この小さくとも懐かしき再会に祝福を!

この小さくとも懐かしき再会に祝福を!


新世界市はこの県の中でも有数のベットタウンとして有名である。田舎にしては色々とごちゃついており、かといって大都市程の喧騒もない。住むのに最も適している環境だ。そう考える人が多いと当然周辺の物価は高くなるもので、生活のやりくりも当然工夫が必要になる。共同生活は方法の1つだ。


「ただいまぁ~~」


この少し昭和チックが残る平屋は運良く安価で購入できた物件である。安価となると何かしら騙されているのでは・・・・と勘ぐるがそのようなことはなく、寧ろ住み心地の良いところであった。心霊物件でもない。


「お帰り。また残業?」

「もー今日も接待明日は会議、何のために毎日こうしてるか分かんなくなるわ」

「お疲れ・・・」


【ヴィンスモーク・サンジ 16歳公立高校生 前世:「バラディエ」2代コック長】

【モネ 25歳社会人 前世:ベストセラー作家】


モ「あー美味しい・・・サンジの作るご飯が一番ね」

サ「アルバイト先で鍛えたからなぁ」

モ「接待の食事なんて味がしないから・・・」


「帰ってきてたか。手洗いうがいはしたんだろうな」


【トラファルガー・ロー 21歳医大生 前世:新時代創設後に医師団を結成】


モ「私もう子供じゃないのよ」

ロ「この前飲んだくれて大変なことに」

モ「その話禁止」

ロ「・・・ドレークは?」

モ「ラズリ(ペット名。前世ドラゴンで今はワンコ)連れて夜の散歩。ホーキンス君とばったり会ったってLI〇E来てたし今頃2人でのんびり話でもしてるんじゃない?」

サ「変な犬だよな、夜の散歩が好きだなんて」


【ディエス・ドレーク 25歳社会人 前世:海軍を一新し新組織を創設】


モ「あ”ー・・・染みる・・・ク〇アア〇ヒが染みる」

ロ「飲み過ぎるなよ」

モ「うるさい今の私にはこれしか心の拠り所ないの!」

サ「退廃的だなぁ」

モ「サンジ・・・・貴方は就職先はよく考えるのよ・・・新卒で一流企業だなんて天狗になっちゃダメだからね・・・・」

サ「説得力ヤバ」


この4人は遠い親戚繋がりである。普通なら各々引っ越すなどで年賀状程度のやりとりしかしないような関係なのだが、色々とあって4人で暮らすことにした。どうせなら気の知れた面子でシェアハウスした方が安心なのだ。懐にも心にも。最初はモネとドレーク、そしてローの3人の予定だったが、実家とのいざこざでサンジが転がり込んできたのが内情である。


サ「あ、そうだ。この前シュガーと会ってさ」

モ「え?いつ?!元気してた?」

サ「生意気さ健在だったな。おととい少し離れた業務〇ーパーでばったり。どうやら向こうは私学行ってるらしい」

モ「私学かぁ・・・・きっと海外研修に憧れたのね。あそこの私学、アメリカへの研修旅行あるから」

ロ「というか実家で連絡してないのか」

モ「そんな暇ない」

ロ「何かすまん」

サ「てかロー、そろそろ試験の時期じゃないか?」

ロ「大丈夫だ」

モ「寧ろ他のお友達に教える余裕あるんだってさ」

ロ「サンジもそろそろ期末だろ、大丈夫なのか」

サ「ギク」


まるで第2の家族である。それどころか、まるでずっと前から一緒にいたような感覚に包まれる。理由は分からない。ただ、時折予定が合えば皆で旅行に行ったり遊んだりするくらいだが、「前もこんなことあった気が・・・・」「確かにデジャヴを感じるな」「記憶が無いが」と似たような会話を繰り返している。


ロ「担任おっかないんだろ、確か」

サ「怖い教師しかいねぇよ・・・・」

モ「この前赤点だった時はもう凄かったわね、顔」

ロ「まぁみっちり補講までして教えたのに勉強してなかったからな」

サ「バイトしてる方が楽しいし・・・・」

ロ「場合によっては手段を選ばんぞ」

サ「それだけは勘弁!」


サンジの担任は数学教師だ。顔は良いが苛烈な性格で話題の中心になることもしばしば。


ド「ただいま・・・モネ、帰ってきていたか。お帰り」

モ「あ、ドレーク」

ド「サンジ、まだ寝てないのか」

サ「親みたいなこというなよ」

ド「明日も早いんだろう」

サ「えー良いじゃんか。この後ゲームってダチと決めたし」

ド「・・・・期末は?」

サ「同じ事言うな!」




サンジが一向にこないことにしびれを切らし、既に友達と同じグループのメンバーはマルチを始めていた。


「ぐる眉の奴何してんだ」

「勉強じゃないか?学生の本分だろう」

「そーだぞ、お前だって勉強しなくちゃいけないだろ」

「うっせ中学生」


【ロロノア・ゾロ 16歳高校生 前世:世界一の剣豪になり、その後放浪】

【チャカ 36歳史学科大学教授 前世:アラバスタ執政就任】

【モンキー・D・ルフィ 14歳中学生 前世:海賊王として新時代を創りその後も冒険を続ける】


ル「ふーんだ、おれはちゃんと勉強してるぞ」

ゾ「泣きべそかいて助けを求めてきてたじゃねぇか、お前が一番ゲームしてる暇ないだろ」

ル「何だとー、スコアおれより低い癖に!」


このグループは「記憶のある」人間の集まりである。前世、同じ船に乗り航海を続け、各々の夢を果たした9人と1匹の仲間達。こうして画面先とはいえまた会えるとは思わなかったが、こうしてみるとあの日々が昨日のように思える。ちなみに現実では予定が会わず中々会えない。というか年齢層がばらばらなので会えても周囲から奇異な目で見られるのは必至だ。憚られてしまうのも頷ける。


ゾ「あ、そうだ。ぐる眉の奴、やっぱり覚えてなかったぞ」

チ「そうなのか」

ル「そうかぁ・・・寂しいなぁ」

チ「仕方なかろう・・・こうして数世紀前のことを覚えている人間など少ないのだから」

ル「でもよ、やっぱ皆でワイワイしたいよな」

ゾ「ま、アイツみたいに途中で思い出すこともあるだろ・・・お、ナイス」


ピロン、と通知音。


ゾ「来たか。遅いんじゃねぇか?」

「貴様等は寝ている時間だぞ」


【キング 42歳高校教師(サンジの担任) 前世:何をしていたか不明】


チ「そう厳しく言ってやるな。まだ10時半だ」

キ「俺がガキの頃はもう寝ていた」

ゾ「それ娯楽が少なかったからだろ」

キ「今ならロロノアの後頭部を狙える」

ゾ「冗談じゃねぇぞオイ」

ル「あ、ジープだ!」

チ「幸先良いな。これでエリア内まで間に合う」

ル「ゾロは運転するなよ、迷うから」

ゾ「へいへい」


指を素早く動かしながら、話が弾む。話題はあの日々についてである。


ル「そういえばさ、キングってあの後何してたんだ?」

キ「あの後、とは?」

チ「新時代を創った後だな。皆が夢の果てまで辿り着いたその後だろう」

ゾ「解散してからお前に関しては聞かなかったぞ」

キ「・・・お前等が放置していたサニー号」

チ「え?」

キ「保つのはそれなりに苦労した」

ル「え、お前、サニー号を守ってたのか」

キ「勝手に放置するな、全く。ごろつきを蹴散らすのも飽きるんだ」

ル「いやーすまねぇ・・・・おれもう一回小舟から始めたから・・・」

チ「私もアラバスタに戻る頃にはてっきり解体したものだと」

ゾ「俺は迷っちまった」


ゾ「そうだ。この後ぐる眉来るが、お前等威嚇するなよ」

キ「大人を何だと思ってるんだ」

チ「まぁ厳つい風貌してるからな私と君は」

キ「括るな」

キ「俺はマイク切るからな。教え子と一緒では気まずい」

ゾ「あー、そっか・・・」

ル「じゃ、サンジが思い出した時は楽しみだな!」

ゾ「後あいつ、他の奴等と一緒に暮らしてるそうだ」

キ「最初にそれを言え」

チ「となると、久しい再会も近いな」

ル「楽しみだなー!」




「まさか屋台でお前と会うとはな」

「俺のガキは元気にしてるか?」

「あぁ、溌剌としているよ。新卒の頃が懐かしいなぁ」

「白ひげのジジイにも宜しく言っといてくれ」

「たまには顔だしてやれよ?子供が悲しむぞ」

「前世で無人島に置いていったお前に言われたかねぇな」

「・・・・俺の愛娘は元気か」

「まぁな。しかし、やり過ぎじゃねぇのか」

「何がだ?」

「音楽教室にも通ってるのに俺の実家の空手教室にも行ってんだろ?余裕あるのか?」

「それがな・・・アイツも思い出したらしいんだ。それで久しぶりに会いたいと言っていたからな。無理をさせない条件で世話になることにした」

「じゃ、後は身内だけか・・・」

「いやはや、懐かしいな。まさかあの時と同じ空の下、また邂逅するとは」

「めでてぇもんだ。・・・次いけるか」

「当たり前だ!お前は良いのか?肩書きが泣くぞ」

「どうせどいつもこいつも名前しかしらねぇよ」

「その風貌だと無理あるがな」

「ま、一杯やろうぜ。この小さくとも懐かしき再会に祝福を!てな」


【シャンクス 34歳大企業副社長 前世:四皇】

【カイドウ 54歳副首相 前世:解散後に隠居】



設定

ルフィ:夢の果てまで行った後も仲間と一緒にいるイメージが強いと思い、敢えて各々の道のために解散させてみた。ルフィ本人は自由気ままに仲間や友達と共に生涯冒険家として生き続けた。歴史の教科書に自分が載っててビックリ。


ゾロ:解散後迷子になったが「剣豪として放浪」と見なされた。一度バラディエに食べに行ったっきり仲間とは会ってない。現世でも一番最初にルフィと再開し、その瞬間に記憶を思い出して喜び合った。


サンジ:実家の呪いェ・・・・ちなみにバ先はもちろん飲食店。記憶を思い出すのは最後になった。期末で赤点をギリギリ回避。


モネ:ルフィの冒険譚を記しベストセラーになった。現世では社畜。弟サンジとペットのラズリと酒だけが癒やし。ローとドレークに心配されている。記憶はローに続き思い出した。


ロー:4兄弟の中で一番最初に前世を思い出した。ちなみにドフィにしつこく自身の医療会社に勧誘されており辟易している。


ドレーク:ホワイト企業に就職。記憶を思い出した時は感動して男泣き。


チャカ:前世の記憶があるので歴史学会ではどう立ち回ればいいか四苦八苦している。


カイドウ:ルフィ達記憶組とは既に繋がっている。元武道経験者で副首相という設定は元ネタがあるが、多分あにまんワンピカテで知ってる人はいない。


キング:サンジが記憶を取り戻すまでもどう接して良いか分からなかったが、記憶取り戻した後は一時期ギクシャクしていた。数少ない妻子持ち設定。


ドラゴン:現世でそのままは希少種すぎるので犬にした。ワンワン!






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