うちにアリスが来た
関連:メンテスレ(最終改訂0513/02:03)数日続いた地獄の試験期間がようやく終わった。
調子が良くても中の下程度の成績である私は、なんとか補習授業部行きだけは回避しようと連日一夜漬けし続け、確かな手ごたえ感じながら一人ベッドの中で勝ち誇っていた。
まだ昼過ぎだがもう十分だろう。今日は泥のように眠り明日に備え、土日という素晴らしい連休の全てを自由に過ごすのだ……!
ハイになって逆に寝付けずそんなことを考えていると、不意にチャイムが鳴らされる。
何か頼んでたっけ?それとも友人?だったらカラオケに行こうとかそんなんかな、などと考えながら、再度鳴らされたチャイムに急かされ慌てて部屋着に着替え、ドアを開k
「初めましてマスター! 私は量産型アリス5029号と言います!」
そっと閉じた。
《え!? なんで閉めるんですか?!》
え、なに、ドッキリ? 新手の詐欺?
なんか満面の笑みを浮かべた可愛い女の子が居たんですけど!!
そういやあの容姿どっかで見たような……?
《そんなぁ、こんなパターンはマニュアルに載ってないです!》
そうだ思い出した! 量産型アリスだ! 試験勉強中にちょっとだけ見た動画の広告に載ってた! ていうか名乗ってたな今! 試験疲れで頭回ってねえ!
《あうぅ、じゃ、じゃあせめて挨拶だけでもさせて下さい!》
なんかヘイロー無かった気がしたし、そっくりさんという訳でもないよね?
そんな悪戯してきそうな友人は……居ないとは言い切れないけど。
《あのっ、ごっ5029号は、量産型アリスで……!》
なんだか扉越しの声が潤んできている気がする……でも広告は流し見しただけだしアリスを購入なんてしてるはずがない。
ここに来たのは何かの間違いのはずなので、どうにか一旦帰ってもらえないか説得してみよう……扉越しにだけど。
「あのぅ、ちょーっと身に覚えがないんですけどぉ……。」
《もしかして5029号は、要らない子ですか……?》
無★理! なんかヤバいことになってきた!
ええいままよ!! なんとかなれー!と腹を決めて扉を開け、
「初クエストに失敗してしまいました……5029号はこれから、どうやって生きていけばいいんですか……?」
大粒の涙を流しギャン泣き寸前のアリスを玄関に引き込むのであった。
・・・・
「それでは気を取り直して、本日からお世話になり……あれ?
5029号はご両親様にお世話を頼まれてきたので……んん?
と、とにかく、家族の一員になりに来ました!
不束者ですがどうかよろしくお願いします!!」
シスターフッドが導入して異教徒狩りしてるとか、同級生がペロロ?とかいう着ぐるみを着せて洗脳して回ってるとか、そんな訳の分からない噂を耳にする程度で実際に見る機会は無かったから、まさか自分のもとに迎える日が来るなんて思ってもいなかった。
だってそれなりのスクーターが最上級の補償保険や替えのホイール組タイヤ込みとかで買えちゃうような値段だよ!?
いくら何でも小遣いで賄いきれるモノじゃないでしょ!銃にだってそんなにお金かけたことないし!
両親のぶっとんだ仕送りに目も頭もグルグルしながら現実逃避していると、(やっぱり、ご迷惑でしたか……?)という自信なさげな声が耳に入ってきた
「いやいや大丈夫大丈夫! こちらこそよろしくね!? 今のはちょっと考え事してただけだから!!」
「本当ですか……? 5029号は要らない子じゃないんですね……?」
「そりゃそうよ! 少し驚いたけど、ようは家事を手伝ってくれるんでしょ?
この家は一人暮らしだと大きすぎて管理が行き届かないからさ、大助かりだよ!」
「はい!家事カスタムされた私が来たからには大船に乗ったつもりでいて下さい!
掃除・洗濯・炊事からお風呂の背中流しまで、マスターの生活に密着してお世話させていただきます!!」
「うーん、さすがにお風呂は遠慮しとこうかな……」
「がーん! 早速一つ実績解除が出来なくなってしまいました!」
こうして、私とアリス5029号の賑やかな共同生活が始まったのであった