おめでとう
今日も1日が終わる。
朝起きて飯を食い、いい加減朝食にパンを出せとウタ達に抗議をされ、ウタに医術の勉強を教えたり、次はどの島に行こうかとペンギン達と会議したり、ベポのお腹で昼寝したり…。
ワノ国を出国してから数日経つが、こんな穏やかな日は随分久しぶりだ。
これからどうするか…そんな先のことはあまり考えてはいないがDの意思…自分に残されたこの名前…それを紐解くこと…コラさんがあの日言っていたことの意味…それを確かめるまでには死ねない。
彼の本懐は遂げられただろうが…ずっと気を張り詰めていただけにドレスローザ辺りから自分でも可笑しいくらいに気分が軽かった。
…そろそろ遅い…寝ようか。
そう思っていた直後、ドアを鳴らす音がした。誰だ?こんな時間に?
「キャプテーン‼︎オレだよー‼︎」
そういってやや低めの調子で言ってきたのはベポだった。…なんでこんな時間に?
「悪いがベポ…おれはもう寝る予定なんだ。すまねぇが用事なら明日にしてくれ。」
そう言って寝床へと向かおうとするがベポは離してくれない。
「ウタちゃんが言いたいことがあるって言ってたよ〜‼︎」
ウタが?なんで?まさかまた何か壊したのか?だったらペポを仲介せずに自分で言いにくればいいだろ。
「ハァ…わかった。おおかたトラブルでも起こしたり私物を壊したりしたんだろ。わかった。案内してくれ。」
「そ、それが目隠ししないとダメだってウタちゃんが…」
「………はぁ?」
なんで目隠しが必要なんだ?ひょっとして俺に見せられないくらいの惨状なのか…?
そうなればただでは済まさない。今まで甘やしてきた分説教をしてやらなければ。
「チッ…わかった。じゃあ目を隠すから案内してくれ。」
「アイアーイ‼︎キャプテーン‼︎」
そうして俺はペポに引っ張られながらその場所へと向かう。目を隠しながら船内を歩くのは当然初めての試みだ。だがいい感じの暗さで少し眠くなってくる。…どうやら目的地に止まったようだ。
「いいよキャプテーン‼︎」
「全く…ウタ‼︎お前何壊し…」
あたりは真っ暗だ。だが微かに見える周りのものからここがキッチンなのは想像が付いた。
何のために?まさかアイツつまみ食いしたのか‼︎それともパンケーキを自分で食べて…
そう至らぬ思考を回してるうちに電気が付き明るくなった。
HAPPY BIRTHDAY ‼️
大幕で書かれたその文字を見たときに俺は思い出した。
今日は俺の誕生日だったことを。
「キャプテン」
「キャプテン‼︎」
「キャプテーン‼︎」
「「「せーの‼︎」」」
「お誕生日‼︎おめでとう🎉」
そういってクルーのみんながクラッカーを持って一斉に放った。俺は鳩が豆鉄砲をくらったようについていけてない。
「キャプテン‼︎誕生日おめでとう!」
「もうキャプテン自分の誕生日忘れてたでしょ‼︎」
「でもそのおかげでこうやってサプライズ出来たからね‼︎」
そう口々にクルーのメンバーからお祝いの言葉を貰う。そうか…誕生日だったのかと同時にこんな俺のことを慕ってくれるコイツらを置いてこうと考えていたのは我ながら酷い奴だと内心自嘲した。
だがしばらくしてあることに気づいた。
「…そういやウタはどうした?」
「ああ。ウタちゃんはね‼︎あそこ‼︎」
そう指差した先に「待ってました‼︎」と言わんばかりにウタが立っていた。
白いワンピースにヘッドホン、水色のアームカバーをつけた船内ライブ用の姿でマイクを握りしめて、片方の手にはプレゼントの箱を持っていた。海楼石の指輪もはめている。
「HAPPY BIRTHDAY‼️TO YOU‼️」
そういってウタは誕生日の歌を歌い始めた。伸び伸びとした歌声はこの船の全体に響き渡る。もう船内ライブの時そのものだ。
「HAPPY BIRTHDAY‼️TO YOU‼️」
他のクルーたちもウタの歌に釘付けである。
「HAPPY BIRTHDAY‼️DEAR ロー‼️
「HAPPYBIRTHDAY‼️TO YOU〜‼️」
短い曲であったが歓声が響き渡り長かったライブが終わったような余韻がそこにあった。
「ロー‼️誕生日おめでとう‼️これ、バースデーケーキ‼️」
そういってプレゼントの箱を開けるとパンケーキを基に作られたケーキが入っていた。てっぺんには周りにロウソクがありその中心には音符やウタの背中にあるタトゥーのようなハート型の楽譜の線、そしてローのミニチュア人形が置かれていた。
「ローのために頑張ったんだよ‼︎私だって料理くらい出来るんだからね!」
数ヶ月前からウタの調子がおかしかった。パンケーキ作りにしてはやたら材料を購入し、消費するのでなんだと思っていたが…まさか俺のバースデーケーキの為とは思わなかった。
思えばこうして自分の誕生日を自覚できたのもドフラミンゴを倒し、カイドウを倒したことでようやく荷が降りたのもあるだろう。
我ながら自分の事に無頓着であったが自分の為にこれだけ尽くしてくれる彼女に何も言わぬ訳にはいかないだろう。
「ありがとうウタ。最高の誕生日だ。」
そういって俺はほっぺをつねった。相変わらずウタのほっぺはモチモチしてて気持ちがいい。さて、ケーキを食べようとしたその時、ウタの声で遮られた。
「ロー‼︎実はもう一つ私の方からプレゼントがありまーす‼︎何でしょう‼︎」
プレゼント?なんだ?そう考えて思いついたのは…
「クマの人形か?」
「ブッブ〜‼︎残念‼︎正解は!」
そういうと彼女は俺の服の首元を引っ張り無理矢理屈むようにして唇を俺の口に押し付けてきた。
柔らかく、それでいて甘いような…そんな味がした。
「へへへ。これでもう忘れられないね♡」
確かに…これは…忘れられない誕生日になりそうだ。