「けっこんしてくれ!」「お前が俺より身長大きくなったらな」

「けっこんしてくれ!」「お前が俺より身長大きくなったらな」



》38のネタをお借りして自分なりに書いてみた。

現パロ。



《「けっこんしてくれ!」「お前が俺より身長大きくなったらな」》



ホーキンスの住む家の近所に有名な3人兄弟がいた。

この近辺では有名な警察官の家に住み、家政婦が日中は居るがまさかのほぼ子供達だけで生活しているという。

町内会の噂話だが信憑性が高いことをホーキンスは知っている。


1番下の子供、名前はルフィだったか…。

公園で1人泣いているのでギョッとして、しかしホーキンスには関係がないと捨て置き110だけはするかとスマホを出した時だ。

ばっと顔を上げた子供と目が合いすがるように足元に寄ってきてしまったためしゃがんで事情を聞けば、家の鍵を家の中に忘れてしまい兄弟が帰ってくるまで外で待たねばならないというよくある話だった。

腹が減ったと泣く子供に残念ながら菓子類の全くない自宅の戸棚を漁り何とかお中元だかお歳暮だかで貰った羊羹を見つけ与えれば犬のように喜んでパクパクと口に収めてしまった。

食べながら子供は名前をルフィと名乗り、兄2人と3人で暮らしてるんだと笑う。

特殊な事情に足を突っ込む勿れと詳しく聞く気はなかったのにルフィはやれエースがどうの、サボがどうのとスケート靴がリンクを滑るくらいなめらかに個人情報を流出していく。

何とか止めたくて家にある食材はないかと冷蔵庫から何から探したものの子供が好きそうなものは何一つなく、ルフィの口から家族の話が溢れ落ちるばかりだった。

しょうがないので相槌を打ちつつ兄達の帰宅時間を尋ねると後5分もない。

まだまだ話し足りないルフィを何とか促して自宅前まで送り、遠くからやってきた人影を確認してその場を後にした。


それからだ。

おれを見つけると弾丸のようにルフィが走ってくるのは。

昔は本当に体目掛けて体当たりをして来たが、流石に高校生になった今手を上げて声をかけ駆け寄るだけだ。

成長したな…。肋骨にヒビ入ったことあるんだぜ、あれはびびった。


「なぁ、ホーキンス。今週末お前ん家行っていいか?」

「またテスト勉強か?今度は何処でつまった?」

「現代文…」

「そういやくっそ苦手だったな。…おれなんかより兄貴達に聞きゃいいだろ?」

「やだ。エースもサボもそんなん解けねーのかよって揶揄うし、忙しそーだもんよ。それに、おれはホーキンスに勉強見て欲しい」


可愛らしい子犬は自分が可愛らしいのを熟知してやがる。

うるうると上目遣いで様子を伺う子犬は了承してやれば飛び跳ねて喜んだ。


そんな関係が終わりを迎えたのはルフィが就職する時だった。

念願の消防士になった子供を祝う為焼肉食べ放題に付き合った帰り意を決したように振り向いた子供の顔はいつのまにか男だった。


「ホーキンス、結婚してくれ」

「…」


目の前の彼が自分と同じように冗談を言わないタチだとホーキンスは知っている。

時折自分に向けられる熱い視線に気付かない訳はなく、それでもつるんでいたのはホーキンスもこの男とのやりとりが好きだったからだ。

しかしながら、随分と我慢強い男だとホーキンスは思う。

我慢強い男にホーキンスは自分の狡さを理解して答えた。


「お前の身長が、おれよりデカくなったら考えなくはない」

「本当か?」

「おれは冗談は嫌いだ」

「知ってる」


あぁ、居心地の良い場所が一つ減ってしまったなと少し残念に思うホーキンスが数年後自分より数十センチデカくなったルフィに目を白黒させ猛アピールに逃げ回ることとなるのは誰も知らない。


「成長期遅すぎだろっ!」

「でもおれのじいちゃん287cmでとーちゃん256cmだからな。伸びると思ったんだ。それにおれ、負ける賭けはしねぇし」

「くっそったれ!」

「にししっ!」


Report Page