おでかけ準備SS

おでかけ準備SS


※両片思いな意識し始めの親友です 

※素敵な概念を少しでも形にしたくて書きました。解釈違いがありましたら申し訳ありません。

※感想を下さる皆さま、いつもありがとうございます!とても嬉しいです。少しでも楽しんでいただけると幸いです。

久しぶりに帰ってきた実家にて、わたしは悩んでいた。

「これだと、子どもっぽいかな?………でもこれだといつも通りだよね………うーん………」

宝探し期間の普段着は制服でいいからとここに置きっぱなしだった服たちをベッドに並べて見比べる。かれこれ30分ほどこうしているけれど、これには当然理由がある。

「……………次のおでかけ、少しでも大人っぽく見られたいもんね」

思い出すのは数日前の放課後。2-Gの教室の側を通りかかったから、ペパーと一緒に帰ろうと思って教室を覗き込んだあの時、わたしは目の前の光景に目を奪われた。

夕日に照らされたペパーは眩しいのか少し伏し目がちに外を見ていた。どこか遠くを見るその横顔は大人びていてなんだか別人のようで、とてもかっこよかったのだ。

(あ、ペパーって年上のおにいさんなんだ…………)

そう実感した途端に何故かドキドキするわたしの胸。ほっぺたも何故か熱い気がする。どうしてだろう、恥ずかしい事なんてないのに。わたしが戸惑っている内にペパーがこちらに気がついたらしい。

「アオイ!どうした?オマエも授業終わりか?」

こちらを見てぱあっと顔を明るくするといつものペパーだ。ホッとするけどもう少しだけ見ていたかっ、た?あれ、なんで???ちょうおんぱに当たったポケモンみたいに考えが纏まらない。かろうじて首を振っただけで返事もできないわたしにペパーはいつもの笑顔で駆け寄って頭を撫でてくれる。ペパーのてのひら、大きいなあ。背丈も大きいだけじゃなくて体格ががっしりしてるよね。細いわたしとは全然ちがうなぁ。そんな事をぼんやり考えて何だか少し恥ずかしくなる。

「そうか、じゃあ一緒に帰ろうぜ!」

「うん」

そこから寮に戻るまでの時間はバトルの時みたいにずっと長く感じた。いつもならペパーと話していると一瞬なのに。

「アオイは西門近くに出来たカフェ知ってるか?」

「行ったことはないけど知ってるよ。限定スイーツが美味しいって」

「オレは料理が美味いって聞いた。料理人を目指す以上気になるけど、1人でいくのはな。だから時間があるなら今週末、一緒に食べに行かねえ?」

「え、も、勿論!!丁度予定もないし、おでかけ楽しみにしてるね!」

「おっ、そうなのか!ならたまには私服にするか。オマエいつも制服だもんな」

「それはペパーもじゃん!宝探し期間中ずっと制服だったから慣れちゃったよね」

「楽だもんなー」

いつもなら二つ返事でオッケーするのに、今日は少し口ごもってしまった。きっと気になったろうにスルーしてくれたペパーは本当に優しい。大好きな自慢のダチだ。ぎこちないのはわたしだけ。

「じゃ、また明日なアオイ。週末の詳しい内容は後で送っとく」

「うん、また明日ね、ペパー!」

こうして部屋まで送ってもらったわたしは扉の前であることに気づき愕然とした。

「お洋服、何着て行こう……?」

宝探し期間が終わったから最近の休日は私服が推奨されている。いつもは何かあった時動きやすいから制服だけど、約束した日は何の予定も無いし、約束した以上私服で行きたい。ペパーに嘘はつきたくないから。

でもこんな時、どんな服を着て行ったらいいんだろう?おにいさんな彼の隣に立つ事が許されるような、そんな格好をしたいと思うのだ。今までそんな事考えもしなかったから、わたしはとても考え込んでしまった。答えが見つからないまま時間だけが過ぎ、とうとう今日、服を選ぶためだけに家に帰ったのだ。

あの日、夕日に照らされるペパーを見てからわたしは何かへんだ。彼とおでかけなんて珍しくもないのに、こんなにも悩んでしまう。少しでも可愛く、大人っぽく見られたいなんて思ってしまうのだ。1人でうんうん悩んだ結果、コライドンに乗るからと、引っ越してからは着る事を避けていた真っ白なふくらはぎ丈のワンピースを選んだ。セットの白い帽子と裾のレースがかわいいお気に入りの服だ。

「似合ってるって言ってくれるかな」

わたしは落ち着かない気持ちでつぶやいた。

そしておでかけ当日。私はいつものみつあみをほどいたゆるいウェーブの髪型に白い帽子とワンピースで待ち合わせ場所にいた。待ち合わせの時間まであと30分。ペパーはまだ来ていないみたい。彼はいつもわたしより早く来るから少ししてやった気分になる。

それから少しして、

「オマエ、アオイ、か?」

随分と驚いた顔のペパーに肩を叩かれた。


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