴァントすらも酔わすのか。互いに酒が回ると同様に口も回り、陽が落ちる頃合いまで話は弾んだ。

 元より別世界の住民とはいえ師匠と弟子、養父と養子。話が合わないわけもない。

 絶妙なタイミングの相槌に、空になれば隙を見て注がれる酒。謎に酌の才を発揮した伊織の手腕もあり、男武蔵はべろんべろんに酔っていた。

 そうして、語りもポツポツと勢いを無くし、伊織の肩に頭を置いていた男武蔵が、ふと戯れに伊織を押し倒したのが数刻前。ここがいいのか? いいんだな? とすっかりはだけた着物から手を差し入れられ、身体を弄られ始めたのだが、声のトーンから御巫山戯の延長であることは明白であったため、「ふふ、こそばゆいです師匠」と強く止めずに笑っていたのが悪かったのだろうか。段々と互いに熱が籠って妙な雰囲気になり、元来流されやすい性質であり、加えて酒で思考能力が低下していた伊織が断れるわけもなく。

 そうして、酒の勢いというべきか。いや二人とも行為の途中ですっかり酒気は抜けていたのだが、まあ、つまり。

 端的に述べると、伊織はぺろりと美味しく頂かれてしまったのである。


 そして、現在。伊織と男武蔵は、互いに生まれたままの姿で褥を共にしていた。新品だった敷布団は汗や体液でぐっしょりと濡れている。

 仰向けになり、天井に顔を向け、今宵オンナにした相手の身体を手遊びに撫ぜる男武蔵とは対照的に、伊織は男武蔵の厚い胸板に頭を預けてしなだれかかり、不定期に訪れる絶頂の余韻に浸っている。

 男武蔵の呼吸の動きに合わせて息を整えて、伊織は徐に話し始めた。


「意外でした」

「あ? なにが」

「てっきり、こちらの師匠も、壮丁には興味がないのかと」

「その言い草。何だ、そっちの己も趣味は同じか」

「……黙秘します」

「ハハッ師を相手にして墓穴を掘ったな」


 目は口ほどに物を言うとあるが、伊織もその例に漏れず目を逸らしてしまった。これではその通りですと肯定するも同義である。

 伊織は「やはり、師匠には敵いませんね」とため息と共に呟いた。


「まあ、趣味ではないのは事実だが。存外、目にかけた愛弟子とあれば、食指も動くものだな」

「それ、誇れるものではありませんよ」


 倫理の崩壊した発言に思わず半目になった。当の伊織も流された時点で人のことはあまり云えないので、それ以上は口にせずに呑み込んだが。


「大きくなって、色々変わったものもあると思ったが。尻の肉付きが良いのは変わらんな」

「んっ……」


 無遠慮に尻臀を揉まれ、先刻愛されたばかりの残滓が溢れでる。とろり、と太腿を伝う感触と、欲を孕んだ手つきに、伊織は無意識に肉の輪を締めつけてしまう。

 男武蔵は暫く、尻肉のむっちりとした柔い感触を愉しみつつ、時折菊座を指の腹で叩きながら、ふるふると震え、瞳を瞼に隠しながらも暴挙に耐え忍ぶ伊織を眺めた。

 伊織はふうふうと息を吐き、元凶である男に縋りつき、健気にも嫌がるそぶりも見せず男武蔵の判断に身を委ねている。


「ぁ、ン……ふぁ♡……あ、ぁっ♡」


 先ほど散々果て、発散させたと思っていた熱もすっかりぶり返したのか。喘ぐ声は呼吸と共にまろびでて、熱い息を溢し始める。

 興が乗ったのか、男武蔵は身体を起こし、伊織をひっくり返すようにして押し倒した。

 ぱさ、という音と共に、伊織の髪が褥に広がる。癖のある、重い前髪は重力に従い流れていき、普段は隠されている右目が覗く。

 すっかり泣き腫らした目元を指の腹で摩る。目を細め、上から手を重ねてすり、と頬を寄せる伊織にえも言えぬ感情がこんこんと湧き出し、身体を暴いた相手に親心かと男武蔵は笑った。


「さて、夜は更けたが朝は遠い。己の知る時分より歳は食ったらしいが、まだ付き合えるよな、愛弟子よ」

「そちらこそ。どうか、俺の全てを暴いてくださいね、養父上」


 煽りに付き合ってくれたのだろう。常の凛とした振る舞いとはかけ離れた、色に浮かされた蠱惑的な微笑みと、養子に無体を強いているという背徳感に、男武蔵は己の猛りが一層増すのを感じた。


「衆道だねぇ」

「でも、お好きでしょう」


 ぐり、と膝を立てて、膝頭を男武蔵の中心に押し付ける。とっくに硬さを取り戻したそれの熱を感じつつ、伊織は男武蔵の後頭部に腕を絡ませ引き寄せた。必然、男武蔵と伊織の距離は縮まる。

 互いの息遣いさえも感じ取れるほどの近さ。伊織は頭を起こし、男武蔵の耳元に「でなければ、こんな風にはならない」と、そっと囁いた。


「は、違いない」


 男武蔵は伊織の両脚を抱えて身体を屈曲させる。再び蹂躙される期待に打ち震え、ヒクヒクと戦慄く菊門に鬼頭を食ませる。

 思わず熱の籠った息を吐き出し、伊織は口を薄く開く。男武蔵は剛直をぬるつく雌壺にゆっくりと押し込んでいき、挿入るだけですっかり馬鹿になってしまい喘ぐばかりの伊織の口のあわいに舌を捻じ込み、互いの舌を絡ませた。

 ぱちゅ、ぱちゅ、と肉が粘膜を穿つ音と、ピッタリと合わさった隙間から、時たま途切れ途切れに響く嬌声が部屋を満たす。

 夜は長い。



◇◇◇



 これは蛇足であり、余談であるが。

 当然伊織は次の日ダウンした。そのため、朝になっても帰ってこない伊織を心配したセイバーが男武蔵の部屋に突撃し、朝チュンをかました二人の姿を見て脳破壊され、混乱のままに伊織を持ち帰り、それはもうすごいまぐわいをして落ち着くところに落ち着いた騒動があったりしたのだが。

 それはまた別の話。


「つまり己は結果的に体よく出汁にされたってことだ。ったく伊織お前、目合い相手がいるなら云えというに」

「俺もあの時まで気づかなかったのです。まさか、セイバーがあれほどまでに俺を、その、……好いてくれているとは思わず」

「惚気話は他所でやってくれ。まったく、他人の惚れた腫れたに巻き込まれるのは金輪際御免だな」

「申し訳ありません……」

「おうよ。分かれば良し。……まあ、なんだ。伊織、生きづらいお前のことをまるっと受け入れてくれる奴なんざそうそう現れないだろう。精々、手放さないことだな」

「———はい。重々承知しております。……その、師匠」

「あ?」

「ありがとうございます。やはり、師匠はどの世に生きていても、我が養父上です。宮本伊織の、誇りです」

「……おう」

「師匠。……師匠? 照れているのですか」

「五月蝿え! 精々幸せになれよこの馬鹿養子(むすこ)!」

「あいたっ」


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