お題:代理出産
拓海への感情をはっきり自覚しちゃった頃、あたしはお父さんとお母さんから大事な話しがあるって言われた。
──お前と拓海くんは、実の兄妹なんだ。
おばあちゃんが引き取ってきた、虐待されていた幼児の兄妹。それがあたしと拓海だって……
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子宮がん、ステージⅣ。その言葉を、私は静かな感情で受け止めた。
発見が遅れたのは、きっとプリキュアとして今もずっとビョーゲンズと戦い続けたせい。プリキュアとしての使命を背負ったあの日から、殉ずる覚悟はできていた。
でも戦いの果てに斃れるのではなく、こんな最期だったなんて、やっぱり運命は意地悪なんだね。
私、夢があったんだよ?
大好きな人と新しい生命を育むこと。
その夢さえ、私から奪っちゃうんだね……
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ねぇ、のどかちゃん。あたし、あなたのことが本当は嫌いだった。
あたしの大好きな拓海を、奪ったから。
あたしに禁忌を犯させないように、離れていった拓海を奪い取ったから。
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ねぇ、ゆいちゃん。私、あなたのことが本当は嫌いだった。
私が望んでも手に入れられないものを、あなたは全部持っていたから。
私が必死に努力して手に入れたものを、あなたは最初から全部持ってたから。
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拓海くん。お願い、最期のわがままを聞いて欲しいの。
どうか、ゆいちゃんの愛を受け入れてあげて。
あなたが血を吐きそうな思いで捨てた愛を、もう一度、受け入れてあげて。
私、あなたと結ばれて幸せだった。
だから、あなたにも幸せになって欲しいから。
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拓海、良いの?
本当に良いの?
あたし、妹だよ?
本当の妹だったんだよ?
産みたいよ。拓海の子供が欲しい!
でも、あたしたちのエゴを子供に押し付けちゃダメだよ。
あたしたちみたいな苦しみを、子供に味わせたくないよ……
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ゆいちゃん、私の最期のわがまま、あなたに預けるよ。
だけど、これをどうするかは、あなたが決めて?
……バイバイ、ゆいちゃん。拓海くんをよろしくね?
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数年後……
「ゆい……よく頑張ったな……ありがとう……ありがとう!」
「拓海…あたし、この子の名前、もう決めてたんだ。あたしと、拓海と、そしてのどかちゃんの想いを受け継いだ子だから」
「ああ、そうだな。で、どんな名前だ?」
「命名、ゆのみちゃん!!(ドヤァ)」
「よし、ちょっと考え直そうか」