そこで出会った少年は見覚えのある麦わら帽子を被っていた

そこで出会った少年は見覚えのある麦わら帽子を被っていた


 自分の目の前にボロボロになった相棒がいる。

 「死ぬんじゃねえぞキラー!」

 相棒がそう叫んだ所で俺は目を覚ました



 「ファファファ」

 だからおれは眠るのが嫌なんだ、眠ったらあいつらとの楽しい日々を思い出してしまうし、あの日のことを思い出してしまう。あの時相棒がおれに対して死ぬなといったのは本当に言っていたのかそれともただのおれの妄想なのかもう思い出せない。

 「顔、洗いに行くかファファファ」

 そうつぶやくとおれは立ち上がり洗面所に向かった。歩いていると床の板がギシギシとなった。

 「この船ももうダメかファファファ」

 あの日あいつが死んで遺体を自分たちの故郷に埋葬した後、おれはずっとこのヴィクトリアパンク号に引きこもっている。船を燃やすことも一度は考えたがこれ以上あいつらとの思い出を失うことに耐えきれず結局できなかった。

 いま外の世界はどうなっているのだろうか、ずっとここに引きこもっているからほとんど情報が入ってこない、そもそもおれは何年ここにこもっているのだろうか、もしかしたらたった2,3年かもしれないし20年以上たっているかもしれない。

 そう考えているうちに洗面所についた。顔を洗いタオルで水気を取ると鏡に映っている自分と目が合った。目は泣きはらしてあいつの髪の色みたいに真っ赤になっているし、ほとんど眠れていないから目の下は隈で真っ黒になっている、髪も伸び放題で荒れ、化粧なんてもうしばらくやっていない、そして口元は、ずっと笑顔のままだ。

「ファファファ、ファーファファファ」

 洗面所を出た俺は船内を歩きながら笑って、泣いていた。smileのせいでまともに泣くことができず悲しい顔すらできない、船内に俺の笑い声が反響してまた笑ってしまう、この笑い方を馬鹿にするやつも一緒に笑ってくれる奴もいないから最近はマスクもあまりつけていない。こんなみすぼらしい姿をあいつに見せることなんてできないから墓参りにもずっと行っていない。今のおれはただ笑うだけの生き人形だ。

 じゃあなぜおれはまだ死んでいない、それはあいつに死ぬなと言われたのか、それともこの船を残して死んでいくのが嫌だったのか、今となってはもう分からない。そうこうしていると船の外から声が聞こえた。 


「海賊船だ!しかも船首が恐竜の骨の形してるぞカッケー!」

「こ、こんな幽霊船みてーな船だ、ぜってーなんかしら出るに決まってるだろ」

「幽霊船にしちゃあ船の修繕箇所が所々新しい、もしかしたら中に誰かいるかもしれねぇ」

「てことは、あそこに乗り込めば何かしらの情報は得られるってことだな。」

「あれ、あの海賊船どっかで見たことあるような・・・」

 

 外の声はほとんど聞き取れなかったがきっとまたこの船を狙ったどこの誰かも知らない荒くれものが来たのだろう。ちょうどいい、食料も少なくなってきたしあいつらを殺して物資を奪おう。そう考えるとおれはパニッシャーを手に取りノロノロと甲板に向かって歩き始めた。

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