お題:3 『もしも性別が違ったら』

お題:3 『もしも性別が違ったら』

傀儡呪詛師、死体処理専門の二級術師

「ねぇ眞尋、何を見てるの?」

耳元から聞こえる澄んだ声に後ろを振り向く。ソファの後ろから覗き込んでいた彼女、茅瀬はきょとんとした顔で此方を見つめている。

「何って...明日の任務内容。少し遠出になるらしいし」

「そうなの?...最近遠出が多いね」

「まぁ、扱かれるのは慣れたからな...茅瀬は?着いてくるから大変になるけど」

自宅から距離のある地域まで任務に行くのは別に辛くない。寧ろ、茅瀬の負担になってしまうことが唯一の気がかり。心配になって思わず聞くと茅瀬は答えた。

「眞尋の傍にいるなら、何処へでも。眞尋がいるなら疲れもないし、それにデートみたいじゃない?」

「...任務とデートは違うだろうに...お前さぁ」

さらっと答えられてしまって、返って此方が照れてしまう。赤くなった顔を手で押さえて隠すと小さく笑い声が聞こえてくる。

指の隙間から彼女を覗くといつの間にか隣に腰掛けていて、顔を覆っている手に触れられる。その温度は、酷く冷たい。

「また照れたの?」

「...煩い」

「ふふっ、いつまで経っても慣れないねぇ。かわいい」

「だから...」

頬に触れながら優しく笑う彼女に翻弄されていると感じる。いつまで経っても慣れない自分が嫌になるのと同時に、一生慣れないのだろうと諦めている自分もいる。だって、かれこれ何年もそうなのだから。

「遠出なら荷支度しなければ、ね。どこか旅行もできたりしないかな」

「その後は報告書あるし、...先に帰っててもいいんだぞ?」

「経過観察で君から離れられないのに?」

そう言えばそうだった。覚醒していない頭がまともに稼働しないまま動いて、変なことを口走る。最近は寝させられていたはずなのになぁ、と考えているとグイッと身体が寄せられた。

「また寝ていないのかい?寝ていないなら添い寝をしようか?」

「いや、いいって、大丈夫だから」

「そう?恥ずかしがってるなら遠慮しなくて良いんだよ?」

「してない、してないから...」

そっと手を放させると、剥れた表情の茅瀬がいる。こう言う時乗れない自分も嫌になるが、こんな時だからこそ見れる茅瀬の表情が、また可愛い。言うつもりはないけれど。

「そうと決まったら準備するか...手伝うか?」

「いいや、軽いから平気だよ。眞尋の方を手伝うよ。」

「そう?じゃあお言葉に甘えて。」

「添い寝も甘えて良いんだけれど?」

「...それは、大丈夫だから。」

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