これが最期だからありったけの愛をお前に
優しさだけで救えるならば★ここだけ宿儺から小僧への好感度が https://bbs.animanch.com/board/2589332/ の設定をもとにした平安宿儺による脹相私刑ネタ
※宿儺により追い詰められる虎杖の心の支えとなったことで、脹相への感情は原作よりも感謝の念と心の拠り所とする割合が大きい
※成分表示__切断、血、火傷、断面、肉片などのグロテスクな表現、原作に無い術の使用、捏造妄想解釈等あり
※自分で脹相はそんなこと言わね~~~と解釈不一致バトルしながら書いたためお兄ちゃん像のブレがあっても大丈夫な方だけお楽しみください

脹相は宿儺に隔絶した力を今まさに向けられるその間も穏やかに笑みを浮かべて弟に向けた優しい思い出語りと気遣いの言葉を紡ぎ続ける

たとえそうすることでより虎杖の表情が悲痛に歪められようとも
爪が剥げる程宿儺に組み付こうとも、懇願の声がより悲壮感を帯びようとも
脹相は宿儺の『解』をその身に受けながら虎杖へ言葉を送り続ける
生きることを望み、祝福し、存在を肯定し、労り、少しでも宿儺に奪われた”あたりまえ”を与えてやりたいと思った
脚も切断されたことにより、少し見上げなければ目が合わせられなくなった
それでもまだ口を動かすことに不自由はない
宿儺は己の着衣が乱れるほど必死に縋り付く虎杖の様子を楽しむより、下奴へ心を預け過ぎていることへの不快感が勝る。苛立ちを払うように指を振れば虎杖の両足は切断され容易く崩れ落ちた。ズシャリと地に落ちてなお、脚にしがみついて見上げてくる。その表情に常から生得領域で躾けてやっているときに見られる諦念と媚びが混じり、宿儺の機嫌を幾分か上向かせる。
お喋りが過ぎると顔へ放たれた『■』を角度をつけた大量の血の壁で逸らし、右半分のみの燃焼に抑える。まだ、まだ伝えたいことも送りたい言葉も尽きない。
ついぞ脹相は胴を切られ上体が傾ぐ、揺れる視界に少しでも長く弟の姿を捉えようと眼球を動かすと、こちらへ飛び込んでくる姿が見えた。
虎杖は宿儺への懇願を諦め、傍にいなければならないという強迫観念を振り解き、脹相へ向かって転がるように近付く。切断された脚の断面が地面で抉れ、骨と砂利が神経を苛もうと構わず、喚きながらその身を盾にせんと胸から上だけになった脹相の上体に覆い被さる。
ごめん、ごめん、俺が、こんなに、ごめんなさい

小さくなったこの身を宿儺から庇うように覆い被さる弟を、抱きしめてやる腕はもうない、細切れとなって血の海に散らばっている。
ほたほたと降りしきる弟の涙は、焼け続ける顔の右半分に当たるとジュゥジュゥと音を立てて蒸発していく。
なにか、最期のこの幾ばくも無い命でしてやれることは残っていないだろうか。
天元が教えてくれた、九十九のやり方を見た、できるかどうかではなく、今、ここで宿儺に邪魔されずに僅かでも宿儺と離れた空間で悠仁と話がしたい。それだけの思いで、周囲に流し続けた血で腕を形作り合掌する。
「領域展開--」
夥しい血を百斂を超える圧縮率で球状に纏める、九十九が見せてくれた重力の概念と天元が教えてくれた結界術の知識により、今までにない圧縮率となっている血へ更に内部から血を足し続けて加圧していく。まだ先がある、それを見た。術式の解釈を広げ、まさに血の海と呼べるほどの量の血で出来た領域を生み出す。
宿儺が「悠仁」と呼ぶたびに強張っていたが、もう聴こえない。薄暗く赤い空間は鼓動がよく響き、胎内のように安らぎを与える。
弟は、悠仁はそんなに弱くないと信じきってやれない兄で申し訳ない、それでも、どうか最後だから、お兄ちゃんの弱音を聞いてはくれないだろうか。
「ひとりで逝くのは寂しいんだ、お前もついてきてくれないか」
わかっている、選んでくれはしない。だから守りたかった。ずっと、ずっと、ずっと
なぜ、宿儺は悠仁に興味と好意を抱いているのか、呪いを解いてやれなかった。囚われ弄ばれる弟をたったひとり残してゆく己の不甲斐無さが憎い。
上手く笑えているだろうか、少しでも柔らかな思い出を遺してやりたいのに、肉体は儘ならない。不格好に口角をあげたまま、眦から絶えず溢れ伝う涙を恥じる。
「ありがとう」
ぎこちない笑顔で返す虎杖の感謝の言葉に、でも、と否定が続く。
宿儺を置いてはいけんのよ、ごめんな脹相、お前に貰ったこれだけで、俺はまだ頑張れるから、だから、先に弟たちに会いに行ってくれよ。
脹相の最期に少しでも貰った温かさを、心を返すべく笑っていた虎杖の顔が取り繕えない程くしゃくしゃに歪んでいく、それでも虎杖の瞳に光が戻っていた。
そうだ、強い子なんだ悠仁は。自慢の弟なんだ。
お前に貰ったありったけの愛で、頑張れるから、もういいよ、大丈夫だよ、ありがとう、心配せんで、俺を……兄ちゃんに俺を殺させるなんて嫌だから、ごめん、俺のために嫌なこと言ってくれたのにわかってるのに手を取れない、救われてやれない、こんな弟でごめん。ごめん、本当に嬉しいんだ、でも、でも宿儺がまだいるから、死ぬのが怖い。アレを残して死んだ後を考えると、頭の内側から恐怖で黒く塗りつぶされる。無理なんよ、ごめん、ごめんな、
……てかお前領域展開できたんだ、すげーね。
フッ本当にできてるかはわからんぞ
そうなん?
そうだ
ただ穏やかに、兄弟揃って過ごしたかっただけ
最期の数秒だけ、まだ少しだけ、ゆるい言葉を投げ合う
終わりの音が近付いてくる、ザブリ、バシャリ、ザパザパと宿儺の斬撃が血の壁に打ち込まれる音が大きくなっている。
宿儺は高度な反転術式を扱えるため、こと虎杖の肉体的損壊については鷹揚な考え方をする。不完全な領域擬きごと膾にしても、直せばそれで良いのだ。
より出力を上げて血の塊を切り刻んでいけば、薄くなった部分から内部で重なる二人がみえた。
多少は話をできた方が小僧はより深く傷つき、しばらく楽しめると踏んで加減をしていたが、もう十分な時間はやっただろうと判断し空間の切断を行う。
多少切り落としていたにしても、尋常ではない量が圧縮されていた血の塊はとてつもない勢いで周囲へ流れ出した。
虎杖が抱いている頭部より下は空間を切った際に切断されており、血に押し流されて瓦礫へ紛れてしまった。
首を抱えて蹲る虎杖を持ち上げて顔をのぞき込んだ宿儺は、久方振りに強い意志を宿した目で睨まれた。いい、これはこれで楽しめる。
手足を切断し、仰向けにして胸へ首を串刺してやればたちどころに表情が曇る。
徐々に腐り落ちる肉をその胸でしかと受け止めろ。