おれドレ(後編)

おれドレ(後編)










「え……、いや。それは、流石に……」

 あんなに嬉しそうだったお前が急にまごつきだす。その理由が全くわからなかった。

 おれ君が素直になれって言ってきてそうしているのに、どうして。

 やっぱりおれじゃだめなのか?

「なんで、だめなんだ」

 わからない。なんで今更渋るんだ。こんなに近くで求めているのに。お前だっておれのことが好きなくせに。

 シーツの上でじりと後ずさるお前が見えて、それが酷く心を抉る。その感覚は、酷い過去の、散々殴られた後に倉庫部屋に投げ捨てられたあの日と似ていた。行ってしまうのか。おれをこんなにしたのに。お前もおれを独りにするのか。

「いやだ……っ! 行くな、行くなおれ君!」

「ちがいますって! そんな無責任なこと、できないから……!」

 おれ君は何か弁明しようとしている。しかし上手く聞き取れない。耳にノイズが走り出したのは、おれがぐずって鼻を鳴らす音が響いたからだ。

「た、隊長……?」

「あしたに、なったら、……っ、いえなくなる、から……っ。おねが、い」

 どうせこの自尊心の強い人間性は明日になれば散々いたぶられた感覚も過去に追いやって何ともないように振舞おうとするんだ。そうなったら、おれはいつもの隊長をやるしかなくなる。もう二度と言えない。

「おねがい……、おねがいします……っ。なか、つかって、つかってください……!」

 今日だけでいいんだ。この瞬間だけでいいんだ。こんな時くらい、こんな身体で良かったと思いたい。おれ君のことだって良くしてみせる。だから、

「なんでも、する、から……っ。いたいことも、ひどいこともしていいから……」

 おれの今までが悪かったなら全部謝るから。全部直すから。だからどうか行かないでくれ。おれを独りにしないでくれ。お前まで逃げないでくれ。

「おれの、ぜんぶを、あげる、からぁ……」

 苦しい。何かに喉を締められているように、これ以上は上手く喋れない。あと何をしたらいい。

「う、うあ、や、やだ。いやだぁ。おれ君……っ、」

 考えても考えてもわからなくて、溺れそうなほど涙が溢れて、それきり上手く喋れなくなった。



 優しく髪を撫でる。

 おれのよりかは小さく若い手は、確かに戦士の手をしており、そんな若者の手が、濡れた横髪に差し入れられて、髪の間を掻き分けながら、さらと頭とシーツの隙間まで指を通す。振り乱してとっちらかった頭髪は、何度かそうされるうちに撫でつけられた。

 頭を撫でられる度に、締め付けるような苦しみが引いていく。

「おれ、くん……」

「ごめんなさい。意地悪しすぎました」

 滲んだ視界がやっと輪郭を捉えられる様になって、その先には申し訳なさそうで、でもどこか凛としておれを見据えるお前がいた。お前はそのままおれの肩に顔を埋めてぎゅうと抱いた。強く強く抱き締めた。

「本当に、しちゃいますから。……もう逃がさない」

 そんなふうに、おれの耳元へぞっとする囁きを吹きかける。返事など聞かずに、熱を持った質量をおれにあてがった。

「あ……っ、う、うん……っ」

 求めてた熱が与えられる予兆がきて、歓喜で胸が震える。それ以上に、お前がどこにも行かないでくれたのが嬉しかった。このままそうして抱き締めていてほしい。安心できる。幸せでいられる。跳ねた声色で、それが来るように願った。

「隊長……っ、ドレーク隊長!」

 おれの首に腕を回して強く頭を抱いて、耳元で熱く呼気を吐きながら縋る。こうされたらもうどこにもいけないなと、多幸感に浮く脳はぼんやりそう感じていた。必死に求めて、消して逃がさないよう執着を見せるおれ君が放たれた獣のようで、とても、格好よく見えるんだ。

「あ……っ、あ、あぁ……♡♡」

「うあ……っ、せま……」

 ずく。と、あてがわれたものが、おれの肉の間を押し入り始める。信じられないくらい熱くてありえないほど重い。あのおれの顔くらいは大きかったのが腹を貫く。期待してきゅうと締め付けてしまうきつい産道を、強引に押し広げて割り込んでいく。

 逃げ場なく迫り来る快に反射的に身体が跳ねた。爪先がバタついてシーツを引っ掻いて、何かにしがみつきたがる。縛られた脚を起こして無理矢理にもおれ君の腰を挟み込んだ。こうしてまでも、お前と重なりたかった。

「ああ……ッ、この……っ、その気にさせる!」

 深くゆっくり腰を落としていたおれ君は急に腰を掴む。汗ばんだ肌が沈み込んで、『すごいことをされる』という予感を嫌でも走らせた。

「イってもやめねェから。覚悟決めてください」

 おれはその宣言に返事も出来ないで。きゅうと喉を鳴らしてこくこく頷く。生えてない尻尾をぶんぶん振っている。

「(すき……っ♡ おれ君かっこいい……♡)」

 瞬間、どちゅと脳天を叩き上げられる衝撃があった。

「……ッ、?!、……♡♡♡!??」

 視界が白んでチカチカ鳴る。降りきった子宮口を突き上げられているのに気がついたのは、自分がこの1発だけで絶頂していることに気がついたのは余韻で二度目の絶頂を迎えた頃だった。

「っ♡、……あ゛がッ♡! …………ッ゛っ♡♡♡!?!」

 勝手に腰が跳ねたせいでぐりとめり込んだ媚肉でまた意識が飛べるくらいのが来る。声も出せないで弓なりに背を反ってビクビクと痙攣していた。

おれくんのつよいのがとても深いところまで来ている。

お前も相当辛抱していたのか、挿入しただけで中の肉をブルと振るわす。あれだけ吐精したそうに血管バキバキに膨らませたんだものな。当然である。

今更怖気ついたように本能的に逃げ出そうとする肉体をお前は押さえつけて捕えた。おれもそうされたかったからちょうどよかった。一番好きなところ張り出したそれで抉ってそこばかりをじくじくと狙い撃つ。

「だめだ、もうでる、射精ます!」

それで、宣言を言い切る前にお前はおれの中に射精した。


「お゛……っ、ぁあ……っ♡、……はぁあ♡」

胎内にじわと温かいものが広がる。体温よりずっと熱いそれはおれの中に溶けていくみたいに、しかし確かな存在感と従属感をもたらして居座っている。

「(なか……、だされてる……っ♡、おれくんの、おれくんのすごいの……っ♡)」

腹の奥に音が鳴るくらいの勢いで吐き出されるそれをじっくりと感じて、甘く蕩けたような声が鼻から抜ける。お前に孕まされている。かぶさるお前と視線が絡むだけで幸せで、もっともっと浸りたくなる。

 抜かれてしまう熱が惜しくて、強く脚で挟み込む。どうかまだ行かないでくれと、そんな言葉も言えないで、脳の思ったままに言葉と行動が出る。

「おれくん……っ♡、すき、すき……っ♡ ……はぷっ♡」

「?!♡、んっ……♡ ンんっ♡♡」

 初めて自分から唇を重ねた。

 脚で挟んで掴んだ熱源も、降りてくる子宮を叩き上げる強くてかっこいいのも、耳にかける吐息も、お前の何もかもが愛おしい。お前の全部を独り占めしたくて、食い尽くしてしまいたくなった。

 こういうやり方でいいんだっけか。普段どうやってお前の好きなおれをやっていたっけ。そういう普段できていたことがなんにも思い出せない。お前はこんな必死な隊長好きじゃないかもしれないが、それでも、抑えようがなくなってしまって、重い身を起こして啄むように触れた。

「隊長……っ、ほんとに、かわいい……っ」

 お前は不意を打たれたように惚けた顔をして、すぐさま両手でおれの頬を包む。同じように唇を重ねて、んんと酸素を取り合った。半開きになった隙間に、ぬると何かが差し込まれた。熱くてやわらかい知らない感覚。

「んあっ♡、えぅ♡、ん、ん♡」

 知らない。わからない。けれど頭がぼうっとして気持ちいいのはわかる。舌の上に乗って絡まるそれに向かって、おれも舌を伸ばした。

「んっ♡、んンッ♡、……っ♡、〜〜……♡ ……はっ♡、は、んン゛っ♡ ぐッ♡ あグっ♡」

 上でも下でも粘膜を擦って、余計に動きが激しくなる。お前は一度出したそれを抜くことすらしないで、一層深い所へ押し込む。奥にめり込む度に漏れる濁った嬌声は喉に呑まれた。

 こんな恋人みたいなことしていていいのだろうか。

 熱で浮く脳の端でそんなことを思った。が、すぐに掻き消える。お前がもう一度長く白濁を吐き出したからだ。腹の奥から暖かくされるとお前のことしか考えてるいられなくなる。

 どうか今だけこうさせてくれと、自分から腰を突き上げた。


 酸欠になった頃にようやく離されて、お前の口端から繋がる銀糸を眺めていた。胎に刺さった肉を引き抜くとごぷと音を立てて熱いものが零れる。頭がまだ熱っぽい。身体だけじゃなくて脳でも絶頂してしまったようだ。

「おれ、くん……」

「……なんですか?」

 呼吸を整えながらゆっくり喋るお前に、ちゃりと、背中の後ろで縛る手枷を見せる。

「これ、外してくれ。逃げない、から」

 そう言えば貴様は呆気に取られた顔をするもすぐ手枷を外した。少し強ばった肩を回してお前に縋り付く。

「ずっと、こうしていたかった」

 もっと体重を乗せるように抱き寄せて肌を合わせる。しばらくゆっくり息を吐いた。

 余韻が落ち着いてきて改めて対峙したお前の身体は、初めてあった頃より随分と鍛えられていた。これがおれとお前で育てた肉体か。いい傾向だ。身体に触れて、普段考えもしないようなお前の『雄』の性質に浸って、微睡みかけた意識がまた火照り出す。もう十分種を飲んだはずのそこはくぱと口を物欲しそうにひくつく。もっとしたい。もっとめちゃくちゃでわけわからなくなるくらいぐちゃぐちゃにされたい。

「おれ、くん……」

「は、はい」

「まだやれるか……?」

 それは疑問形の体を成した命令形であった。


 隊長、ちょっと起き上がれます?と、言われるがままに抱き起こされる。胡座をかく中央にいきり立つそれを見て、何となくどういう姿勢を取ればいいかはわかった。

「ン、これでいい、か?」

 お前の肩に腕を回しながら濡れた股座に擦り付ける。お前はおほぉと情けなく息づいた。おれと言うのも期待ではうはうと呼吸が荒くなっている。

「い、挿入れるぞ……♡」

「あ、あぁあ……っ♡」

 息をゆっくり吐きながらそそり立つそれに向かって腰を落とす。濃い雌露と精液でしとど濡れたそこが当たるだけでキスした時みたいな水音が鳴る。「またこんなおっきいのが入ってしまう」と口許で何度も確かめて、ついに、飲み込んだ。

「は……ぁ、♡、ぁう♡、す、すごいな、この姿勢……♡ こんなに、おれくんの……♡♡」

 自分から腰を落とすことで感じられる締め付ける感覚や重力感にくらっとする。丁度雁首の当たる浅い方の性感の一点を擦ってくねって、もっと深く落としたら自重で子宮潰されるんじゃないかとか恐ろしい想像をして冷や汗が背筋を垂れた。

「隊長♡ まだ半分も入ってないですよ♡」

 お前は悪気なんてないような顔で浅瀬で遊ぶおれの腰を掴む。

「お、おれくん♡? ゆっくりだぞ♡ ゆっくりじゃないと怒るぞ♡」

「ダメです♡ ね、隊長♡ ね?♡」

こいつまさか一気にどつこうとか考えてんじゃないだろうな。

 頬の引き攣る半笑いの攻防はおれの震える立ち膝とお前の両腕で起こっている。攻防といってもこちらは防戦一方で、じくじく覚える悦に今にも腰が抜けそうで根負けしそうである。というか持たん。

「だ、だめだ……っ、ほんとに……♡、よくない、から……っ♡」

 だめだって言うんだろ。しかしお前は聞く耳持たず細腕(おれのよりは細いという意味)の癖してなかなかの圧をかける。そんなことしてみろ。こんなおっきくて硬いのが、いきなり、すごい強い力で、子宮口の弱いところごちゅって、叩きつけて、えぐって……、そんなの、おち、堕ちる、堕ちてしま……。

「堕ちろ♡」

____ごちゅんッ♡♡

  耳元にこぼされたゾッとする声色に思わず瀬戸際で耐えていた腰が抜けてその場にへたりこむ。支えがなくなって想像通りに、しかし想像以上に子宮を叩きつけた。衝撃のままに濁った声が漏れる。

「お゛……っ、ほォ゛……ッっ゛!??♡♡」

「隊長すごいっ♡ 全部入りましたよ♡!」

膣の上から下まで隙間なく肉が詰められて意識が飛びかけているおれのことなどお構いなく嬉しそうに抱きつく。抵抗のしようなどなくされるがままに揺さぶられた。

「う゛ぎゅッ!?♡ お゛、い゛……っ♡、うごく、な……っ、ひッ゛、イぐ……♡、イ゛ってる゛……っ♡、おれくん゛……ッ♡」

「えっ♡!? ちゃんとイッてること報告してくれる♡!? いい子ですね隊長♡」

 ちょっと緩めてほしくなってそう言ったのだがお前は余計に激しく動かした。じゃじゃ馬すぎる。しかして生意気にもお前に「いい子いい子♡」と言われて頭を撫でられるのが変に心地よくて、素直に“報告”を繰り返す。

「隊長♡ ご褒美です♡ いっぱいぎゅーぎゅーしましょ♡」

「ッッッォ゛お゛……ッ♡!? あ゛ッ、っ、ーーーー~~~ッ!??♡♡♡」

 お前はいきなりおれを持ち上げて、繋がったまま膝に抱え込んだ。自重で肉が子宮口までめり込んで押し潰されて、仰け反りながら嬌声を叫んで悦にのたうつ。抱えられた姿勢ではシーツに足も着けず、腰がもっと深いところにハマって抜け出せない。

「な゛ッ♡……、あ゛ッ♡ これ゛、ふかい゛ぃ……♡、お゛っ♡、おろせっ♡、や゛っ♡、やぁあ゛っ♡♡」

「もうっ♡ 暴れないでください♡ ほらぎゅーっ♡」

「んっ……♡、んう゛っ♡ ……ひっ、あ、あぁ……♡」

 逃げたがって余計に深みに嵌る跳ねる身体は簡単に抑え込まれた。抱き締められると激しく動くこともない。内臓をぶっ潰される圧迫感と抱き締められて頭を撫でられる多幸感の温度差が脳内で乱気流を起こす。気が変になる。なんとかお前の身体に縋り付き息も絶え絶えにお願い事をしようとする。

「っぉ゛♡、ぉ゛れくん……ッ♡ や゛、やさしく、しろ……♡」 

「え゛ッ!? はげしいのきらいですか??」

「キ、ツ……っ゛、い゛、から……♡ っすぐ、イって……しま、う゛♡」

「……ほんとにダメ?」

 下からおれを見つめるお前の瞳が少し潤む。なんだこいつ! 泣かされてるのはおれだぞ!? 凶悪なモンぶっ刺しといてよくそんな顔できるな! しかし、その面を見続けていると目の錯覚なのか、さっきからずっとお前に食われているのになぜかかわいらしく見えてくる。

「ぅ、うう゛……」

 呻き声。今のはおれのかお前のだったか。たしかに誘ったのはおれなんだよなだとか、ここで温くされるのは男の身体には酷なんじゃとか、いろいろ同情したくなる。おれ君に流されそうになっている。おれの中にいるお前も元気だ。

「ん、んン゛……」

「隊長……?」

「ゆ、ゆるす……♡」

 ああ、言ってしまったなぁとほんの少しの後悔と身の程知らずの期待が熱になって膣を濡らす。多分めちゃくちゃにされる。それでも、さっきまでおれのいうことをよく聞いてくれたおれ君へのお礼のようなものはしてやりたかった。

 結局流されたのである。この選択が失敗か正しいものか、おれは未だその答えを知らない。

 「隊長〜〜〜!!♡ ありがとうございます!♡ 好き♡♡」

「あ、ああ……」

「もっとくっつきましょ♡ その方が姿勢楽です♡」

 言われた通りに身を委ねて肩に腕を回し直して胸を押し付ける。抱き合って座る様な姿勢で、吐息が触れるくらい顔が近いのが今更ながら気恥しい。

「楽になりましたね♡、じゃあ動きます」

「あ……っ♡、だめっ♡ まだ、あ゛ァっ?!♡」

お前は腰を掴んでおれの弱いところに押し当てながらのの字に捏ね回す。

「ふーっ♡、フーっ♡、ッッぅ゛♡、……っぅ゛ん♡、ぅ゛、ぁぐッ♡、ッぁ゛う?!♡♡」

「ケツでっか♡ おっも♡ 隊長太すぎ♡?」

「はァ?! ふ……♡、ふとくな、ど……! っぉ゛ほォ……♡」

「喘ぎながら反論しないでください! こんなにお尻も太もももムチムチにして太くないは無理でしょ!」

 腰から臀に手を滑らせてなだらかに揉み始める。ほらみろこんなにぷにぷに!と怒鳴りながら触って、がっつくみたいに突き上げる。視界が揺れて色彩が混ざる。わけがわからなくなる。

「雌牛のように肥え太りやがって幸せ太り隊長♡ お嫁さんにしてもっと食わせてやるからな」

「ン゛ッ♡、ぎゃっ♡、お゛ぉっ゛♡、お゛もく、ない゛ぃ……♡♡」

「貴方が重たいからこんなに奥までぶっ刺さってるんですよ!!? エッチして体重減らさなきゃダメですね♡」

「ばか、やめ゛っ、あ゛ッ♡ や゛ ぁ゛ッ♡ ……ッッぎっ♡!? ぇあ゛ッ♡??! だめ゛っ♡ そこぉ゛っ♡ っーーー〜〜〜゛!!♡♡」

「自分の体重でぐりぐり弱いとこ弄ってかわいい♡ エッチでむちぽよの隊長♡」

 屈辱的な言葉を掛けられているのに何故か熱が昂って『すき』などと口走りそうになっている。

 下ろせとばかりに暴れた脚も、されるがままに揺さぶられていた。イク度に無様にピンと伸ばされて、弛緩してシーツに堕ちて、また跳ねる。

「お声もお顔もとろとろでかわいいです♡ あっちょっとおっぱい揉む♡」

「お゛っ……♡ ちょっと揉むな……っ!♡ あ゛♡ んぐっ♡ っ゛♡!っあ゛♡!!」

(すきっ♡、やだっ♡ すきっ、すきぃ♡)

 勃ちっぱなしなっていた乳頭を手のひらで包んで転がせば、さんざんいじめ抜かれていたそこは簡単に快楽をひろう。触られたところから熱くなって神経が集中しだす。ぴんぴんに主張するそこをかしかしと引っ掻かれ、弓なりに腰が反ってぎゅうと膣を締めた。

「あ゛〜♡ すっごい締め付け♡ おっぱいもおまんこも大好きですもんね♡ おちんちんぎゅ〜ってあつあつとろとろにして抱きしめちゃうくらい好きですもんね?♡」

「ぅあ゛ッ♡ ん゛っ♡ んんっ♡」

「返事して♡ しろ♡ 素直になった方が可愛がってもらえますよ♡ ね♡」

「あ゛ッ♡ っっあ゛、ぅ♡ す、すき、しゅきぃ……♡ 」

 悦でバカになってる頭は耳もとで甘ったるい声で促されれば簡単に頷いた。今なら婚姻届にだって目もくれずにサインしてしまうってくらいに、判断力など飛んで、おれ君と、おれ君に大事にしてもらうことで頭がいっぱいだった。

「ぃ゛……、ぃ゛く゛♡、 おれ゛くっ♡ んん゛ッ♡ いっ゛しょ、い゛っしょに……っ♡」

「あ、ああ♡!はい! いっしょにイきます♡」

 おれがそう言えばお前は抱き留め直して汗ばんだ髪を掻き上げて退ける。おれはというと顔を見られるのが恥ずかしくなって、それ以上にもっとお前の熱が欲しくて首元に埋まって。

 そして、噛んだ。

「あ゛ッ!? ッい゛♡♡!?!」

 どろどろの熱い熱い精液がおれの胎内で撥ねる。びゅうと音を立てながら奥に叩きつけられる。捩じ込んだ肉が受精させようとか種を擦り付けてじくじくとした熱が篭もる。

 脳天一直線に快楽が電流のように走って、一瞬視界が白んで、もっと抱いていたいと思いながらも、力の抜けた腕はゆっくりと降りた。顎に込めた力もいつのまにか抜けて、鉄っぽい味をやわく食んでいる。

 ちゅうと吸ったその味と、熱に浸りながら、今度こその微睡みに意識が溶ける。後ろに倒れるように肩から口が離れると、お前はおれの後頭部に手を差し込みゆっくり寝かせる。

「ええ……。かわいい……」

 暈ける視界の先の、首を片手で抑えるお前は、そんなようなことを言っていた気がする。





「……っあ、ぁ、ぐ……♡」

「まだ余韻イキしてるんですか?」

「イってな、ど……。ン、んっ♡」

こいつめよくもヌケヌケと。そう悪態ついて震える背を向けて寝返りを打つ。

 非日常じみた熱はまだ身体に残っている。出ていったそれには名残惜しく、しかしまだ胎内に残っているそれには愛おしく、タオルケットのなかで子宮を撫でた。

 泣いてねだったおれ君の子種。

「ーーーー〜〜〜〜ッ!??!!」

 そう再確認して顔が沸騰するくらい熱くなって思わず枕を頭に被って押し付ける。

「隊長かわいかったなあ……」

「うるさい!バカアホ!早く寝ろ!」

「いいじゃないですか。おれたち恋仲でしょう」

「……? 違うが? 違うよな?」

 なんだ騙されないかとか、小さく舌打ちして聞こえる独り言を零す。何考えてんだお前は。

「ねえ〜もうおれのこと好きになってくださいよ〜! というかさっきまでめっちゃ好きって言ってたじゃん〜! もうラブで良くないですか〜???」

「そういう関係になるのは……。少し……よくわからない」

 本当によくわからない。微温い手で前髪を掻き上げながらそう考える。生まれてこの方恋愛に現を抜かす隙間が無かったせいで色々と欠乏した人間になってしまったような気がする。しかし軍に命を懸ける人間としてはそういった精神的なバイアスに振り回されない性質の方が有利だと思ったから特に何とも思わなかった。思う隙間もなかった。

「嫌なんだよそういうのは。人間性が弱体化するから」

「……思春期みたいなことをいいますね」

「本当に……、誰のことも、そういう風に好きにならないでいたいんだ。ずっと楽だから」

 お前はこんなにそばに居るのに、何か不安になりだして、枕を胸にぎゅうと抱く。

 軍人なんだ。隣の席で飯食ってた奴が明日になったらいなくなっていたことも少なくはない。上官として部下に非情な命令を下すこともある。助けられるかもしれない人を切り捨てないといけない時がいつか来る。

 そういった判断を、自分は汚れ仕事ができるからと、過る葛藤も無視して為してきた。

 そして、いつか、そんな積み上げた選択たちに自分も殺される。分かりきったことだ。

 ずっと前から覚悟していたのに、それがブレる。おれが殺す中にお前がいたら、おれは正しく判断を下せるのだろうか。

「それに、それ以上に」

 かつて愛していた人のように、

「貴様までいなくなったらどうしようって」

 

 詰まった喉で吐いた息は酷く冷たい。お前がいつかおれの元から去った時に、おれはいつも通りマトモをやれるのか、そんな不安が蔓延りだしたのも、遠い昔ではない。想像以上に、お前へ肩入れしている。

 マトモでいたいから、お前のことを好きでもなんでもなくありたい。普通の兵士として、何があっても『仕方なかった』で済ませられる人でいてほしい。

「それが、貴方のずっと言いたかったことですか」

 四肢をベッドに投げ出していた貴方は、起き上がって乾いた頬を撫でた。

「いなくなったりなんてしませんよ」

 指先はつうと、涙の跡を辿る。

「多分、どんなになっても、隊長のこと好きなんだと思います」

 だから、謀反したり失望したりとか絶対ねェし、簡単に死んでもやりません。何も対価がなくても勝手に好きで好きになっているんです。

「だから、そういうのを、やめろと……」

「それは無理です。ドレークさんが、隊長が、すっげェ嫌な人で、おれのこと良いように使って、唆して、利用だけしてぶっ殺そうとしてても、きっと、おれは貴方のことを嫌いになれないんです」

 惚れるって、愛するってそういうものなんですよ。とお前は笑う。

「貴方が欲情しておちんぽブチ嵌めてくれって言ったら、おれはいくらでも身体を差し出します。失望もしない。貴方のことを大好きだと心から言って、隅から隅までかわいがります。おれは、そういう事ができる人なんですよ」

 彼はキメ顔でそう言った。

「なんて奴だ」

「そうそう。余韻落ち着いてきました?」

 気付けば長いこと話し込んでいたようで、汗も熱も引いている。若干の怠さはあれど水を飲むくらいの元気はあった。

「あ、なんでもしていいけど中出しはダメですよ。ばっちいから。今日のだって不本意ではあるんですから」

「……」

「ちょっと! 寝返りうたない! 立って!」

 お前は意外としっかりしていて、タオルケットを剥がしては肩に背負って無理矢理抱き起こした。そこに、血の乾いた噛み跡が見える。

「すまない。後で消毒する」

「え、大丈夫ですよ。自分ででき……、いや。お願いします」

 ちょっと首をすくめてにへらと笑う。

 わざわざ言い直すその意図がわかって、センチメンタルなバイアスが充実する。

「……好きにならないでいたかったよ。本当に」

「そうやって生きるのには、命は長すぎますよ」

 縺れる脚を引きずられて、心地いい倦怠感に浸る。気付かれないように、そっと傷跡に口付けた。


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