これまでとこれからの道のり
「トレーナーさん。もしよかったら一緒にレース場を歩かないか?」
卒業式を終えて、そして人生最大の告白を終えて結ばれたあたし達。
あたしはそう言ってトレーナーさんを外に連れ出した。
普通に歩いてみたいと思っていた。熱くなりすぎるこの思いを落ち着かせようとした。でも何よりトレーナーさんと一緒に歩いてみたかった。
卒業式だから今日は他の子のトレーニングもお休み。
式から時間も経っていたから人もいない。
そんなコースを二人で歩きながらお互いの昔話をする。
一通り話して辺りを見回すとまだ少ししか進んでいない方に驚いた。あたし達がいつも走る時はコンマの世界の戦いだというのに、歩くとここまでゆっくりなのかと改めて思う。
互いの昔話が終わると次は二人の担当とトレーナーとしての思い出話。
あの時のレースの事やあの時の出来事の話で盛り上がった。
ふとあたしが横を向くと半分程進んだのだろう。普段見れないコースから見た光景。
すると誰もいない筈なのに、駆け抜けるウマ娘達の姿が…そしてあの時のあたしの姿が映っていた。
一瞬で通過するこの道…だけどそこには多くの想いと歴史が詰まっている。
あたし達だけじゃない。トレーナー達やレースに関わる全ての人達の想いがここにあると、だからこそ今踏みしめている一歩は誰にとっても重く、深いものである…そう思えた。
あたし達の卒業までの思い出話はあっという間に過ぎていき、そしてあの時の告白の話になった。
互いに嬉しかった事、互いにためらっていた事、二人の本音を晒し合う。
その話を終えたあたりでちょうど長い様で短いコースの歩み、そのゴール地点へと着いた。
今なら分かる。さっきまで歩いていたコースはあたし達の"これまで"の道筋。
互いの思い出話の時はそれぞれのペースで歩いていたけど、あたし達が出会ってからの話になるにつれて同じ足並みになっていた。
そうしてあの時の告白の話を終えて、"これまで"の道のりはお終い。だからこのコースはここでゴール。
でもそれで終わりじゃない。
むしろここから始まりなのだから。
果てしなく続く道のり。
どんな道のりかは分からない。
レースの様にライバルがいるわけでも無い。
———それでも、構わない。
どんなに厳しい道のりでもトレーナーさんと一緒なら怖くは無い。
今までの様に走るあたしとあたしを迎えるトレーナーさんと言う関係ではなく
共に二人三脚で道を歩み駆けていくのだから…
「それじゃ行こうか、エース」
「ああ!トレーナーさん!」
そうしてあたし達は支度を整え、正門へ向かう。
さっきまでのが"これまで"の道のりならば、向かっている正門は"これから"と言う名のゲート。
ここを通れば新たな道のりが待っている。
「どうしたのエース?」
「ここの正門を出る時は二人一緒に…」
「分かった。行くよ…」
「「せーのっ!」」
あたし達は二人で手を繋いで、息を合わせて同じように新たな一歩目を歩み始めたのだった。