こうして今日も流される

こうして今日も流される



キス描写がある

雰囲気破廉恥気味





「乙夜殿ー髪乾かすでござるよ」

「よろしくー」

 足元に座った乙夜殿の頭を見下ろす。髪を乾かすときは拙者が椅子に座って、乙夜殿が地面に座ってるでござる。そうすると頭の位置がちょうど良くなるでござる。普段は乙夜殿を見上げることが多いでござるから、こうして見下ろすのはちょっと新鮮で楽しいでござるね。

 わしわしとタオルで水気を拭って、それからドライヤー。人の髪を触る機会ってそんなにないから楽しいでござる。乙夜殿の髪はふわふわと言うよりはさらさらでござるよ。それにしても、白と緑が似合うのはすごいでござるね。乙夜殿はイケメンに産んでくれたご両親に感謝するべきでござるな。

 乙夜殿の髪が充分に乾いたことを確認してドライヤーの電源を切る。

「終わったでござるよ」

「ありがと」

 乙夜殿が頭を拙者に預けてくる。お腹に頭が当たっててちょっと恥ずかしいでござる。今日は甘えたい日でござるか? 乙夜殿の頭をゆっくり撫でると、乙夜殿は頭を手に押し付けてきた。目も閉じちゃってなんだか猫ちゃんみたいでござるね。

「よしよし、でござる」

「あー。それイイ。もっとして」

 これくらいならいっぱいしてあげるでござる。しばらくよしよしを続けていると、ふと、乙夜殿の手が拙者の腿を撫でていることに気付いた。

「あの、乙夜殿? この手は何でござるか?」

「んー?」

「んー? じゃないでござるよ? この距離で聞こえないふりは無理があるでござるよ」

 乙夜殿がこてんと頭を倒して、拙者の腿に乗せる。それから上目遣いで見上げてくる。まさに顔の良さの有効活用って感じでござるな。ズルでござる。こんなので簡単に流されかけてる拙者も悪いのでござろうか。でもこれは抗えないでござるよ……。

 思わず乙夜殿の目を塞いだ拙者の手を、乙夜殿が掴む。今ちょっと顔見せられないでござる。

「俺も触りたいなって思って。嫌?」

「最初から素直にそう言って欲しいでござる。嫌ではないでござるが、乙夜殿に触られると拙者、変な気分になるでござるよ」

「良いじゃん。俺にカワイイ顔見せて」

 拙者の手を乙夜殿の指が撫でる。なんかもう触り方からしてえっちなんでござるよ。拙者の恋愛偏差値では乙夜殿ほどの手練れには太刀打ちできないでござる。心の内で白旗を振りながら、拙者は乙夜殿の目を塞いでいた手をどかす。遅々としたその動きにも全く焦れることなく、乙夜殿が微笑んだ。

「ん、いーこ」

「乙夜殿だから許すんでござるよ」

「わかってるって。ほら、チューしよチュー」

 やっぱりどう頑張っても勝てそうにない。拙者は乙夜殿の唇を受け止めて、目を閉じた。

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