こたつは魔窟

こたつは魔窟

若干センシティブ。閲覧注意、エピ視点。

拝啓、偉大なるお父さん。

ぼくはまた、ピンチに陥っています。えぇ、大ピンチですとも。元々、こたつというのは怖いものだとわかっていたはずなのに。

ぼくが座っている場所の対面には貴方の親友の傑作さん。どっちがみかんを取りに行くか、ということで、こたつの温度を上げて、我慢大会とかしてたんです。負けた方がみかんを取りに行くとか、そういう約束でね。何回かやって、互いに2勝ぐらいあげた後でした。

今回、互いに足でもぞもぞとか、そんな、じゃれあいになっていったんですが。

「どうしたんです、エピさん?」

コンちゃんが、頬を少し赤らめつつ、それでも何ともない顔でぼくに声をかけてきました。ぼくの足を、太腿ではさみながら。つまり、コンちゃんが動くたびにぼくの足先にその…なんというか…、何とも言えない気持ちになるものがあたるのです。

「あ、あのコンちゃん…?」

「はい?」

「そのね、ぼくの負けでいいからさ、その…」

「駄目です」

「えっ…」

負けを認められない!?根負けしてるのに!?こんな、やり取りが何回か続いているわけで。

お父さん…。お父さん助けて…。

「…………エピさん。今、他の人のこと考えてます?」

「っそ、そんなことないよ」

「……………」

太腿にはいった力がさらにぼくを逃がしてくれなくなる。コンちゃんだって動けばそういう気持ちになるだろうに。ぼくの方がとても切なくなっているのはなぜなのだろう。

「んっ……エピさん…」

「ほっ、ほらっ。ギブアップ!ぼく、ギブアップ!」

すこし、力が緩んだ時にぼくは一気に足を引き抜き、こたつの外へ出る。助かった。すごく、すごくたすかった。

…と思ったのもつかのま、いつの間にか倒されてました。いったい何が!?ぼくの身に何があったの!?

「エピさん………」

「コンちゃん…」

ぼくは、…ぼくは……。とりあえず、一回二人の体を起こして、水を飲ませました。

「おちついて、ね?おちつこ…?」

「…んぅ……」

「ほら、水飲んで。ね?」

弱虫、と言われようが、多分今のまま流れるようにやったら、帰れなくなる気がする。色んな人と顔を合わせられないような気がするから。

…、でも。お父さん。その日の夜、ぼくは大人になりました。

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