これがもし現実であるならば

これがもし現実であるならば



「…え?船長、なんでこんなところに居るの?」


そう自分に話しかけてくるシロクマを街ゆく人々は不思議な目で見ていた。


それも当然だろう、いくら悪魔の実がある世の中といえど、傷だらけの男に人語を話すシロクマが話しかける絵面はなかなか見ない。


「それになんでそんなにボロボロなの!?待ってね、今ポーラータンク号に連絡を…」


(ベポ…ああ、そうか、俺はそこまで墜ちたのか…)


ドフラミンゴに捕まり、自分が死ぬはずだった所で救出に来てくれたハートの海賊団。



俺はクルーの命を預かるハートの海賊団船長だ。



船長なのだから、あいつらが救出に来た時点で意地を張らずにポーラータンク号に乗船し撤退しておけばよかったのだ。

なのにドフラミンゴを倒すと意地を張り、死ぬべきでは無かったあいつらは死んでいき、死ぬべきだった俺は生かされた。そこからは放心した俺をドフラミンゴが捕え拷問の日々だ。


じっくり糸で肌に切れ込みをいれられたり、ヘルメスとかいう機械の実験台にされたり、心臓に悪趣味な刺繍をいれられたりもした。


俺は救ってもらったことを不意にした。仲間の命を散らせた身で、もう一度助けてくれと言うのもおこがましい。


仲間と生きる夢を見るなど許されるはずがない。


(そんなに精神が参っちまったのか…?)




「……あ!船長!繋がったよ!」




その言葉で一気に現実に引き寄せられた。




『どうした、ベポ?』


…は?なぜ電伝虫から俺の声が聞こえる?俺は[ロー]としてこの夢を見ている。ならば電伝虫から俺の声が聞こえてくることはないはずだ。



「え?船長?なんでそっちに居るの?」


『何を言っているんだ?俺はここにいるぞ?』


「じゃあこっちの船長は誰なの?」


『まて、そっちに俺がもう一人いるのか?』


「いるよ、すっごいボロボロだけど…」


『とりあえずポーラータンク号に連れてこい、いろいろ事情を聞く。』


「アイアイ!キャプテン!」


ああ、こいつらは幻覚でも夢でもない。


現実だ。


ありえない現実であるならば、ちょっとでも仲間に尽くそうと思えた。


死なせてしまった、仲間たちに。


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