すまない
・>>150のシチュエーション
・同軸リバ
・直接的な描写はない
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「っ、すまない…もう…」
「ああ、うん。ちょっと待って…今抜くから」
ゆっくりと今まで埋まっていたものが抜けていき、何とはなしに喪失感を覚える。
もともとそこには何もなかったはずなのに喪失感とは。おかしな話だ。
「おいで」
「ん」
ゆっくりと上体を起こしたところに、ぽすっと背中を預けられる。鍛えられた肉体と、高い体温。元々の代謝がいいのか、それとも行為の余韻のせいか。
どうしても彼我の体力の差で俺の方が先に限界が来る。
その後に持て余している様子の彼を他の手段で慰めようと言い出したのは、果たしてどちらからだっただろうか。よく思い出せないほどには続けている。
「触るぞ」
「…ん」
そっと手を伸ばす。お互いがどちらの役割の時でも、触る場所は同じだ。
男という性の発散方法は回数が分かりやすくていい。
「──るま、」
いつもの慣れた一連の流れを何度か繰り返す。
視界には後頭部とその下のうなじが映っている。
刈り上げられた下半分の髪が少し伸びている。当たり前だが、今の状況では落ち着いて整える暇もない…こんなことをする時間はあるのにか?
「日車」
「…!ああ」
いつの間にか虎杖がこちらを振り向いていた。
とっさに目線を下げ、いつものように口元の傷に意識を向ける。
他の部分とは色が違うそこは、言葉が出るよりも少し早いタイミングで震え出すのだと知るほどに、何度も視線をやっている場所だ。
「──ひぐるま。ね、聞いてる?」
「…すまない。どうした、もういいのか」
駄目だ。今日はどうにも思考があちこちに飛んでいる。
上の空の俺を咎めるように、きゅ、と。常の膂力に比べると幼い子供のようなやわさで腕が掴まれた。
…実際子供なのだろうに。
「ごめん…最近そっちだけ、じゃ足りん…くて…」
「──は、」
やわい力のまま掴まれる位置が腕から手の方へ滑るように移り、そのまま指が違う場所へと導かれる。
「…こっちも、いっしょにさわって」
ああ、俺がこの少年を壊したのだ。
そんな言葉が、あまりにも今更に脳裏に浮かんでいた。